油圧式フロアジャッキとワイドトレッドスペーサー | 夢老い人の呟き

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先週始めから風邪を惹き、テレビを観たり(タガログ語は分からないので、アンドロイドTVでYouTubeやNETFLIX観賞)眠ったりとゴロゴロと過ごしていましたが、長いサラリーマン生活最後の勤務地北海道は車の事故が多かったようです。

 

 

ジャッキが下がってしまった事故

 

最初に作業中に車の下敷になって亡くなられたニュースですが、いろいろな方がジャッキアップしたら必ずリジッドラック(通称「馬」)を取り付けろとか、車体の下に外したタイヤを置けとか、落下防止策を述べています。

しかし意外と見逃されていそうな点もありますので、ちょっとお知らせしてみようかと思います。

 

 


動画の20秒あたりに車体の下を後方から映した映像がありましたが、この写真から見るとリヤサスペンションのクロスメンバーの中央辺りを油圧式ガレージジャッキ(フロアジャッキ)で持ち上げていたのではないかと思います。

しかし油圧式ジャッキはバルブやシリンダーのインターナルリークで、時間の経過と共に下がります。

パンタグラフ式などのように長時間ホールドするのには適しませんから、リジッドラックをセットする、あるいは車体の下にタイヤなど下がり止めとなるようなものを置くなどせずに、下に潜るのは危険すぎます。

 

 

もうひとつ注意するのは、このようなカンチレバータイプ(片側を支点にアームが上下する)の場合は、車体を持ち上げるに従い、時計の針が9時の位置から12時に向って移動するようにジャッキテーブルが移動します。

ですからその分ジャッキ本体が移動してその動きを吸収しないと、車体からジャッキが外れてしまう可能性がありますので、ジャッキアップする場所は小さな車輪が自由に転がれるように平滑な面である必要があるので、屋外の作業には不向きです。

不幸な事故に合わないよう、知っておいた方が良いかと思います。

 

 

ワイドトレッドスペーサー

 

次は2週間前になりますが、違法改造車のタイヤが外れて小さな女の子を直撃したという痛ましい事故が起きました。

本来公道を走ってはいけない車両による事故ですが、この事故を技術的な観点から見てみます。

 

 

■ホィールとハブの接続点(接合ポイント)

最初に、タイヤが外れた車両の違法改造を観る前に、日本車と欧州車のタイヤの取り付け方法の違いを紹介します。

下の左の写真が日本車や米国車の取り付け方法、右が欧州車の取り付け方法ですが、日本車はナットでホィールを固定するのに対し、欧州車はボルトで固定します。

 

出典:なぜホイールを取り付けるのに、日本車はナットで欧州車はボルトなのか?

 

 

その理由はナット固定式接続点(接合ポイント)が➀ハブとハブボルト、➁ハブボルトとホィールナットの2ヶ所あるのに対し、ボルト固定式の場合は接続点(接合ポイント)がハブとホィールボルトの1ヶ所しかありません。

 

組み立て物の剛性を上げるためには、接続点(接合ポイント)が少ないほうが、取り付け剛性は上がります。

欧州車は使用される速度域が高く、足まわりへのストレスが高いゆえに、少々取り付けにくくても剛性が高いほうを重視するわけです。

出典:なぜホイールを取り付けるのに、日本車はナットで欧州車はボルトなのか?

 

 

■ワイドトレッドスペーサー取り付け車は接続点(接合ポイント)が2倍

 

では脱輪事故を起こした違法改造ジムニーはどのようになっているか?

タイヤが取り付けられるホィールハブには厚さ5㎝超と思われる、薄紫色のワイドトレッドスペーサーが取り付けられており、タイヤホィールを固定するハブボルトはジュラルミン製と思われるワイドトレッドスペーサーに取りつけられていますが、写真からハブボルトが変形しているのが分かります。

 

 

ではワイドトレッドスペーサーはどのようなもので、どのように取り付けられるのか?

以下写真は次のブログよりお借りしました。

 

 

写真は厚さ76㎜のワイドトレッドスペーサーです。

 

このスペーサーをハブボルトにナットで固定します。

ナットに規定トルクをかけた後、タイヤを取り付けます。

 

普通タイヤ交換の時はタイヤが回らないように、軽くタイヤを接地させてからホィールナットにトルクを書けますが、スペーサー取り付け時はそうはゆきません。

タイヤが取り付けられていない状態でハブを回らないように固定してナットにトルクをかけますが、正しく規定トルクをかけるのは困難ではないかと思います。

 

 

日本車は接続点(接合ポイント)が2ヶ所であるのに対し、欧州車は接続点(接合ポイント)が1ヶ所であり、それは剛性のためであると述べましたが、ワイドトレッドスペーサーを使用すると接続点(接合ポイント)は➀ハブハブボルト、➁ハブボルトスペーサーナット、③スペーサースペーサーボルト、④スペーサーボルトホィールナットの4ヶ所となり、剛性が低下すると共にナットが緩む可能性も2倍に増えます。

 

また鉄製のハブに比べて、ジュラルミン製と思われるスペーサーは、スタッドボルトの保持強度が落ちると思いますが、これも安全性に影響するのではないかと思います。

 

 

さらに写真からも想像が付くと思いますが、ハブやハブボルトにかかる荷重ハブベアリングにかかる荷重キングピンナックルアームにかかる荷重等が増大します。

 

そしてタイヤが極端に外に出ますのでスクラブ半径がポジティブに大きくなり、ステアリングが重くなる、キックバックが強くなる、ジャダーやシミーが強くなる等、安全性に関わる影響が出ます。

 

 

元々ジムニーはジャダー(シミー)が起きやすいので有名ですが、さらに安全性に支障をきたすことになります。

 

このジャダーはホィールナット脱落に大きく影響しているような気がします。

一般に想像するステアリングシミーとは次元が異なるようです。

 

 

 

 

ということで公道を走ってはいけない車両による痛ましい事故で、警察も安全性に支障がありそうな改造や、他者に迷惑を与える改造については、もっと厳格に取り締まったらいかがかと思います。