空港の衝突防止策・・・SURF-Aの前にまずADS-B義務化が急務 | 夢老い人の呟き

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羽田空港の日航機と海上保安庁機の衝突事故から早や1ヵ月。

現在もなお衝突防止策の検討が行われていますが、その中であげられている対策のひとつがSURF-ASurface Alerting ※Honeywell社などはSURF-IA:SURFace Indication and Alert Systemと呼んでいます)です。

※ANNニュースのスクリーンショットです

 

次の動画には「‟世界初”警告システムの導入検討」というサブタイトルが付いていますが、世界初と言ってもすでに各国で導入・義務化が進んでいるADS-Bが前提で、その機能の一部を発展させたものと言って良いでしょう。

 

 

なぜか日本のマスコミはADSーB( Automatic Dependent Surveillance–Broadcast )には触れようとしませんが、ADS-B装備機同士であれば、滑走路上の航空機は着陸機のディスプレイに表示されるので、今回の事故も防げたのではないかと言われます。

 

 

 

 

ところがここでもネガを探して変わろうとしない日本。

元航空管制官からこのような意見が出ました。

※ANNニュースのスクリーンショットです

 

駄目だこりゃ!ですね。

こうして日本は世界に取り残されてゆきますが、こういう体質では日本が沈んでゆくのは当り前です。

 

ここでいう「位置情報システム」とはADSーB( Automatic Dependent Surveillance–Broadcast )ですが、米欧の空域はADS-Bが装備されていない航空機は飛行できませんし、今や新興国でさえも義務化を進めており、海外に飛ぶ航空機にとっては必須ですし、ADS-B装備は海外では常識になろうとしています。

 

ざっとあげてもアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、香港、インドネシア、セーシェル、シンガポール、スリランカ、ベトナム、台湾、中国、コロンビア、インド、マレーシア、ニュージーランド、フランス領ポリネシア/タヒチ、カナダ、UAE、サウジアラビア、南アフリカ、メキシコ、キュラソー島FIR、モンゴル、ニューカレドニア/NFFF FIRフィージー/NFFF FIR、グアテマラ、エルサルバドルなどで義務化されていますが、いかに日本が立ち遅れているか分かるかと思います。

 

   

 

 

ADS-BとSURF-A

 

SURF-A自体はそんなに新しいシステムではなく、Honeywllやエアバス社が何年も前から研究してきたものです。

 

ベースはADS-BですからTechnologyとしてはそれほど新しいものではなく、また新たな機器は必要なく、警報をどのように出すかとか航空管制との統合をどうするか等の、ソフトウェア上の問題だと思います。

 

次の図の左の航空機はGPSからのデータと、ADS-B inとして他機のADS-B outデータ(GPS Positionや機速や高度その他のデータ)を受信します。

(※もちろん左の航空機自身も、他機や管制塔などにADS-B outデータを発信します)

 

そしてSURF-Aではこれらの情報から衝突回避の必要性がある時は衝突回避の指示を出します。

 

 

このエアバスの動画は5年前にアップロードされたものですから、さらにUpdateされていると思いますが参考までにご覧ください。

 

 

 

 

SURF-AはADS-BのATSAW(Airborne Traffic Situation Awareness)の一部

 

下図のエアバス社のADS-Bロードマップを見るとStep2ATSAWという項目があります。

これはAirborne Traffic Situation Awarenessの略で航空交通状況の把握というような意味ですが、その背景となるTechnologyはADS-B、TCAS(航空機衝突回避システム)、航空交通状況コクピットディスプレイです。

 

出典:irbus - ADS-B IN presentation - ADS-B task force.ppt

 

 

そしてATSAWの目指すものは安全性効率の向上ですが、それは空中だけではなく、空港の地上も含まれます

言うなればその部分だけを切り取って警報を出すのがSURF-Aといえるでしょう。

 

出典:irbus - ADS-B IN presentation - ADS-B task force.ppt

 

 

そして現状でもADS-B装備機滑走路上の航空機もADS-B装備機であればNavigation Displayに表示されますが、SURF-Aはさらに警報が加わり、回避操作が必要であれば指示されるという事になるかと思います。

 

出典:irbus - ADS-B IN presentation - ADS-B task force.ppt

 

 

ということでSURF-Aは特段目新しいものではなく、ADS-Bを発展させることによって生じる機能の一部と言えると思います。

 

しかしながら日本では未だにADS-B義務化はおろか話題にさえ上らず、あまりにも情報が遅れています。

 

ニュース解説の元航空管制官でさえこのような認識ですから、絶望的です。

 

情報鎖国の日本は世界の最先端を走っていると思ったら、じつは一周遅れだったなんて寂しい事が起きそうですが、それがイノベーションという言葉は連呼されるのにイノベーションは起こらない、日本企業の生産性が劣る原因のひとつではないかと思います。