世はまさに陰謀論の時代。
日航123便事故や9.11同時多発テロは言うに及ばず、政治問題が起きればDS(ディープステート:米政府の一部が 金融・産業界の上層部と協力して秘密のネットワークを組織して米政府と一緒に、あるいは内部で権力を行使する影の政府)の仕業とし、あるいは地震が起きれば地震兵器、台風に対しては気象兵器と全てを陰謀論と結びつけ、さらに新型コロナウイルス感染症に対しても然りで感染症そのものを否定し、ワクチンを否定しマスクを否定するなど様々な陰謀論があります。
そしてそれらを信じる者は、否定する者を「無知」、「リテラシーが無い」と見下し、「自分たちだけが真実を知っている」と自らを高みにおきます。
そして自分たちだけが正しいと信じていますので、他者の否定の意見など受け入れません。
今ちょっぴり心配な話題では、このようなものもあります。
安倍政権時に規制緩和して生まれた"機能性表示食品"(特保と違って国の審査不要)の安全性や、問題となっているサプリの安全性を問う事を陰謀とする人達。
#小林製薬がんばれ というタグがトレンドに上がっていて何事かと思ったら、反ワクチン系の人たちが盛り上がっていて、そこに「グローバル企業の企業と政府の陰謀に立ち向かう日本企業」みたいな構図の人がのっかって、阿鼻叫喚の陰謀論祭りとなっていました。陰謀論につける薬はありません。
— 墨東公安委員会 (@bokukoui) April 1, 2024
陰謀論が注目されるようになったのは2020年の米大統領選挙の前あたりからでしょうか。
Qアノンが注目されるようになったが、陰謀論を拡散させるのは宗教系のメディアや関係者によるネットニュースやSNSやYouTube Channelなど、資金力も豊富で影響力は大きいように思います。
先日起きたボルチモアのフランシス・スコット・キー橋へのコンテナ船の衝突事故ですが、たちまち陰謀論が拡散されました。
「サイバー攻撃による故意の衝突」、「船長が新型コロナワクチンの副反応で倒れたため起きた事故」、「イスラエルの関与」、「オバマ元大統領の関与」など悪質な目的を持った偽情報が多数拡散されており、また偽情報の拡散で知られるユーザーが即座に偽情報でネットをあふれ返らせています。
今回の事故もそれに関わる偽情報もアメリカの話しですが、日本も他人事ではありません。
フェイスブックやX(旧ツイッター)、YouTubeなどの偽情報は多く、ファクトチェックの機能は不十分であり、偽情報による社会への影響は真剣に考えねばなりません。
そのためにファクトチェックの機能を高める、社会全体のネットリテラシーを高める・・・・と言っても限界があり、それはネット社会に対する願望であって実現は困難な事ではないかと思います。
ならば一人一人がデマ情報に騙されないよう情報に対して事実を調べる習慣をつける、あるいは知らない事は鵜呑みにせず勉強するなどの努力をして、デマ情報を拡散するのに加担しないように気を付け、また一人一人が誤った情報を正すのを手助けするような意識を持つことが必要ではないかと思います。
■事故の経緯
”アメリカ国歌の作詞者”にちなんで名づけられたフランシス・スコット・キー橋。
コンテナ船ダリ号はスリランカに向うため、3月26日午前12時39分、ボルチモア港の係留を解いた。
そしてチェサピーク湾の2人のパイロット(水先案内人)を乗せたダリ号は、2隻のタグボートに引かれシーガート・マリン・ターミナルから離れました。
その後タグボートが離れたダリ号は、午前1時24分ライトが点滅し、同時に多数の警報音が鳴り響き、操船不能に陥りました。
乗船していたパイロット(水先案内人)は、超短波(VHF)無線で、当該海域のタグボートに支援を要請し、パイロット協会のディスパッチャーは、メリーランド州交通局の担当官に電話をかけて停電について伝えました。
橋の数分前で、船内は完全に停電し、船はエンジン出力と電力を完全に失いました。
図出典:A global disaster unfolds on a bridge over a river in Baltimore
メリーランド州交通局の担当官は、橋の工事のために現場にいた2つの警察部隊に無線で交通を閉鎖するよう命じ、すべての車線が閉鎖されました。
午前1時29分33秒、船は橋に衝突しました。
図出典:Francis Scott Key Bridge collapse
電力喪失からわずか5分後の衝突ですが、交通封鎖のおかげで被害は最小限だったといえるかもしれません。
しかし、いずれも中米からの移民の8人の作業者が、不幸にも巻き込まれ海に転落しました。
幸い2名は救出されましたがメキシコ出身のアレハンドロ・ヘルナンデス・フエンテス(35歳)とグアテマラ出身のドルリアン・ロニアル・カスティージョ・カブレラ(26歳)の2人の作業員の遺体が27日(水曜日)の朝発見されました。
しかしまだ4名が水中に閉じ込めれており、橋の状態が危険でダイバーが近づけないため、まだ確認されていまあせん。
きつい仕事、危険な仕事、低賃金の仕事には移民が携わることが多く、事故が起きれば一番犠牲になりやすいのが移民です。
下層労働者から目の敵にされる移民ですが、移民がいなければアメリカの社会が回らないのも事実で、移民哀歌とでもいえそうです。
■電力が失われた原因は何か?
はたして電力が失われた原因は何か?
制御系や動力系やバックアップ系統含めて、全電源が失われる可能性があるような設計はありえません。
しかし神ならぬ人間の作るもの、全ての可能性を排除することは不可能かもしれません。
航空機ではこれまでコンコルド機事故や日航ジャンボ機事故、ラウダ航空機事故、最近の例ではボーイング737MAX8機の事故など、それまで見逃されていたほんの小さな可能性によって、悲惨な事故が繰り返されてきました。
また殆どの国民が絶対安全を信じていた原子力発電所も2011年3月11日の東日本大震災の津波によって、バックアップの電源の発電機が水没し、絶対に起きないと可能性を否定されていた全電源喪失が起き、あわや東日本壊滅かという危機に陥りました。
だからこそ事故の原因究明は何にも優先して行われ、再発を防止しなければなりません。
アメリカはそのようなポリシーに基づいて、必要とあれば司法取引で関係者の刑事免責までして事故原因の探求をします。
ダリ号の電力喪失やその他の事故に至った要因について、どのような調査結果が出されるか注目です。

