OECD(経済協力開発機構)が見る「日本の相対的貧困率」、「格差」、「所得再配分」 | 夢老い人の呟き

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願い望むは願望  夢は寝てみるもの 儚く叶わぬもの
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    夢と人の中に老いが入り夢老い人  儚く老いる独り言

母子家庭の貧困や子供の貧困が言われますが、「日本は貧困が多い」「いや少ない」、「格差が大きい」「いや小さい」と喧々諤々と議論されますが・・・・・・喧々諤々は間違いで侃々諤々だろうという人もいるかと思いますが、じつは喧々諤々(けんけんがくがく)喧々囂々(けんけんごうごう:やかましく騒がしいさま。)侃々諤々(かんかんがくがく:遠慮せず正しいと信じる意見を主張し合うこと。盛んに議論すること。) が混交して出来た語で、本来は議論は侃々諤々を使うべきでしょうが、今では「多くの人がいろいろな意見を出し、収拾がつかない程に騒がしいさま。」という意味で使われますので、この場合は最も適切かとにひひ

 

初っ端から脱線しましたが、議論が分かれるのは言葉の意味が正しく理解されていないのと客観的なデータに基づいて議論されていないからではないでしょうか?

そこで“ OECD(経済協力開発機構)”のレポート“「OECD 経済審査報告書」”と“「格差縮小に向けて なぜ格差縮小 は皆の利益となり得る か。 日本カントリーノート」”から見てみます。

 

 

 

相対的貧困率とは

 

貧困には 「相対的貧困」「絶対的貧困」の二種類があります。

 

「絶対的貧困率」は必要最低限の生活水準を維持するための食糧・生活必需品を購入できる所得・消費水準に達していない絶対貧困者が、その国や地域の全人口に占める割合。世界銀行では1日の所得が1.25米ドルを貧困ラインとしている。絶対的貧困の基準は国や機関、時代によって異なる。(出典:コトバンク デジタル大辞泉の解説

生きるため最低限必要な食料や生活必需品を購入するためのお金がない状況といえます。

 

一方「相対的貧困」とは、その国の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態を指します。

それに対して「相対的貧困率」はOECDでは、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出)が全人口の中央値の半分未満の世帯員を相対的貧困者としている。

相対的貧困率は、単純な購買力よりも国内の所得格差に注目する指標であるため、日本など比較的豊かな先進国でも高い割合が示される。 (出典:コトバンク デジタル大辞泉の解説

 

以下 「ひみつ基地」 より引用

  • 「相対的貧困」は、ときに「絶対的貧困」と同レベルのダメージを人に与えます。
  • 日本の貧困状態の子どもたちの方が、精神的な落ち込みが大きかった
  • 「周りのみんなにとっては当たり前の生活が自分だけ享受できない」という状態は、子どもたちに破壊的なダメージを与えます。そして、「なんで、僕だけ?」 を繰り返した子どもたちは、もうその言葉を言わなくなります。その代わりに、ある言葉を繰り返すようになります。それは次のような言葉です。「どうせ、僕なんて」

「子どもの貧困」とは、所得が低い家庭の子どもが低学力・低学歴となり、将来不安定な就業に陥ることで、次の世代にまで貧困状態が連鎖していく(=貧困の世代間連鎖)問題です。このような貧困状態にある子どもは今日本に約6人に1人の割合で存在しており、年々増え続けています。


 

計算式は下図のように等価可処分所得の中央値を求め、中央値の1/2を下回る人数(X)を求め、下式で計算します。

相対的貧困率=中央値の1/2を下回る人数(X) ÷ 全体の人数(n) × 100(%)

 

■平均値と中央値

 

ここで平均値ではなく中央値を使う理由ですが、平均値は調査世帯全体の所得の合計値を世帯数で割ったものですので、高額所得者がいれば平均値は高くなります。

それに対して中央値は所得を低い順(あるいは高い順)に並べた時の中央の値で、高額所得者の影響がありません。

 

例えば下は2015年度の世帯の所得分布と平均値と中央値ですが、所得平均値と中央値には118万8千円の差がありますが、61.4%の世帯が平均所得以下となっています。

どちらが庶民の感覚に近いかといえば、高額所得者の影響のない中央値ではないかと思います。

出典:厚生労働省 平成28年 国民生活基礎調査の概況

 

 

 

 

日本の相対的貧困率

 

