※ 厚生年金保険では、被保険者が受け取る給与(基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与)を一定の幅で区分した報酬月額に当てはめて決定した標準報酬月額を、保険料や年金額の計算に用います。
例えば税引き前の給与が40万円の人の厚生年金保険料は計算上は73,200円となり、それを労使折半します。
しかし国民年金の一番の問題は納付率の低さです。
出所:国民年金納付率73.9% : でも、保険料免除・猶予の対象者が4割強
国民年金保険料の納付率の推移を見ると上のグラフのように推移しており納付率が低い事が分かります。
近年納付率が上昇していますが、これは下のグラフの「保険料免除・猶予者」が算出から除外された納付率です。
出所:国民年金納付率73.9% : でも、保険料免除・猶予の対象者が4割強
国民年金や国鉄共済を救うための法改正が昭和60年(1985年)の基礎年金制度と言って良いでしょう。
それは【昭和60年改正前】の図にも「〇産業構造や就業構造の変化を受け、財政基盤が不安定に(国民年金、国鉄共済など)」と書かれています。
「財政基盤が不安定に」というのはお役所言葉で、実際には「財政が不足」と読み解くべきでしょう。
そして改正後は国民年金が基礎年金とされて、厚生年金や共済年金と共通にされ、国民年金や国鉄共済の財政不安は解消されました。
当然改正後の厚生年金や公務員共済年金の1階部分(基礎年金)と2階部分(厚生年金・共済年金)の合計は、改正前の厚生年金や公務員共済年金よりも減らざるを得なかったでしょう。
出所: [年金制度の仕組みと考え方] 第4 公的年金制度の歴史
そしてこの時同時に作られたのが第3号被保険者制度です。
改正前の厚生年金は定額部分と報酬比例部分と加給年金で構成されていました。
それが改正後は老齢厚生年金と老齢基礎年金という構成となり、専業主婦のいる世帯であれば妻名義の老齢基礎年金がプラスされます。
これは基礎年金制度への変更で、厚生年金受給額は減りますが、専業主婦のいる世帯であれば妻名義の老齢基礎年金がプラスされる事により、「世帯としての総額はあまり減りません」という事でしょう。
何か「厚生年金加入者が損している」と感じさせないための方策のような気がしなくもありませんが。
出所: [年金制度の仕組みと考え方] 第4 公的年金制度の歴史
ところが厚生年金の受難はこれで終わりません。
現在は厚生年金と共済年金は一元化されていますが、これはなぜか?
日本の国民は公務員を減らせの大合唱。
行政は若い人の採用を抑え、年配の公務員が定年で自然減となるのを待ちます。
すると公務員共済年金はどうなるか?
年配の職員は次々と年金受給者となる一方、それを支える若い職員は減る一方で、年金扶養比率( 1人の年金を何人の加入者で支えているのかを示す数値)はどんどん悪化します。
例として地方公務員の共済年金を見ると次のグラフのようになります。
- 戦後の復興期、高度成長期、たくさんの地方公務員が就業しましたが、日本を支えた地方公務員は年々高齢化し、退職共済年金受給権者数(グラフの紫の棒グラフ)は年々増加します。
- 一方組合員数は平成6年・7年をピークに以後減少しており、昭和38年には57.5だった年金扶養比率は年々低下し、平成24年には1.4まで下がっています。
現在はさらに下がっていると思いますが、これでは制度は破綻します。
そこで平成27年10月1日に「被用者年金一元化法」が施行され、これまで厚生年金と共済年金に分かれていた被用者の年金制度が厚生年金に統一されました。
このように厚生年金は昭和60年の法改正で、国民年金の財政不足を解消するために基礎年金制度で国民年金と一元化され、そして共済年金の破綻を防ぐため平成27年の「被用者年金一元化法」で共済年金と一元化されました。
つまり民間の勤め人の厚生年金が国民年金と共済年金を支えてきたのであり、そのような経緯も知らず「第3号被保険者制度は不公平」だなどと攻撃されると「ふざけるな」と言いたくなります。
それも妻名義の老齢基礎年金を受給できない厚生年金加入者(私もです)が言うのなら分かりますが、政治家や連合(いったいどこの世界に組合員の権利を削ろうとするような労組があるのか?)や、事情を知らない国民年金加入者からの批判に対しては、「それなら基礎年金制度を止めて厚生年金を独立させてくれ。そうすれば厚生年金加入者はもっと受給できるはずだ!」と言いたくなります。
国民を分断させるような事は言いたくありませんが、事実に基づいた反論はしないとせっかく積み立てた権利がどんどん削られていきそうな現在の日本、勤め人の皆さんはもっと年金制度を勉強した方が良いと思います。