成人間近の一児の母にして、車工房を営む86乗りは
お世辞抜きで、40半ばになってますます妖艶で綺麗になっていた
「パツ~
」熱いハグを受けながら挨拶をし
俺にとっての“部長”の横に座る
毎月タイに買い付けに行くハコスカ乗り
「娘が可愛い」と言いながら、3ゲージのホールピアスをいじくり「千葉に別荘を買って、木工細工に凝っている」と笑う
俺が人生で「怖い」と思った3人の内の1人がだ
尻のポケットに競馬新聞を突っ込んだ同輩は エンジンを下ろした事もない現役の若僧に向かって「メガネが入らないなら、サンダーで2つに斬るんだよ!」と尻を叩き
頼りなかった後輩は、日光の「裏3発」について飄々と語る
33やS14を手足のように扱い、多分ドリフトの腕は 現役時代の俺を遥かに凌ぐ
皆変わらない
そして、きちんと年月を重ねていた
そして
遅れて行った俺は、すっかり「伝説の人」に担ぎ上げられていた
七曲がりで崖から落ちて、カーステを外しに戻った人
漬け物石みたいなデカい石で割られたサンルーフにゴミ袋をガムテで貼って、戦後最大の台風を乗り切った人
信号待ちでクラクションを鳴らされて、フルスモークのセルシオのミラーを蹴り割った人
渋公前の坂で、タクシーに当て逃げした人
苦笑いしか出ない
速いとか、格好いいとかが微塵もないじゃないか
確かに嘘では無いが、なんつーかもうちょっとこう・・・
「別に、怖くないだろ?
」「はい
」とまどう20代の草食系
今の時代
マフラーもホイールも車高調も、驚くぐらい安く買えるそうだ
オークションなんてもんもあるしな
白バイにジャッキアップさせられて、サンダーで切ったバネをガチャガチャやられる事もない
同じハチロク、180、S14を乗り回していても
確実に時代は移り変わっている
ドリフトはエビスで
デフは1.5と2の違いも知らず
ドライブシャフトが欲しくて、千葉で乗り捨て車両があったからと、皆でウマや工具を持って夜中に出動する事もない
「君達見てると、古き良き時代なんて言葉が出て来ちゃうよ」
先輩
そのまま、更に美しく
ガキどもを導く“お母ちゃん”で居て下さい
俺は、相変わらず
半人前ですが
若僧の天狗の鼻ぐらいなら
まっ2つにへし折れますから(苦笑)
