これは結構衝撃的な報道だと思います。
‟テレビ東京WBS( WORLD BUSINESS SATELLITE)”で、ルノーが日産に送った書簡を入手し、その内容を放送しておりました。
私はこれを見逃しましたが、放送内容の紹介としては、次のように書かれています。
ルノーが先ほど代理人を通じて日産に送った書簡を、テレビ東京が独自に入手しました。
日産の内部調査に対する強い批判が10ページにわたって綴られています。関係者は「これで日産とルノーの戦争が始まる」としています。
書簡のタイトルは「日産の内部調査について」です。主な内容は、
- 日産がルノーの許可なくルノーの従業員に直接接触したこと、日産の幹部が東京地検特捜部と連携しているように装ったこと、ルノーの従業員を日本の特捜部に協力させるために交通費や宿泊費を負担すると提案したことなどを独自に集めた証拠として挙げて、倫理的な問題であり非常に残念に思っている
- 日産が日本の法律についてルノーの従業員に意図的に間違った説明をした
- ルノーの従業員に対し、国際法に基づかない聞き取りをしたことがフランスの法律に抵触する可能性があるなどで、10ページにわたって日産の内部調査の手法を批判しています。
また ‟次の様なツイート” がありますが、ここまでテレビ東京が公開していたとは驚きです。
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上のツィートに出ている法律事務所は ‟Latham Watkins” という、アメリカの大手法律事務所で日産とフォードとホンダがクライアントのようです。
さらなる情報は以下をご参照ください。
https://twitter.com/nobuogohara?lang=ja&lang=ja
https://twitter.com/richard__99/status/1086276390905761792
https://twitter.com/junko1958?lang=ja
こうなるとテレビ東京のいうようにルノー対日産の戦争かと思います。
しかし、マスコミは報じませんが、本来ルノーもフランス政府も日産の経営に介入出来ませんでした。
2015年12月11日、日産・ルノー・フランス政府の間で、ルノーが日産の取締役会を支配しようとしたり、日産の承認を得ずに株主総会に決議提案を試みたりしないことで合意していたのです。
以下引用
仏自動車大手ルノーは11日、連携相手の日産自動車、仏政府との間で、対立解消に向け大筋で合意に達したと正式発表した。
ルノーや仏政府が、日産に今後介入しないことを保証するなど、パワーバランスが日産へとシフトする内容となった。日産は1999年、ルノーの支援を受けたが、現在では日産がルノーを上回る規模にまでなったことが背景にある。
ただ、完全な経営統合など、より大幅な改革に期待を寄せていた、一部投資家は合意に失望、この日の取引でルノー株の終値は5%超下落した。
合意によると、ルノーが日産の取締役会を支配しようとしたり、日産の承認を得ずに株主総会に決議提案を試みたりしないこととした。日産は今回初めて、書面で確約を得た。
2年以上保有する株主に2倍の議決権を与える「フロランジュ法」適用により、仏政府のルノー議決権は来春、28%まで高まる。
仏政府の影響を低下させるため、今回の合意では、ルノーの非戦略的な株主投票時、仏政府の議決権に17.9━20%の上限を設けた。ただ、仏政府の承認なしに、ルノーや日産が協定に違反したり、提携合意を修正したりすれば、上限は完全に撤廃される。
また、ルノーや仏政府が介入し合意に違反した場合に限り、日産は、保有するルノー株比率を現在の15%から25%以上に引き上げることができるとした。日本の会社法では、日産がルノー株を25%以上持てば、ルノーの日産に対する議決権をなくすことができる。
日産・ルノー連合のゴーン最高経営責任者(CEO)は記者会見で「今回の議論を経て、連携はさらに強固なものになったと確信している」と語った。
ですからこの協定によれば、フランス政府が直接日産に統合要求はできませんし、日産の承認無しに株主総会にはかる事も出来ません。統合するか否かは日産の取締役会の決議が必要で、企業内のガバナンスの問題といえます。
しかし日産が司法取引した事によってゴーン氏が逮捕された事が、フランス政府とルノーに協定を破る口実を与えたと思います。
また報道を見ていると、日本の世論は企業が誰のものかという観点が間違っているように思います。
企業は社員のものであり社会のものであるともいえますが、株主のものであるともいえます。
でなければ持ち株会社などありえません。
43.4%の株を保有するルノーが株主の権利を持つのも株主配当を受けるのも当然の事で、正当な株主配当まで日産を食い物にしているというような言い方で敵愾心を煽るのはどうかと思います。
株主配当といえば今や自動車メーカーは約70%が海外生産で、ホンダや日産は80%以上が海外生産です。そして海外子会社の利益は配当益として本社に還流します。
外国子会社配当益金不算入制度は、親会社が外国子会社から受け取る配当を益金不算入とするもの。
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対象となる外国子会社は、内国法人の持株割合が25%(租税条約により異なる割合が定められている場合は、その割合)以上で、保有期間が6月以上の外国法人
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外国子会社から受け取る配当の額の95%相当額を益金不算入(配当の額の5%相当額は、その配当に係る費用として益金に算入)
さらに詳しくは「外国子会社配当益金不算入制度(Foreign Dividend Exclusion)」をご参照ください。
ちなみにアメリカは本国と海外事業所の二重課税ですが、アメリカ以外の先進諸国は本国との二重課税をさ避ける税制です。