中国がアメリカをWTOに提訴しましたが中国嫌いの日本社会、「自国のことを棚に上げてよく言うよ」と思う人が大半でしょうし、さらにEV嫌いの日本ですから「EVなんかどうでも良い」という人も大半でしょう。
いずれにしてもアメリカのIRA(Inflation Reduction Act:インフレ抑制法)が日本に与える影響など考える人は殆ど皆無!ではないかと思います。
このテレ東BIZのニュースを聞いても影響を受けるのが中国だけだと思うでしょうが、実際にはIRA(Inflation Reduction Act:インフレ抑制法)はアメリカ生産以外は締め出そうというような内容です。
IRAではEVの新車は7500ドル(現在の為替レートでは112万円強)の連邦税を控除されますが、対象となるのは次の通りで、この条件を全て満たさないと減額あるいは控除の対象外です。
- 北米(アメリカ、カナダ、メキシコ)で最終組み立てを行うこと。
- 電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること
- 電池用部品の50%が北米で製造されていること。
このためEVで先行していたフォルクスワーゲンなどの欧州車やHyundai(ヒョンデ)などの韓国車などは控除対象外、また米国生産の歴史が長い日産リーフもバッテリー要件で対象外となり、米国社の19車種以外は全て控除対象外となっています。
IRA(Inflation Reduction Act:インフレ抑制法)の意味するところは、アメリカで売りたければ北米で電池を調達して北米でEVを生産しろという事でしょう。
日本の自動車メーカーの世界生産の70%以上はすでに海外生産、20%強が北米生産です。
北米で最終組み立ての条件は難なくクリアできるでしょうが、問題は電池です。
このため各社とも北米での電池生産や米メーカーと組んで北米での電池調達を強化しています。
すると日本国内はどうなるでしょうか?
不人気で販売台数の望めないEVの生産工場に多額の投資をしても割に合わないでしょうし、日本国内で電池を生産するメリットも薄いでしょう。
そんな日本でEVを生産しても輸出競争力は弱いでしょうし、販売台数が望めなけば海外生産車を逆輸入した方が得かもしれません。
EVに反対していれば何時までも内燃機関車が売れると思っている人が多いでしょうが、否応なしに年々EVの比率は高まり内燃機関車はジリ貧となります。
すると日本の未来はどうなるのか?
自動車一本足打法と言われる日本の経済構造ですが、自動車メーカーは海外で部品を調達し現地のニーズに合わせた自動車を生産して生き延びてゆくでしょう。
しかし先細りの内燃機関車に頼る日本国内はどうなるか・・・・・。
米中経済戦争、エネルギー安全保障の戦いはとっくに始まっているのに、海外のことなど興味が無い日本人。
これで日本は生き残ってゆけるのだろうか?
このリブログ記事を書いたのは去年の7月初めですが、それからもIRA(Inflation Reduction Act:インフレ抑制法)など全く話題にもならず、日本の危機感の無さには呆れ返ります。