アラスカ航空B737Max9ミッドキャビンのプラグドアの脱落で厳しい目にさらされているボーイング。
FAAは書簡の中で、「(最近の状況は)ボーイング社が完成品が承認された設計に適合し、品質システムの検査と試験手順に従って安全に運航できる状態にあることを確認できなかった可能性があることを示している」としています。
FAAは「耐空性認証または承認のために提示され、その設計に適合している」こと、および安全基準への準拠を確認するために「適切な検査およびテスト活動」が実施されていることを確認することなど、同社が満たさなければならない要件を挙げ、プラグドアを備えたすべてのボーイング737-9 Maxは、FAAがそれぞれが安全に運航を再開できると判断するまで運航停止としています。
■Atlas Air FLT5Y95 B747-8貨物機エンジン火災
そんなボーイングに追い打ちをかけるように今度はアトラス航空のボーイング747-8貨物機が、マイアミの空港を離陸し上昇中にNo.2エンジンから出火。
“Mayday, mayday, giant 095 heavy(便名), engine fire. Request vectors back to the airport,”のエマージェンシーコールを発しマイアミ空港に緊急着陸しました。
着陸後の検査ではエンジンにソフトボール大の穴が開いていたとのことです。
NEW INFO: FAA says “post flight inspection revealed a SOFTBALL SIZE HOLE above the #2 engine” of Atlas Air Boeing 747-8 cargo flight that suffered an engine fire over Miami late Thursday.
— Pete Muntean (@petemuntean) January 19, 2024
Successful emergency landing, great work by the crew!
Video from Melanie Adaros. pic.twitter.com/5Nu9LpwwIq
このビデオを見ると火災は燃料漏れなどではなくエンジン内部、Gas Pathという低圧コンプレッサー入り口から低圧タービン出口までのエンジンコアの損傷です。
それもタービンブレードが損傷した程度のダメージではなく、以前あった低圧タービンと低圧コンプレッサーを繋ぐミッドシャフトの損傷のようなトラブルを疑う専門家もいるようです。
■GEnxエンジンミッドシャフト破損の事例
このエンジンは最新のB787型機などにも装備されているのと同じシリーズのジェネラルエレクトリック社製GEnxエンジンですが、過去には下図赤丸部のミッドシャフトが破損した事故があります。
出典:https://www.flickr.com/photos/flightblogger/7741859490/
低圧タービン側のシャフトと低圧コンプレッサー側のシャフトは下図のように繋がれており、図のThreads部が破損しました。
出典:B787 GEnx Fan Shaft Failure
詳しくはこちらをお読みください。
NTSB、GEnx-1Bおよび-2Bエンジンの検査勧告を発表 (ndt.org)
しかし私はエンジンだけでなく機体側にも問題がありそうに思えます。
それはパイロットがエンジン火災に対する一連の操作を行っているので、エンジンへの燃料の供給は絶たれているはずにも拘らず、エンジンからの炎が止まらずに続いていることに疑問を感じるからです。
■離陸時のエンジン火災に対するパイロットの操作
次のビデオは離陸時のエンジンファイアのシミュレーターですが、通常はエンジンのファイアーセンサーが火災を検知するとすぐにベルが鳴り、エンジンファイア―ハンドルが赤く点灯します。
しかしこのビデオのようにV1(離陸決心速度)直後の火災の場合はすぐに消火の操作を行ったのでは離陸を失敗する危険性があります。
そのためTake off Inhibitという機能があり、高度400フィートに達するまではファイアーベルを鳴らしません。
このビデオでは5分22秒のところで、パイロット前方のセンターインスツルメントパネルに赤いメッセージ(ENG4FIRE)が表示されますが、この時同時にオーバーヘッドのファイアーハンドルとペデスタルのEngine Fuel Shut off Leverも赤く点灯します。
しかしファイアーベルはまだ鳴りません。
そして5分47秒でファイアーベルが鳴り、高度400フィートでパイロットはエンジンを止め、消火操作を行います。
6分37秒にエンジンファイア―ハンドルが引かれますが、これによりエンジンへの燃料の供給と油圧作動油の供給、エンジンからの圧縮空気の供給が絶たれます。
さらにエンジンファイア―ハンドルを右か左に回すと消火のためにフレオンガスが発射されます。
Atlas Air機のパイロットも通常の消火操作を行っていますので、エンジンへの燃料供給は絶たれ、いつまでも炎を噴くはずは無いのですが、ビデオを見ると継続的に炎を吹き続けています。
これがなぜなのか?
機体の燃料遮断のシステムが正常に作動したのか疑問に感じます。