先日の「副操縦士が半身吸い出される。四川航空エアバスA319、飛行中操縦室の窓が吹き飛ぶ。」の続報ですが、予想外の事実が浮かんできました。
Flight Global「Failed windshield on Sichuan A319 was an original part」によると、事故機の副操縦席のWindshield(窓)は整備作業の行われていないオリジナルパーツだという事です。
当局の声明では予備的な情報として、右ウインドシールドは不具合の記録や交換や整備は行われていないという事です。
整備ミス以外でウインドシールドが跳んだケースは私は知りませんので意外でした。
なお突然クラックが入ったと報道されていますが、下の写真のようなクラック(Shutter)は表面の薄いガラス層だけのひび割れで、窓の強度には影響ありません。
次の文章では突然窓にクラックが入り外れたとなっていますが、外れたのはクラックが原因ではないと思います。
事故機(登録番号B-6419)は2011年に製造され19942飛行時間飛んでいますが、エアバスの中国天津組立て工場で最終組み立てが行われました。
The aircraft, MSN4660 and registered B-6419, was built in 2011 and delivered to Sichuan Airlines July that year. It accumulated 19,942 flight hours to date, says Airbus.
FlightGlobal understands that the aircraft was assembled at the Tianjin(天津)plant in China.
「Failed windshield on Sichuan A319 was an original part」より引用
エアバス(天津)総装有限公司はエアバスが51%を出資し、天津保税区、中国航空工業第一集団公司、中国航空工業第二集団公司など中国側が49%を出資した企業です。
同工場は2008年9月に正式に生産を始めた、欧州外で初めてのエアバス工場です。
2009年5月18日、中国で組み立てられた初のエアバスA320旅客機がテスト飛行を実施し、2012年9月には100機目を生産、2017年10月には最新鋭のエアバスA320neoが納入されています。
エアバスだけでなく、ボーイングも中国で生産を開始します。
以下「ボーイングが建設中の中国・舟山工場が完成、2018年から737MAXの引渡し開始」
ボーイングは、新型の737MAXを含め全ての737をレントン(Renton)工場で生産している。完成すると飛行時間で5分ほどのボーイング・フィールドにフェリーし、“完成試験 & 引渡しセンター (Completion & Delivery Center)”で塗装、最終検査を行って顧客に引き渡している。
2018年末になるとボーイングが上海の南に建設中の舟山 (Zhoushan)工場が操業を開始する。ここで作られた緑色のジングロ(zinc chromate)塗装をしたままの新品の737MAXは、レントン製の機体と同じように、ここから1万kmも離れたシアトルに飛び、“引渡しセンター”で最終検査を受けるのか?
そうはならない。
ボーイングが中国の航空機メーカーCOMACと共同で設立する舟山工場は、“完成試験 & 引渡しセンター”として操業を開始する。そして顧客となる中国国内のエアライン向け737MAX型機の塗装、客室内装工事などを行うことからスタートする。
ボーイングによると、舟山工場では中国国内市場向けの737MAXを作る予定で、将来は737生産機数全体の3分の1にもなると予想している。この工場は狭胴型機生産工場としてはボーイング史上最大の規模となる筈で、完成機を駐機させるランプエリアもシアトル近郊の工場よりずっと広くなる。
737MAXを購入する中国エアラインにとっても、完成機を近くで受け取れるし、受領試験飛行も国内で行えるので正に“ウイン・ウイン”の関係となる、とボーイングは言っている。
(注)COMACは、「Commercial Aircraft Corporation of China Ltd.」の略称で、中國商用航空機企業として2008年5月に上海に設立された。資本金は3,000億円)。150席クラス以上の旅客機を作るのが目的とされる。「AVIC」が主導する国有企業数社と上海市の協力で作られた。
COMAC設立を主導した「AVIC (China Aviation Industry Corporation)」(中国航空機工業)は、1999年7月の創業で、Xian H-6、Xian JH-7爆撃機など大型機及び各種戦闘機の生産を行っている。民間機として手掛けたのが100席級のARJ21型機で2015年から国内で就航、続いてやや大型の160席+級のC919の開発に着手、こちらは2017年5月に初飛行している。「AVIC」は、多くの子会社を持ち、瀋陽(Chengdu)航空機工業、貴州(Guizhou)航空機工業、上海(Shanghai)航空機工業、西安(Xian)航空機工業、などを配下にしている。
新しい舟山工場は、シアトルの“引渡しセンター”から独立した工場となり、完成した737MAXはここで最終検査を受けて中国国内の顧客エアラインに引き渡される。中国での旅客機製造は、エアバスは2009年に天津(Tianjin)にA320の製造工場を開設し、現在A330の生産を追加すべく拡張中。またブラジルのエンブラエル(Embraer)は、2016年に旧満州のハルビン(Harbin)にERJ 145リージョナル機の製造工場を開設済みで、現在大型のE195-E2の現地生産を検討している。
エアバス、ボーイング、エンブラエルの最新鋭機を製造するとなれば技術の供与も行われ、「Commercial Aircraft Corporation of China Ltd.」は欧米のトップメーカーと対等に近い技術力を持つ事になります。
「中国の旅客機 C919」に書いたように「C919」はすでに750機以上を受注し、 欧州航空安全機関(EASA) は 中国民用航空局(CAAC)がEASAの審査でEASAの一部を代用認証出来ることに合意しており、EASAはこの証明審査の認証を検証するとしているとのことです。(という事は海外に輸出する可能性があるという事を意味します)
本当に、なぜ日本にはこんなに中国の情報が入って来ないのか不思議です。
これでは皆が気づいた時には日本は中国に飲み込まれてしまいます。
多分もうすぐ日本がボーイング737を購入すると中国舟山工場から飛んでくる事になると思います。