なぜか日本のマスコミは全く報道しませんが、先月6日に国際宇宙ステーションISSにドッキングしたきり帰ってこれなくなったボーイング社の宇宙船スターライナー。
同じ日に打ち上げられ、宇宙空間に達した後に地球に帰還に成功したのが、スペースX社の大型宇宙船スターシップです。
但し帰還とは言っても、同社のファルコン9のように軟着陸というわけではなく、インド洋に軟着水ですので再使用への道程はまだまだでしょうか。
■Falcon9とは難易度が全く違う
これまでスペースシャトル以外の宇宙船はみな小型で、パラシュートで減速して海に着水していました。
ところが第二段目ロケットであり宇宙船でもあるスターシップは直径9メートル全長50メートルの超大型宇宙船で、しかも機体を制御して軟着陸するという全く前例が無いもの。
軟着陸するという点ではFalcon9の第1段目と同じですが、地球周回軌道に入る遥か手前から戻る1段目と違い、2段目の宇宙船は地球周回軌道から、しかも第一宇宙速度と言われる秒速約8㎞(時速約2万8800km)近くの速度から帰還しなければなりません。
ですからファルコン9の第一段目の帰還とは難易度が全く違います。
逆噴射で減速するようなことはできませんから、スターシップは機体を立てて、胴体のHeat Shield(耐熱タイル)を張った側を進行方向に向けて大気圏に突入し、前後に2枚ずつあるフラップで姿勢を制御しながら空気抵抗で速度を落とします。
このためものすごい高温を受けますが、今回は帰還の終盤で前方のフラップの後縁のヒンジ側からタイルが剝がれ始め、真っ赤(もっと高温の白色や青なども)になってハラハラドキドキの帰還となりました。
この動画は少々長いですが日本語字幕が入っていますので、ぜひ30分過ぎからの「フラップが取れるのではないか?」とハラハラドキドキの帰還をご覧ください。
※画面の”SpaceX Starship Flight Test 4 in 4K"のタイトルをクリックしてYouTubeで見れば字幕が日本語で表示されると思います。もし日本語字幕が出ない時は設定⇒字幕⇒自動翻訳⇒日本語と設定してご視聴ください。
30分過ぎから着水までがお勧めです。
スターシップは火星移住を目指すという、これまでにない超大型宇宙船です。
いずれ地球は人類が住めない惑星となり、他の惑星に移住できるようにならねば人類は滅びてしまう・・・人類が生き残るためには火星移住を目指すという火星移住計画。
スターシップ
直径:9メートル
1段目のスーパーヘビー:全長71メートル
2段目のスターシップ:全長50メートル
スーパーヘビー/スターシップ:121メートル
最大重量:4400トン
最大燃料搭載
スーパーヘビー;3400トン
スターシップ:1200トン
しかしスペースX社は宇宙ビジネスで収益を上げる民間企業です。
収益を上げられなければ民間企業は存続できません。
火星移住が実現するのは遥か未来。
それまでスターシップで収益があげられなければ、莫大な開発費用は回収できません。
ではスターシップは何で収益を上げるかと言えば、衛星打ち上げです。
これまでは重すぎて打ち上げ出来なかったような衛星も、スターシップなら可能ですし、スターシップ自体も帰還して再使用するので衛星の打ち上げ費用も低減できるはずです。
そして当面の目的は衛星インターネットのスターリンク衛星です。
- スターリンクは現時点では12000基の衛星の許可を得ていて、すでに6100基強の衛星が打ち上げれ、軌道上にいます。
- しかしスペースX社はさらに30000基のパーミッションを得て、42000基に増やす事を計画しています。
- ファルコン9では一度に50~60基の衛星を打ち上げますが、スターシップなら大幅に打ち上げペースを加速できます。
- またスペースX社はスターリンク衛星を第一世代のGEN1から第二世代のGEN2(スターリンクV2)にグレードアップしますがGEN2の衛星は重量が大幅に増加します。
GEN1衛星は重量が300㎏程度でFaclcon9でも問題ありませんが、GEN2衛星は2種類あり、重量はV2Mini衛星が800㎏、V2衛星は重量2000㎏あり、Payloadが23050ポンド(約9500㎏)のFalcon9では役不足です。(V2Mini衛星はPayload 25トンのファルコンヘビーで打ち上げているが、V2衛星にはスターシップが必要)
スターシッは当面はPaYloadが最初は100トンですが、その後150トンとなりますので、スターリンク第二世代のV2衛星(ソーラーパネルを広げると20メートルになります)のような大型衛星も纏めて打ち上げできます。
今年すでにスペースXは2度のスターシップ打ち上げを含めて、70回の打ち上げをしています
。
スターシップは昨年2度、今年は先月のIFTー4(In Flight Testー4)を含めてすでに2回スターシップを打ち上げていますが、ITF-5 Mission が8月に予定されています。
ものすごい開発スピードですが、先月の帰還でハラハラドキドキの原因となったヒートシールドについてはアップデートが行われており、ネットには耐熱タイルに関する情報がたくさん流れています。
こういう情報の公開性が日本とは全く違い、情報を公開して信頼を得るとともに関心を集め、ファンを増やし期待を集め、資金集めその他企業の成長の糧としているのではないかと思います。