火と氷の国アイスランド。
電力は100%再生可能エネルギーで賄われ、水力発電が7割、地熱発電が3割となっている。
同国最大の地熱発電所のヘトリスヘイジ発電所では地下深くからくみ上げた熱水を使ってタービンを回していますが、高温の地下水を汲み上げたときに発生する火山性ガスには二酸化炭素が含まれています。
ヘトリスヘイジ発電所で排出される二酸化炭素量は年間4万トンと、同規模の石炭火力発電所の排出量の5%に過ぎませんが、これから規模が大きくなるにつれO2排出量が増えます。
そこで同発電所では“CarbFix”というプロジェクトでCO2を地下の石に変換しています。
“CarbFix”は次のプロセスによりおこなわれます。
- 空気中のCO2を回収するスイスの炭素回収企業‟Climeworks社”の開発したプラントにより、DAC(Direct air capture:CO2を空気中から直接回収する技術)でCO2を回収します。
- 貯留パートナーの“CarbFix社”によって、回収した二酸化炭素を水に溶かしたうえで地下に送り込みます。すると二酸化炭素は、玄武岩層に含まれるカルシウムなどと化学反応を起こし、石灰石のような炭酸塩鉱物に変化します。
地中に送り込まれた二酸化炭素は最終的には必ず石化しますが、通常は数百年から数千年かかります。ところが、この地域の玄武岩層に送り込まれた二酸化炭素は、数カ月で変化を開始し、2年程度で95パーセントが石化します。
2021年9月8日、世界初・最大級の直接空気回収・貯留プラント「Orca」を稼働させ、大規模な二酸化炭素除去を実現しています。
「Orca」は年に4000トンのCO2を回収し石に変えます。
直接空気回収プロセスの実行に必要な熱と電気は、Hellisheidi地熱発電所から供給されます。
さら‟Climeworks社”は「Orca」の10倍の能力の「Mammoth」を開発し、このたび完成ました。
このプラントは年間最大36,000トンのCO2処理能力があります。
マンモスは、Climeworksの炭素除去能力を年間数千トンから数万トンに引き上げ、同社は2030年までにメガトン、2050年までにギガトンの処理能力を目指しています。
なおアメリカも2032年から既設・新設の石炭火力発電所と新設のガス火力発電所には二酸化炭素(CO2)回収・貯留装置(CCS)が義務付けられますので、大規模CSSが開発されています。
なお残念ながら日本にはまだ、大気中のCO2を回収するDACの技術はありません。
再エネ100%で、さらに地熱発電のCO2まで回収・石化して永久貯蔵するアイスランドと、天然ガスの2倍のCO2排出量の石炭火力発電に固執する日本。
あまりにもギャップが大きいですが大きいですが、いつまでもこれが通用するはずが無く、先月末に行われたG7気候・エネルギー・環境担当相ではついに石炭火力発電の2035年までに段階的に廃止が決められました。
厳しい気候変動対策を行うには対策費がかかります。
- そのコストは製品価格に転嫁されますので、製品価格が上がります。
- 一方気候変動対策が緩い国は対策コストが安く、有利となります。
そのため気候変動対策の緩い国は国際競争で有利なうえに、気候変動対策の厳しい国の企業が気候変動対策の緩い国に、製造拠点を移す原因となります。
その不公平を無くすための、国際的なルール作りが始まっています。
- 気候変動対策が厳しい国が緩い国から輸入する場合、水際で炭素課金を行う。
- 気候変動対策が厳しい国から緩い国に輸出する場合、水際で還付を行う。
これにより気候変動対策が厳しい国の競争力が増すのみでなく、生産拠点の流出=雇用流出も防止できます。
欧州は2026年から国境炭素調整を本格運用しますが、その前に対策を取っておかないと輸出入でペナルティを課されることになるでしょうし、日本の国際的な立場は毀損されるでしょう。
EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)(2024年2月) | 調査レポート - 国・地域別に見る - ジェトロ (jetro.go.jp)