ハイエースのハッチも、サイドのスライドドアも開け放ち
湿度の低い カラっとした暑さを日影でやり過ごす気持ち良さに、うたた寝しそうにになる
ハムさんは、1走行目が終わって脱いだツナギを苦労しながら着直し
もはや、ウォーマーすら巻いていないGSX-Rに火を入れ
30分で引いた汗を、早くもかきはじめながらスタート待ちに出ていく
「ノンビリしてるよなぁ・・・」
サーキットに有りがちな、ピリピリした緊張感が空気中に無い
それは、熱意だったり 飢餓だったり
時として怨念に近い、黒い塊だったりするのだが
それが無いせいなのか
此処は、変な疲労感に襲われない
アレは、ただ観に来ているだけでも来る
もしかしたら、まだ誰も死んでいないからなのかも知れない
特徴のある合図のサイレンが鳴り
排気音がコースに出ていくのが聞こえた
そのままハイエースの中で
1ラップ
2ラップ
「ほら来た」
ZXの・・・ センターアップの1本出し、6Rかな?
あとは、同じGSX-Rと、黄色いのは1000RR(BMW)だな
その3台が、どうやら速い
ハムさんとクチャクチャに混ざりながら、ホームストレートをアホの極致なような排気音を上げてブっ飛んで行く
さっきと同じで
周回遅れを頑張ってパスしながら、付かず離れずでやり合っている
だが、本当の勝負じゃない
ちゃんと、遅いマシンに配慮した
あくまでも"模擬戦闘"のような、ある意味 ジャレ合いである
俺がDJなら、BGMはロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」だ
入れ替わり立ち替わりする、数台の先頭集団
視界に現れては消え
減速しては切り返し
抜きどころで遅れた分を取り返そうと、やっきになっては突っ込みをミスる
イタズラ好きの神様が振るタクトに翻弄される、糸で吊られた操り人形のように
放された時のハムさんの悔しがる気持ちみたいなのが想像できて
ついつい顔が笑ってしまう
筑波の表彰台争ってた人が、殺気のかけらも出さずに コミカルなバトルを繰り広げてるのだから
帰りの車中も、笑いが絶えなかった
別に空気が重くなるような事が何も無いのだから、当たり前である
ライセンスが15.000円もするから、年間に何回か来ないと元が取れないが
誰か誘ってみようかなと、車に揺られながら考えてはいた
俺「ところでさ、アソコって 誰の経営なんだろね」
金華ハムさん「走行料払ったときの、領収書があるよ」
俺「すげぇwww」
その社名をググると
銀座の老舗すき焼き・しゃぶしゃぶ屋の名前だった
(了
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