通貨の価値を見るには為替レートや購買力平価や実効為替レートなどいろいろな見方がありますが、「円の実力」といわれる「実質実効為替レート」は1ドル360円時代を下回り過去最低となっています。
2024/6/24 毎日新聞
「円の実力」は過去最低 64カ国・地域で最大の下落 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
円安進行や長年のデフレを受け、「円の実力」の低下が一段と際立っている。国際決済銀行(BIS)が公表している世界64カ国・地域の通貨の実力を示す指標で、円の下落幅が最も大きい状態が続いている。生活に必要な食料やエネルギーの原材料の多くを輸入に頼る日本にとって、負担感が増大している状況と言える。
BISが公表しているのは「実質実効為替レート」(2020年=100)と呼ばれる指標。「ドル・円」など2国間の通貨の交換比率を表す為替相場とは異なり、物価水準や貿易量などを基に通貨ごとの総合的な購買力を測る。
1970年代より低い水準
BISが毎月公表している統計によると、5月の円の実質実効為替レートは68・65。1ドル=360円の固定相場制だった1970年代前半よりも低い水準で、過去最低を更新した。国・地域別に比較すると、2番目に低かったのは中国の人民元だが、その数値は91・12で日本円と比べ下落幅は小さい。基準年の20年と比べ、通貨の実力が円だけ3割以上落ち込んでいる状況だ。
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出典:「円の実力」は過去最低 64カ国・地域で最大の下落 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
※なお上の表で唯一日本よりも下落している、アルゼンチンの5月の物価上昇率は前年同月比276.4%です。
アルゼンチン、インフレ率276%に「鈍化」 前年同月比 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
実効為替レート
「通貨の実力」や「内外の物価格差を考慮した円の実質的な価値」などと言われるのが実効為替レートです。
- 実効為替レートはある通貨(円)と幅広い通貨との間の為替レートを総合的に反映したものです。
- 具体的には、日本とその他の全通貨との2通貨間為替レートと、貿易取引量などでウェイト付けをして算出します。
- これによって日本円の対外的な競争力を確認することが可能になるのです。
- 実効為替レートのうち、物価上昇率を加味しないものを名目実効為替レート、物価上昇率を加味したものを実質実効為替レートといいます。
実効為替レートの推移を見ると日本の衰退を感じます。
下図は2010年を100とした日・米・中・欧の実質実効為替レートの推移です。
赤線が日本ですが、アベノミクスの始まった翌年の2014年11月には、1ドル360円から変動相場制に移行した1973年2月を下回りました。
その後一旦上昇しましたが2020年から下降し、2022年1月には過去最低を更新しています。
出典:実効為替レートの推移
日本国内も大変だと思います
食糧の6割、エネルギーの9割、その他諸々の原材料を輸入に頼る日本。
輸入物価高騰はコストプッシュインフレをもたらします。
円安は海外で競争する企業には有利ですが、民間消費支出がGDPの約6割を占める内需には大打撃です。
一部の企業の利益や投資家や海外資産を持つ富裕層には富をもたらしても、内需企業や自営業者や一般の国民にとっては大きな負担となりました。
海外在住者はさらに影響が大きいです
フィリピンペソを見ると、2012年の初めには1万円は5600ペソの価値がありました。
この頃はまだ生涯働けというような風潮ではなく、すでにリタイアしていた私は物価の安い国で暮らすことを考えていました。
しかし2013年のアベノミクス開始以来為替レートは急降下。
今日の円/ペソレートは0.3683、マネーチェンジャーでは1万円が3500ペソを切るかもしれません。
物価はどんどん上がるのに円の価値はどんどん下がり、生活は苦しくなりました。
はたしてこの円安から抜け出すことは出来るのでしょうか?