ALPS処理水 | 夢老い人の呟き

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政府がALPS処理水の定義を変更しました。

今後は、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称するとのこと。

 

このこと自体は結構なことだと思います。

しかし問題は現在貯蔵している処理水の7割は「トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っている」ことと、 「 ALPS処理水の処分の際には、2次処理や希釈によって、トリチウムを含む放射性物質に関する規制基準を大幅に下回ることを確認し、安全性を確保する」としていること です。

 

確かに100倍に希釈すれば濃度は1/100に薄まりますが、その代わりに放出水量は100倍に増え、放出する放射性物質の総量は全く変わりません。子供だましのロジックといえるでしょう。

 

 

■ALPS処理水定義の変更

 

以下引用

1.背景

東京電力福島第一原子力発電所では、地下水や雨水などが建屋内の放射性物質に触れることや、燃料デブリ(溶け落ちた燃料)を冷却した後の水が建屋に滞留することにより、汚染水が発生しています。

 

汚染水は、ALPS等の浄化装置によってトリチウム以外の放射性物質を取り除く処理を行った「ALPS処理水」として敷地内のタンクに貯蔵してきましたが、貯蔵タンクが増加し、敷地を大きく占有する状況の中、その処分が課題となっていました。

 

こうした中、4月13日に開催した廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議において、2年後を目途に、ALPS処理水を海洋放出する方針が決定されました。

 

2.ALPS処理水の定義の変更

過去に発生した浄化装置の不具合や、汚染水が周辺地域に与える影響を急ぎ低減させるための処理量を優先した浄化処理等が原因で、現在、タンクに貯蔵されている水の約7割には、トリチウム以外にも規制基準値以上の放射性物質が残っています

 

4月13日に決定した基本方針において、ALPS処理水の処分の際には、2次処理や希釈によって、トリチウムを含む放射性物質に関する規制基準を大幅に下回ることを確認し、安全性を確保することとしていますが、上記の経緯から、規制基準値を超える放射性物質を含む水、あるいは汚染水を環境中に放出するとの誤解が一部にあります。

 

そうした誤解に基づく風評被害を防止するため、今後は、「トリチウム以外の核種について、環境放出の際の規制基準を満たす水」のみ「ALPS処理水」と呼称することとします。

引用終了

 

 

この経産省のニュースリリースを見ると、以前、浄化されたはずの汚染水約89万トンのうち、8割超にあたる約75万トンが基準を上回っており、一部のタンクの汚染水からストロンチウム90などが基準値の約2万倍にあたる1リットルあたり約60万ベクレルの濃度で検出された2018年10月と、あまり状況は変わっていないように思います。

 

 

 

■福島第一原子力発電所に林立している「処理水タンク」の中身は?

以下を合わせて処理水と呼んでいますが、ここでは旧定義のALPS処理水で説明します。

  1. 「ストロンチウム処理水」:ALPS の前処理としてストロンチウム(Sr)とセシウム(Cs)を除去し,脱塩した水
  2. 「ALPS 処理水」:ALPS による処理後の水(今回定義変更)

出典:”汚染水の浄化処理”

 

汚染水処理の概要については次の動画をご覧ください。

この動画はALPSが運用を開始し、試行錯誤していた時期に当たります。

汚染水処理は濾過や沈殿などにより放射性物質を取り除くもので、取り除いた放射性物質は放射性廃棄物となりますので、これの処分も問題となります。

 

 

 

処理水は以下のように分かれます。

  1. 高濃度多核種放射能汚染水の処理方法を模索していた初期の発生分(~2013 年)
  2. ALPS の運用を開始し操業方法を試行錯誤していた時期の発生分(2013~2015 年)
  3. ALPS が安定動作した時期(2016 年)
  4. 初期に発生したRO 濃縮塩水を含め滞留したSr 処理水のALPSによる再処理を行っている時期(2017 年~)

 

■ALPS処理水とは

4月12日以前の定義でいう「ALPS 処理水」とは、これらのうち2,3,4です。

これら3 つの時期によってALPS 処理水に含まれるトリチウム以外の放射性核種の濃度は大きく異なっており,同一に論じることはできません。

2020年2月号牧田寛「原点から考える福島第一原子力発電所放射能汚染水海洋放出問題」より”より引用

 

 

従ってこれまでALPS処理水と呼んできたものを、2021年4月13日からの基準でALPS処理水と呼ぶことはできません

ましてや4月12日以前のALPS処理水を「トリチウム水」と呼ぶことは、とんでもない詐称です。

 

 

海洋放出の是非については別の機会に述べたいと思いますが、まずは海洋放出の是非を考える前提となる、処理水の状況と「ALPS処理水」、「トリチウム水」という名称について、正しく理解していただきたいと思います。