OECD加盟国の相対的貧困率を見ると、日本は7番目に相対的貧困率が高い国となっています。

厚労省の「平成29年国民生活基礎調査の概況|厚生労働省」の14頁を見ますと世帯人員一人あたり平均所得金額は219万円ですが、可処分所得の中央値というともっと低くなります。

世帯人員一人あたり可処分所得のデータが見つかりませんでしたが、近似的に平均所得で見れば貧困線は110万円位、一ケ月10万円弱となります。

 
国別にみると低い方からアイスランド、デンマーク、チェコ共和国、フィンランド、ノルウェー、オランダ、ルクセンブルク、スロバキア、スイス、スウェーデン・・・・・と北欧はじめ民主社会主義的国家とルクセンブルクなどの金融立国が多いようです。

 

逆に「新自由主義の権化アメリカは?」と見れば、イスラエルに次ぐ2位です。

アメリカにお住いの方の話をうかがってみると、アメリカは「金持と貧困層だけが得をする国」と感じています。

超富裕層(特に0.1%の)が儲け、労働者層など中間層が没落し、没落した貧困層はセイフティネットで救う、金持ちの貧困大国、沈みゆく大国。

その怒りがトランプ大統領を、熱狂的なトランプ支持層を生んだのではないでしょうか。

ちなみに超富裕層の収入の殆どはキャピタルゲインです。それは日本の似てきており、所得1億円を境に所得税の実効税率は逆累進となります。

 

出典: 「OECD 経済審査報告書」 22ページ

 

 

相対的貧困率は高く、という事は格差も大きい日本ですが、1990年~2015年の間、生産性は上がっているのに逆に実質賃金は下がっており、しかも最低賃金は相対的に低く「企業は儲かれど賃金上らず」という事ががデータに表れています。(下図左OECD平均、右日本)

出典:「OECD 経済審査報告書」 10ページ

 

 

また賃金の企業間の格差も韓国に次ぐ大きさです。

下図は2013年の90パーセンタイルにある企業の労働所得・労働生産性と中位にある企業の比較ですが、横軸は労働生産性、縦軸は賃金のP50/P90の比率です。

労働生産性ではOECDの平均に近い値ですが、賃金では韓国に次ぐ格差があります。

出典:「OECD 経済審査報告書」 24ページ

 

 

 

日本の格差と所得の再配分のレベルは

 

■格差拡大が進むアメリカと日本

 

最初に断っていますが、これから紹介する「格差縮小に向けて なぜ格差縮小 は皆の利益となり得る か。 日本カントリーノート」は2015年版で2013年のデータです。

2013年と2015年を比べてみると、こちらはジニ係数なので直接比較はできませんが、日本、アメリカ、イスラエルが突出して上昇しているように思います。

 

 

以下「格差縮小に向けて なぜ格差縮小 は皆の利益となり得る か。 日本カントリーノート」より引用します。

 

■OECDが指摘する日本の問題点

 

日本における所得格差は、 OECD 平均より高く、 1980 年代中盤から拡大している。 これは、大半の OECD 加 盟国と同様の傾向である。 日本 では 2009 年には 、人口の上位 10 %の富裕層の平均所得は、下位 10 %のそれ の 10.7 倍になり、 1990 年代中盤の 8 倍、 1980 年中盤の 7 倍からの増加 となる。 2013 年の OECD 平均は 9.6 倍だった。

 

相対的 貧困 率 ( 所得 が国民の「 中央 値」の半分に満たない人の割合 )は、日本では人口の約 16 %である * (これは OECD 平均の 11 %を上回るもの)。 相対的 貧困率は、世代間では、高齢者が最も高く、 66 歳以上の 約 19 %に影響をもたらしている

 

総じて、 1985 年以降、日本 では、家計収入の平均はほとんど増加しておらず (毎年約 0.3 %増加)、さらに 下位 10 %の貧困層では家計収入が毎年約 0.5 %減少している。格差は 2006 - 2009 年の金融危機の間にも引き 続き拡大し、人口の上位 10 %富裕層 の所得は横ばい だったものの、可処分所得は合計で 5 %減少した。 

 

 

■なぜ日本にとって重要なのか

 

日本の所得再分配のレベルは、大半の OECD 諸国と比 べ低い 税と給付を合わせても 2009 - 2010 年の格差は 19 %しか減少しておらず、それに比べ同時期の OECD 平均は 26 %となっている。日本よりも低い再分配 (税・給付制度による) であった 国は、チリ、韓国、 アイスランド、スイスだけだった

 

