V2G(Vehicle to Grid)とエネルギー政策 | 夢老い人の呟き

夢老い人の呟き

願い望むは願望  夢は寝てみるもの 儚く叶わぬもの
  人に夢と書き儚  夢に人と書き夢人 
    夢と人の中に老いが入り夢老い人  儚く老いる独り言

先日書いたブログ記事の中で、日産のバッテリー部門を買収した中国エンビジョン社CEOは、「大量のEVが一度に充電をしようとすると、大変な事態になる。IoTとAIを組み合わせたシステムで、全体を管理する必要が出てくる。電力需要を正確に予測し、適切な給電が行える、非常に洗練された仕組みが必要になる」と語っていますが、日本はどうするのか?

 

またこれに加え、電力供給側も再エネはじめ多様化し出力変動も大きくなり、如何にしてそれらを統合制御するか、そして如何にしてEVをVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)の一部として、変動を吸収して効率よく安定供給するか、課題は多々あります。

 

 

■V2G(Vehicle to Grid)

これに対して日本で研究されているのはV2G(Vehicle to Grid)です。

V2Gとは電力のオフピーク時にEVに充電し、 電力網に負荷がかかっている電力のピーク時には逆にバッテリーに蓄えた電力を売り戻すという技術です。

電力網の負荷変動を平滑化する事が期待できると共に、ユーザーにとっては売電価格と買電価格の差額でEVの使用電力の電気料金をカバーできるというメリットも期待できます。

 

これについては日本は他国に先行しており(“焦点:EV充電コスト無料化も、日欧企業が狙うV2G電力供給”ご参照)、国内では日産自動車は東北電力などと組み、トヨタは豊田通商と中部電力が組んでV2G(Vehicle to Grid)を実証実験を行っております。

 

また九州電力は日産自動車、三菱自動車の協力を得て、V2Gを活用した電力の需給調整の実証実験を開始しています。

以下引用

九州電力は2018年5月31日、電気自動車(EV)内蔵の蓄電池を電力系統に接続して充放電するV2G(Vehicle to Grid)技術を活用して電力需給を調整する実証事業を開始すると発表した。この事業にはEVを販売している日産自動車や三菱自動車工業のほか、一般財団法人電力中央研究所と三菱電機が協力する。充放電スタンドに接続したEVが内蔵する蓄電池にに充電するだけでなく、放電することで電力系統の需給調整にどれほど活用できるかを検証する。実証事業は2018年6月から始める。 

今回の実証の大きな目的の1つは、日本中に広がり、今も増え続けている太陽光発電所や風力発電所が発電する電力を吸収する手段としてV2Gを有効に活用する可能性を探るという点にある。

実証に当たってはまず、V2Gの機能を持たせた充放電ステーションを設置し、その機能を検証する。そして、複数の充放電ステーションを統合制御するV2Gシステムを構築し、充放電制御量を指令する機能や充放電実績データを蓄積する機能を検証する。そして、EVの充放電量をどの程度制御でき、電力系統安定にどれほど活用できるかを評価する。

今回の実証事業は、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業である「平成30年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業(V2G アグリゲーター事業)」の採択を受け、補助金を活用して実施する。

引用終了

 

 

また日産自動車と東北電力の実証実験の概略は‟V2G実証プロジェクトの概要について”によると下図のようになります。

 

 

 

ここで将来の課題として問題となりそうなのは、日本の充電方式・CHAdeMO方式だと思います。

CHAdeMO方式には充電器と電力グリッドの間の情報のやり取りがありません

 

日・中のCAN通信は充電のコントロールのみを行っています。

 

欧米のHPGPは充電器と電力会社との通信もしており、充電に対する課金や電力平準化の役割も兼ねています。

 

複数の充電ステーションを統合制御し、電力網の過剰電力を吸収したり、VPP(仮想発電所)として電力を供給したり、課金したりするためには充電ステーションと電力グリッドとの通信は不可欠だと思います。
よって、V2G、スマートグリッドを前提にすると、CHAdeMO方式も見直す必要があるのではないでしょうか?
 
 
またこれから再エネはじめ電力源が多様化し、スマートグリッドとして統合制御するようになると、送電網が大きい方が有利です。
ヨーロッパはEU全域が電力網で繋がり電力グリッドとなっています。
日本の送電網は地域ごとに独立した民営で良いのか?
官営として日本全体をカバーする電力網として、統合制御すべきではないかと思います。
 
いずれにしてもこれからのテクノロジーの進歩とニーズに対して、これまでの固定観念に捕らわれていては対処できません。エネルギー政策、電源政策、送電網政策として一体化して構築してゆくことが必要ではないでしょうか。