日米の厄介者プルトニウム | 夢老い人の呟き

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日本では?

 

一昨日の「原爆」に書いたように日本はアメリカの核の傘の下、核兵器禁止条約には後ろ向きですが、「核兵器不拡散条約(NPT)」には加盟しています。

 

核兵器不拡散条約(NPT)」では核兵器への転用を防ぐためプルトニウムの製造は原則禁止ですが、日本は再処理して原発で再利用することを「日米原子力協定」で認められており、非核保有国で唯一使用済み核燃料の再処理を行い、現在原爆6000発に相当する47トンのプルトニウムを保有します。

日米原子力協定」は7月17日、自動延長しましたが、日米のどちらか一方が通告するだけで6カ月後に協定が失効します。

 

 

核兵器への転用リスクがあるプルトニウムを日本がためこむことは、中国などから「不要の疑念を呼ぶ」とかねて批判されてきました。また国際社会は核不拡散へ断固とした姿勢をみせており、米国は日本にプルトニウム削減を求めています。日本は米国の懸念に応え削減する方針ですが、具体的な目途はたっておりません。

 

また六ケ所村の再処理工場が稼働すると、新たに年8トンのプルトニウムが取り出される事になりますので、稼働は困難と見られます。

現状ではプルトニウムを削減する方法はMOX( ウラン・プルトニウム混合酸化物 )燃料としてプルサーマル発電で使用するしかありませんが、MOX燃料で使用しても原子炉1基あたり年間0.3~0.4トン、(全炉心MOX燃料装荷の大間原発では年間1.1トン)との事なので、新たに製造される分さえ到底消費しきれません。

 

また再処理コストが高いためMOX燃料は価格が高く、以前、ウランの9倍、高浜原発で1本9億円というニュースがありましたが、現在はさらに上がって10億円超です。

出典: 2017年12月17日 東京新聞「原発MOX燃料が高騰 99年最安値から5倍に

 

高速増殖炉もんじゅが頓挫した今、個人的な感想としては使用済み核燃料の再処理を止め、直接処分に変更せざるを得ないと思います。

 

 

それでは米国はどうかというと、プルトニウムの処分に非常に難航しています。

米国の現状をみれば、もし日本がプルトニウムを処分するとなったら如何にそれが困難かが想像できます。

 

 

アメリカは?

 

以下 ロイター特別リポート:米国悩ます核問題、行き場なき余剰プルトニウムより引用します。

 

全米各地にある 米エネルギー省の施設には、余剰プルトニウム54トンが保管されています。

テキサス州アマリロ近郊にあるパンテックス工場では 「ピット」と呼ばれるコア2万個超が保管されており、数千メガトン規模の核爆発を引き起こすのに十分なコアが保管されていますが、日々その数は増えています。

 

ちょっと横道にそれますが、ご参考までにピットとは下図のタンパー、プルトニウムコア、中性子発生装置からなるコアで、その下の図の内側のブルーの部分です。

 

Implosion bomb animated.gif              

出典:Nuclear weapon design

 

話を戻します。

 

細心の注意を要し、危険な、核弾頭の廃棄作業は緊急度を増しています。

米国とロシアが2010年に合意した核新戦略兵器削減条約(新START)が定める核弾頭数の上限1550発を超えてはならないからで、米ロはまた、両国間で締結した別の協定により、それぞれ34トンに上る兵器級の余剰プルトニウムを処分しなければなりません。

 

プルトニウムの半減期は2万4000年であるため永久に隔離 されなければなりませんが、米国は処分について永続的な計画を持ちません。

 

安全と考えられている地下600メートルより深くプルトニウムを埋めるスペースを新たに確保するために必要な措置さえいまだに講じていません。
 

米国はロシアとの協定の、ルトニウム34トンウランと混ぜ合わせて混合酸化物に転換し、「MOX(混合酸化物)燃料」として原子力発電所の燃料に転換する計画でしたが、計画には深刻な遅れが生じており、費用も当初の見積もりを越えています。

 

代替案として「希釈して処分」する方法があります。

これはプルトニウムを不活性物質と混ぜ、キャスクと呼ばれる専用の輸送容器に入れ保管するというものですが、このキャスクの寿命はわずか50年とされ、地下深く永久に埋められる必要があります。

 

 

<MOXを巡る混乱>

トランプ大統領は、大幅な費用超過と遅れを理由に、プルトニウムのMOX転換計画を廃止したいとするエネルギー省を支持しています。同省は、オバマ政権時代から、同じ理由でMOX計画の廃止を支持していたが、議会はそれを却下していました。

しかし今年2月に承認された連邦予算は、「希釈して処分」する方がMOX転換より費用が半分以下ですむことが調査で証明された場合、MOX計画を廃止すると明記しています。

 

米エネルギー省の傘下で、核施設や核物質を管理する国家核安全保障局(NNSA)は、「希釈して処分」方式への移行を支持しています。下院小委員会で最近証言したリサ・ゴードン・ハガティ新局長は、この方式について、MOX転換向け工場を完成させるより「数十億(ドル)も安い」と語っています。

 

プルトニウムはさまざまな用途に使える核兵器原料である。テロリストが核爆弾を1つ製造するには、わずか11キロあるいはそれ以下のプルトニウムで事足りますが、米政府はいまだ、プルトニウムの永久処分に向けた解決策を見いだせずにいます。

 

 

<放射能による平和の配当>

旧ソ連崩壊後まもなくして結ばれた条約などにより、米ロの核兵器備蓄は劇的に減少しましたが、同時に、余剰プルトニウムの処分という大きな問題が両国で理解され始めました

 

科学者たちは、悪人が移送をためらうほど危険なプルトニウムを製造したり、地下深く埋めたりといったほぼあらゆる提案を行ったが、代わりに米国は、2000年に結んだ協定の下、プルトニウム34トンを兵器に使用不可能なMOXに転換することに合意しました。

 

しかし米国では、それまでMOX工場が建設されたことがなく、民間発電所の原子炉も燃料としてMOXを使用したことはありませんでした

 

MOX工場の建設が開始されたのは2007年。

2016年11月までの稼動開始を目指していましたが、工場完成は2049年以降になると、エネルギー省は試算しています。

 

同省は2007年、建設費の総額を48億ドル(約5200億円)と推定していたが、現在の見積もりでは170億ドル(約1.8兆円)以上に膨れ上がっています

 

 

<最善策は計画中止>

結局エネルギー省の委員会は2016年、米国にはMOX市場が存在しないと報告。
MOX燃料棒を使用するには、民間発電所は原子炉を変更しなくてはならず、原子力規制委員会(NRC)から再び許可を得るには時間を要する。エネルギー省が望み得る最善策は、計画を中止することだと、同報告書は指摘している
 

 

このアメリカの現状を見ると、日本の47トンのプルトニウムの処分が如何に困難か想像つきますが、核燃料サイクルという夢の代償を如何にして払うか、早く方針を立てて欲しいと思います。

負の遺産を先送りして次世代に残すべきではありません。