しかし、日本政府は再分配を強化するために多くのこ とを実行した。 多くの他の国々と比べ日本は、過去何年かで税と給付をとおした格差削減は拡大した(図 2 参照)。 この再分配拡大には、例えば失業者 や子供の いる家庭に対する公的現金給付がより手厚くなったこ とが 関係している。

 

労働年齢人口の間で所得格差が拡大していることは、 彼らの中で 非正規労働者の 割合が 増加 していること に 関係している。非正規労働者の割合は、 1990 年以降倍 増しており、 2012 年には約 34 %にまで達した。

 

時間給で見ると、非典型 労働者 (自営業者、臨時フル タイム労働者、パートタイム労働者) は 典型労働者よりも低く支払われている。 有期契約労働者は 典型労働 者より 1時間につき 30 %給料が低く、パートだと 46 %低い(図 3 参照)。非 典型 労働者に OJT を提供 している企業は、わずか 28 %である。 非典型労働に頼 っている 家計の貧困率 は 20 % で OECD 平均 22 % に近く 、 典型労働の 4 倍 ( OECD 平均: 5 倍) となっている。

 

税・給付制度は、被扶養者である配偶者が所得税を払 わなくてよくなるため、女性の所得を増やす動機を削 ぐ。これが一つの原因で、 日本では 非典型労働者の64 %が家計の第二の稼ぎ手 であって、これは OECD の 中で最も高い割合であり、また、日本 では他の国より も多くの低賃金労働者がより高い世帯所得階層に含ま れる。

 

自営業及びパート労働者(週 20 時間 未満 の労働)に は、失業手当を受ける資格がない 非正規労働者の 3分の 2 しか雇用保険に加入しておらず、 職場ベースの 健康 ・ 社会保険 に加入しているのは 半数以下である。

 

より一般的に、 日本では 2010 年時点で 、税・給付制 度は、パートタイム労働からフルタイム労働への移行 を阻 んでいる 。追加収入の 3 分の 2 以上が、減らされ た給付(特に住宅給付) やより高い税金 にとられてし まうからだ。

 

■政策決定者に 求められる こととは?

 

格差に対応し、万人への機会均等を推進するためには、各国政府は包括的な政策パッケージを取り入れるべきである。 そのパッケージには以下の 4 つの主要分野が中核となるべきである:女性の労働市場参入を一層推進するこ と、雇用機 会を強化するとともに質の良い仕事を提供すること、質の良い教育やスキル開発 、仕事における 適応を強化すること、 より効果的な再分配のためにより良い税・給付制度を構築することである。

 

日本において、これらを実現するためには 以下のようなイニシアチブが必要となる。

  • 職場ベースの社会 保険 制度 によって 非正規労働者の 社会保障を拡大する。そのためには例えばコンプライアンス の向上や、 フルタイムに近い実質労働時間のパートタイムへの適用拡大 などがあげられる。
  • 非正規労働者が正規労働に移行しやすくするために研修機会を推進 したり、昇進ができるように日本版職業能力 評価制度を構築する。
  • 特に家計における第二の稼ぎ手に働く意欲を与えるために、 就業中の 給付や財政措置を強化する。
  • 利用しやすい 保育を増やし、父親に育児休暇取得を推進する等、仕事と家庭のバランスを改善できるような対策 を発展させることで、女性の労働市場参加を増やす。
  • 低所得者のために勤労所得税額控除の 導入 を検討 する。

 

 

いかがでしょうか?

 

日本の所得格差は大きく、それが消費の低迷を招いています。

政府も再配分を強化してはいますが、それでもまだ再配分のレベルは低く、格差は拡大しています。

 

私がたびたび税制の問題を取り上げる理由がご理解いただけますでしょうか?

 

消費増税が最も大きな影響を及ぼすのは相対的貧困層です。

そして政府案のおバカなポイント還元の恩恵など無いのも相対的貧困層です。

 

ならばこんな馬鹿な消費増税はすべきではありませんが、ただ反対しても駄目です。

国民ががただ反対するだけにならないで、格差是正をするためにはどうすべきか、税制や労働政策を真剣に考える必要があります。

 

そして、ここが日本人の一番駄目なところで「そのためにどうすべきか」を考えようとせず、「格差を拡大させた政府が悪い」、「消費増税が悪い」とアジるだけの人達に盲従することです。

 

そして自分が考えなかった結果は、自分たちの代表、政治家、政権を選ぶ結果となり、政策となります。