国と政府、民間と国民 暮らしと税を考える | 夢老い人の呟き

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2021年の日本の貧困率(所得中央値の半分に届かない人の割合)は15.4%

米国の15.1%、英国の11.2%と比べ経済格差がやや大きいといえますが、一人親世帯に限れば貧困率は5割近くになります。

その一方で税金と社会保険料を合わせた国民負担率は46.8%と高く、「こんなに金を取っているのに政府は何とかしろよ」、「日本はそんなに金が無いわけないだろう」という声が高まっています。

 

 

■日本は貧しいの?それとも金持ちなの?

 

では日本は豊かなのか貧しいのか?

日本はもの凄い資産があり金持ちだという人もいれば、もの凄い負債を抱え財政は逼迫しており財政再建が必要だという人もいます。

 

いったいどちらが正しいのかと疑問に思うでしょうが、どちらも間違いではなく、日本はかつてないほど「民間は豊かだが、政府は貧しい」といえるでしょう。

 

 

■国と政府は違う

 

そこで民間を含めた国について言えば、日本は金持ち国だといえます。

しかし社会保障にしろ富の再配分にしろインフラ整備にしろ、行政が使えるのは政府の資産です。民間の資産を政府が使う事はできません。

そして政府の財政をみると負債が1270兆4990億円と7年連続で過去最大を更新し、去年3月末と比べて1年間の増加額は29兆1916億円にのぼります。

 

ついでに言うと民間と国民も違います

超富裕層やグローバル企業はますます富み、民間としては富んでゆくが中間層以下の国民は没落してゆくのが現代社会の傾向です。

 

 

■日本は金持ちでも日本政府は・・・・

 

という事を頭において、次のX(旧ツイッター)をご覧ください。

 

 

 

 

 

お二人とも日本は9千数百兆円の資産があると言っておりますが、次のスクリーンショットした内訳を見てみると、政府の資産は一般政府の804兆円外貨準備金の169兆円だけです。

また殆どの方が対外純資産を政府資産と勘違いしていますが違います

 

■対外純資産

 

対外純資産は日本の政府企業、それに個人が海外に持つ金融資産を示す「対外資産」の金額から、海外の政府や企業などが日本に持つ金融資産を示す「対外負債」の金額を差し引いたもので、決して政府の資産ではありません。

 

そこで過去最大の418兆円の対外純資産の内訳を見てみると、何と中央銀行及び一般政府は42兆円のマイナスです。

これがよく「日本は世界最大の対外純資産があるんだ、財政破綻などするわけが無い」と言われる対外純資産の正体です。

出典:令和4年末現在本邦対外資産負債残高

 

 

 

このように政府は貧しいですが、民間を含めた国としては豊かな日本。

しかし政府が民間の資産を使うわけにはゆきません。

 

ならばどうするか?

豊かな民間の資産を社会保障や弱者救済、格差是正はじめ行政サービスに使用するためには税として徴収するしかありません。

 

 

そのためには税金アレルギー、税が大っ嫌いな日本人ですが、税について真剣に考えなければいけません。

有名な『 r > g 』の不等式は放っておけば資産格差は拡大してゆくことを意味しています。

何も改めなければ富める人はさらに富んで「民間」は豊かになってゆくが、中間層以下の国民は没落してゆくのが現在の社会です。

 

 

■資産課税と富裕税

 

壮大な構想としては『21世紀の資本』や『 r > g 』の不等式で有名なトマ・ピケティ教授は、資産格差を拡大させないよう、累進的なグローバル資産課税を提唱しています。 個々人が持つ資産を全世界的に把握し、資産総額に応じて課税したうえで、税収を関係国間で配分するというものです。

 

またバイデン大統領は富裕層のキャピタルゲイン税率を引き上げるという、一種の富裕税を発表しています。

米大統領が富裕層キャピタルゲイン増税提案へ、2倍に-関係者 - Bloomberg

 

富裕税や資産課税は各国で検討しているようですが実現するにはもう少し時間がかかりそうです。

 

 

■現行の税制で改めるべきは?

 

しかし現行の税制度でも改めるべきところはあります。

例えば所得税についていえば、超富裕層の収入はほどんどがキャピタルゲインです。

  • 勤労所得は所得税率は累進課税(地方税は10%)で、最高税率は4000万円以上の45%です。
  • しかしキャピタルゲインは所得税率15%(地方税5%)です。
  • ですから実効所得税率は1億円の27.9%を上限に、それ以上では逆に下がります
  • これを1億円の壁といいますが、改めれば超富裕層からの税収がぐっと増えると思います。

 

 

法人税については税率の問題もありますが、大企業優先と言われるような面もあります。

(1)「受取配当金の益金不算入」

「受取配当金の益金不算入」とは、法人が受け取った株式の配当金については税額を低くするという制度です。大企業は子会社や関連会社をはじめ、多くの株式を保有し、その配当金は利益の多くを占めます。大企業の利益は配当金の割合が非常に高いのですが、その配当金に対する税額は低く、これが大企業の実際の税負担は低いと言われる大きな理由です。

 

(2)「租税特別措置による減税」

「租税特別措置による減税」は、景気を良くするために、政策上の目的を持って立法される様々な減税措置です。たとえば、企業が積極的に研究開発や設備投資を行った場合に減税となるような措置があります。しかし、そもそも投資に多額の資金が必要であったり、適用の要件が厳しかったりといった理由により、大企業が活用しやすい仕組みになっているのではないかとの指摘があります。

 

(3)「欠損金の繰越控除」

過去の赤字と将来の黒字を通算して減税できるという制度が「欠損金の繰越控除」です。中小企業は、多額の赤字が出た場合にはそもそも事業継続が困難となります。一方で、大企業は多額の赤字にも耐える企業体力があり、この制度の恩恵を受けやすいとされます。

以上法人税「大企業優遇」「実際は低い」は本当か…ポイントとなる3つの制度より引用

 

 

(3)については大分前の話しではありますが、メガバンクが納税を免れたとか、トヨタが5年も法人税を免れた

  1. 繰越欠損金 -メガバンクが納税しないで済んできたカラクリ | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
  2. 純益2兆円なのに。トヨタが5年も法人税を免れた税法のカラクリ - まぐまぐニュース! (mag2.com)

また例えば自動車は世界生産の70%以上が海外生産ですが、自動車に限らず様々なグローバル企業が色々な業種で、外国子会社を作り利益を上げています。

そして外国子会社の利益は配当益として本社に還流しますが、外国子会社配当益金は95%が益金不算入、つまり法人税がかかりません。

 

法人税の掛かる利益については、企業はそのまま課税されて税を払うよりも、賃金を上げたり従業員福祉や従業員教育に使ったり設備更新して税額控除した方が得かも知れません。

しかし課税の対象にならない益金は内部留保の原因となり、それが過去最大の内部留保の大きな要因でしょう。

 

 

そして昨年度の一般会計の歳入を見ると所得税18.4%、法人税12.8%に対して消費税20.4%と消費税に頼る状態です。

今のままの税制では、今後さらに消費税を上げなければならないでしょう。

 

ならばどうするかとというと、税制を見直して富んだところから税を取り、富の再配分と行政サービスを充実させなければ駄目です。

 

ただ税金を払いたくないと税制を真剣に考えなければ、そのツケは自分たちに回ってきます。

何よりも政治や選挙を真剣に考えなければ、自分で自分の首をしめるようなものです。

老い先短い高齢者はともかく、これからの人たちは他人任せではなく、自分で真剣に考えてください。