普段ニュースを見ていても何気なく見過ごしていますが、容疑者(被疑者)と犯罪者は違います。
裁判はおろか起訴もされていない段階で犯罪者扱いする、日本の報道は人権保護の観点から見ると問題があるかと思いますが、ゴーンさんついてもまだ犯罪者ではないという事は認識しておく必要性があるかと思います。
さて、そのゴーンさんですが会長職は取締役会で解任が決定されました。
しかし取締役を解任するには株主総会の決議が必要ですが、株主総会での可能性などを考えながら株主構成などを見てみると面白いかと思います。
ルノーと対立する様な事になった場合、対抗できるのか?
どうも今は勇ましい事を言っていても、最後は尻すぼみ になりそうな気がしますが・・・・・・。
■株式の概要
株式の概要を見ると、日産自動車の発行済み株式は4,220,715,112株です。
出典:https://www.nissan-global.com/JP/IR/STOCK/INFORMATION/
大株主をみますと、1,831,837,000株(43.4%)をルノーが保有しています。
株価を大雑把に1000円として計算してみると1兆8318億・・・・・スゴイ。株主配当は1000億円を超えます。
(1999年3月、日産が2兆円あまりの有利子債務を抱え、金融機関にも見放され倒産寸前で資本提携した時の条件はルノーが6430億円を出資し、日産自動車の株式36.8%、および日産ディーゼル工業の株式22.5%を取得するとともに、日産自動車の欧州における販売金融会社も取得だそうです。)
ルノー以外の大株主を見ますと、ズラ~と並ぶのは信託銀行です。
出典:https://www.nissan-global.com/JP/IR/STOCK/INFORMATION/
■所有者別状況
所有者別状況を見ると最も多いのは外国人株主の62%で、そのうち1,831,837,000株(43.4%)はルノーです。ルノーはあと7%で過半数を超えます。
外国人に次ぐのは信託銀行などの金融機関、個人その他、証券会社、国内法人、自己株式と続きます。
もしも取締役解任や選任で株主総会で争う事になると、旗色が悪いように思います。
出典:https://www.nissan-global.com/JP/IR/STOCK/INFORMATION/
ちなみに2018年度の配当金は一株当たり57円の予定。(https://www.nissan-global.com/JP/IR/STOCK/DIVIDEND/ご参照)
1,831,837,000株のルノーの配当金を計算してみると1044億1470万9千円となります。
ルノーにすれば日産車とプラットフォームの共通化などの本業のメリットの他に、年に1000億円以上の配当益が入ってくるのですからメリットは大きいと思います。
■日産に打つ手は無いのか?
日産とルノーは各々持ち株比率の上限を定めており、日産はルノー株の15%までしか取得できません。
2015年12月に日産自動車とルノーとフランス政府は、仏政府が日産の経営に介入しないことで仏政府と合意 していますが、この時に 「ルノーや仏政府が介入し合意に違反した場合に限り、日産は、保有するルノー株比率を現在の15%から25%以上に引き上げることができる」としました。
2015年12月12日 ロイター「日産・ルノー連合と仏政府対立解消へ、合意に投資家失望」ご参照。
そして日産がルノーの株式を25%に増やせば、会社法308条によりルノーの議決権がなくなります。
しかし今はフランス政府が日産の経営に介入したとはいえず、日産がルノー株を買い増すわけにはゆきません。
一方ルノーが日産株を7%買い増せば50%超となります。
すると現在は日産とルノーは提携関係ですが、日産はルノーの連結小会社となってしまいます。
どうも日産もルノーも自分の方から合意を破るのは得策ではないと思います。
それよりもゴーンさんが消えた後、かつて2兆円あまりの有利子債務を抱え倒産寸前となった原因といわれる、労使ズブズブ、 組合活動で活躍した者が出世し、当時、社内に3人の天皇 (日本興業銀行出身の川又克二社長、生え抜きの石原俊社長、自動車労連の塩路一郎会長) がいるといわれた日産の体質は大丈夫でしょうか?
「日産経営危機の“元凶”元労組リーダー死去「社内にスパイがいて悪口はタブー」ご参照
強力なリーダーがいなくなり、かつてのような労使関係に戻ったらまた業績が低迷しないかと心配になります。