未開の地
鬱蒼と生い茂るシダ類に、くぐもった苦痛の叫びが響く
額に軽く浮かぶ汗
さっきまで、神速の動きで金獅子を追い込んでいた大剣使いが
ほんの一瞬の掛け違いから、たったの一撃でボロ雑巾のように宙を舞い
逃げる隙すら無く、キャンプ送りになった
これで俺達は、もう一度たりとも倒れられない状況に追い込まれたのだ
闘技場のクエストを、歴代1位のタイムで片付けた俺達は
更に一人のメンバーを入れ替え、金獅子2頭のギルドクエストに出発した
lvは98
もはや、ベテラン中のベテランが
アレコレ考えてもしょうがないからと、出たとこ勝負
俺は基本的に爆弾や罠は使わないのだが
他のハンターが睡眠弾等を使う事を考慮して、一応は持って行く
2度の眠爆と落とし穴に成功し
ラゼンを担いだ重ボウ使いが一度倒れただけで、1頭をしとめられたのは僥倖だったが
集中力が欠ける時間帯に2度目の悲劇は起こった
「気にすんな!」
叫びながら走る
閃光で、数10秒の目潰し
傷付いた奴等の回復時間をかせぎながら、フル回転でダオラ=レイドを振り抜く
どうする
もう、粉塵は無い
誰かがやられたら、クエストは失敗だ
どうもこうも無かった
息付く暇もなく、頭上から振り降ろされる
怒り狂った金獅子の鉄槌の如き豪腕
切れ味 “白”でも弾かれる、魔王の両腕をかいくぐりながら
ただひたすらに、他のハンターが喰らわない事を祈る
「!!」
エスカドラのハンマー使いが、数100キロの全体重の乗ったフルスイングを喰らった
数メートル後ろの崖に叩きつけられ、そのまま地面に昏倒する
金獅子がその距離を一瞬で詰め
荒縄のような紅い血管の浮いた右腕を振り上げた
「後は頼みます!!」
離脱!?
死を目前に、自らの報酬を省みずにクエストを放棄したのだ
これなら、クエスト条件のカウントには入らない
逃げたのとは、違う
託されたのが分かる
目標を失った金獅子が振り向く
口腔がバックリと開き
迸る闘気が、眩い輝きと共に集束される
「・・・くっ、 ゴメンなさい!!」
回復が間に合わない重ボウ使いが、同じように離脱した
掻き消えた空間を、黄金の奔流が空しく薙ぐ
ここまで、皆で頑張ったのに
クエストの為に
「・・・やってやるよ!」
俺は、跳躍すると
文字通り 襲いかかった
暴風のような金獅子の攻撃
終わる事の無い天災レベルの猛攻を、全てギリギリでかわし
細胞を凍らせながら断ち割る凍刃を、着実に叩き込む
引き裂かれた血管が一瞬のディレイの後に、常温で融解し 血飛沫を吹き上げる
逃げ場の無い壁際で、敢えてインファイトを挑むような形になっていた
全身が返り血に塗れ
四肢に乳酸が溜まって行き
一瞬の判断ミスで即 死に繋がる極限状態の中
徐々に自分の中で「暴力」と「殺意」の回転数が上がって行く
金獅子の動きが全て見えていた
高まり切った集中力が昇華し、回避性能のスキルが発動した俺には 金獅子の攻撃は掠りもしない
完全な「オーバークロック」状態だ
唸りを上げる大木のような腕を、流水のようにかわし
その移動を回転に換えて
練り上げた練気で赤く輝くダオラ・レイドが、黄金の野獣を血煙で染め上げて行く
後ろ脚
十字靭帯か何かに届いた「バツリ」とした感触
たまらずに、岩のような巨体が地面を転がる
だが、壁際にぶつかり それ以上逃げられない
目の前のガラ空きの脇腹に、血塗れの刃を叩き込む
捕獲なんて無いからな
完全に殺しに行く
ハンターの常識として、こんな危険な戦い方はあまりやらないとは思うが
この時ばかりは、ウロウロされるよりも都合が良いとすら思え
俺の口角がうっすらと上がる
ファンファーレが鳴り響いた
「お疲れ様でした!」
1人残った大剣使いが、駆け寄って来た
「お疲れ様でした ありがとう」
俺は、肩で息を切らせながら
真っ赤に染まった顔で笑った
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