ガラパゴス日本を襲う中国の新EV NIO ET7の衝撃 その3 | 夢老い人の呟き

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今回は前半はNIOのEV全般について、後半はET7について書きましたが、一番のハイライトはNIO Aquila Super Sensingです。

ここはぜひともお読みください。

 

 

◆燃費モードについて

なお、EVについての内容で、燃費や航続距離について触れなければなりませんが、これが実にややこしいことに、国によって次のような規格があります。

但し中国はNEDCモードという規格で、これは名称は古い欧州のモードのThe New European Driving Cycleと同じですが、中国NEDCの内容は知りませんので、燃費の換算については推測となりますがご容赦ください。

  1. EPAモード(アメリカ)
  2. WLTCモード(EU)
  3. WLTCモード(日本)
  4. JC08モード(日本)

これらがどれくらい違うかというと、例えば日産リーフの62kWh仕様でモードごとの航続距離を比べると、次のようにモードによって大きく異なり、JC08ですと最も厳しいEPAの6割となってしまいます。

NIOの燃費や航続距離については中国NEDCモードで、EPAに対してどのくらいの割合になるか分かりませんが、当てずっぽうにいえばJC08くらいに見ておけば良いのではなかろうか?と思います。

 

参考:リーフ62kWhの、モードごとの航続距離

  1. EPA(米環境省)モード : 226Mile(約364㎞)
  2. WLTCモード(EU)モード : 385㎞
  3. WLTCモード(日本)モード: 458㎞
  4. JC08モード    : 570㎞

 

◆NIO社について

NIO(上海蔚来汽車)は「中国版テスラ」とも呼ばれる、2014年に誕生したEVスタートアップ企業で、現在は前回紹介したニュルブルクリンク市販車最速のEP9はラインナップから外れ、前回紹介した “ES8” に加え、2019年から生産開始した“ES6”と2020年生産開始した“EC06”の3車種があります。

 

 

 

 

 

 

 

NIO ET7

 

ET7”はNIO初のセダンとなりますが、自動運転を前提とした大型のスマートカーで、その高度な装備には驚きます。

 

 

全長5098mm、全幅1987mm、全高1505mm、ホイールベース3060mmとかなり大きな車体で、全長・全幅ともテスラモデルSを上回ります。

643馬力/627ポンドフィート(86.7kg・m)のモーターをフロントとリアに装備し、0-96㎞/h加速は3.9秒とテスラモデルSの最速モデルの2.1秒(これは気違いじみた加速力です)には及びませんが、それでもスポーツカーとしても十分に速い加速力です。

 

 

この図に航続距離が1000㎞と書かれていますが、これは2022年に登場する150kWhの全固体電池搭載車で、当面電池容量70kWh100kWh 仕様のみラインアップされ、航続距離は次のようになります。但しこれらは中国NEDCなので、割り引いて考える必要があります。

  • 70kWhバッテリー:310マイル(496㎞)
  • 100kWhバッテリー:435マイル(696㎞)

上述のようにNEDCモードの数字なので正確に比較するのは無理ですが、JC08とあまり変わらないと仮定すると、70kWhバッテリーでも日産リーフの62kWh車 とあまり変わらない496㎞という航続距離は、この大きな車体を考えると素晴らしく、車体サイズの割にかなり燃費性能が良いと想像できます。

 

NIO社のアナウンスによると、2022年登場の150kWhの全固体電池パックはエネルギー密度が360Wh/Kgと現在のリチウムイオン電池の1.5倍で、バッテリーパックが軽量コンパクトとなり、また耐久性も優れています。

2022年に発売とされていますが、全てのNIOの車両が150kWhのバッテリーパックに交換可能です。

 

 

■NIO Aquila Super Sensing

 

驚くのが自動運転の電子装備で、NIO Aquila Super Sensingと名付けられていますが、超長距離高解像度LiDAR11台の8MP高解像度カメラ強化されたドライバー監視システムミリ波レーダー5基12台の超音波センサー高精度測位ユニットV2Xを含む33台の高性能センシングユニットを備え、スーパーコンピューター、NIO Adam Super Computingは、1秒あたり8ギガバイトのデータを、処理できます。

 

 

これはセンサーだけに関していえば、テスラをも大分上回り、世界の市販車の最高峰といって良いと思います。

これで価格が中国国内では70kWhモデルが44万8000元(約720万円)、100kWhモデルが50万6000元(約813万円)というから驚きというか、あり得ない価格ではないかと思います。

 

 

 

Lidar

なお聞きなれない名前が大分出てきますが、Lidar(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging、「光検出と測距」ないし「レーザー画像検出と測距」)は多数のレーザーパルスを連続的に照射して、反射光によって物体の形状や物体までの距離を測定し、悪天候でも、また対向車のライトの影響などを受けずにセンシング出来ますが、非常に高価です。

 

 

V2X

V2Xは「Vehicle to X)」を意味し、クルマと何か(クルマや歩行者、インフラ、ネットワークなど)との接続や相互連携を総称する技術です。クルマのセンシング技術だけでは感知しきれないクルマや歩行者などを検知したり、ドライバーの快適性やインフォテインメントなどを向上させます。

 

 

かなり先の未来の話と思ったことが間もなく実用化されそうですが、中国の進歩の速さには驚かされます。

いまだに中国が日本よりも遅れていると思っている人が多いと思いますが、認識を改め中国に対抗してゆくにはどうすべきか、真剣に考える必要があります。

 

現在世界の特許出願件数は下図のようになっています。

これでも危機感を感じていない人が多いことが、日本の一番の問題かもしれません。

政府が学術を軽んじ、科学を軽んじると科学技術力も衰え、特許出願件数も増えないのではないでしょうか。

そしてそれは確実に国力を低下させます。

出典:中国の特許出願、8年連続首位 世界全体の半分占める