あまり知られていませんが、海に向って急降下し、あわや大惨事寸前だったのが2022年12月18日ハワイのマウイ島を飛び立ったサンフランシスコ行きのユナイテッド航空1722便ボーイング777型機です。
■あわや大惨事のUA1722便
これは自由落下に近い降下率で、海面に飛び込む寸前に回復して上昇した恐ろしいインシデントです。
そしてこの急降下から回復するのに+2.7Gを記録したと見られています。
これは機体の構造設計の限界を超えており、もし実際に2.7G記録したとしたら、NTSB (National Transportation Safety Board:国家運輸安全委員会)の調査を必要とする重大なインシデントです。
■NTSBに届け出ず、社内調査もしなかったユナイテッド航空
しかし呆れたことにユナイテッド航空はこれをNTSB (National Transportation Safety Board:国家運輸安全委員会)に届けず、社内調査も行っていませんでしたが、2か月後、マスコミに取り上げられてからNTSBに届け出ました。
そして先週NTSBの最終報告が出されましたが、原因はパイロットのミスです。
経過と原因
2022年12月18日、マウイ島発サンフランシスコ行きUA1722便はフラップを20ユニットにセットし空港を離陸した。
- B777型機の離陸時に使用するフラップのポジションは5、15、20ユニットがあり、フラップの角度が大きいほど揚力は大きいが、運用限界速度(Maximam Operating Speed)が低くなります。
- 運用限界速度(Maximam Operating Speed)はフラップのセットに応じて自動的にパイロット正面のPFD(Primary Flight Display)というディスプレイに表示されます。(下図はB737だがB777も概ね同様)
当該機はフラップ20ユニットで離陸後、乱気流に遭遇し対気速度が変動したため、機長はフラップを5ユニットに上げるよう副操縦士に指示。
しかし.副操縦士は5ユニットを15ユニットと聞き間違え、15ユニットにセットした。
当該機は加速を続けたが、フラップ15ユニットの運用限界速度(Maximam Operating Speed)はフラップ5ユニットよりも大分低く、機速がフラップ15ユニットの限界速度に近づいたため、機長は手動でエンジンの主力を下げました。
そしてフラップを15ユニットにセットした20秒後にフラップを5ユニットにセットし、5ユニットにセットした僅か4秒後フラップを1ユニットにセットしました。
- その結果、フラップ1ユニットに対して機速が低いため自動的に機首下げとなり、急降下開始。
- フラップ1セットの4秒後GPWS“Sink Rate(降下速度が速すぎる)”、5秒後‟Pull UP(引き上げろ)”のウォーニング。
- 10秒後‟Too Low Terrain(低すぎる)”のウォーニング
そして機速が増したため機首上げしてリカバーでき、その後上昇してサンフランシスコへの飛行を継続しました。
これは日本の航空会社ならば空港に引き返し、整備点検を行うケースです。
GPWSのウォーニングの意味はこんな感じですが、最終的にリカバーできて幸いでした。