陰謀論 森永卓郎氏がラジオ番組で日航123便を「事件」語る | 夢老い人の呟き

夢老い人の呟き

願い望むは願望  夢は寝てみるもの 儚く叶わぬもの
  人に夢と書き儚  夢に人と書き夢人 
    夢と人の中に老いが入り夢老い人  儚く老いる独り言

JIJI・COMに“日航機123便墜落事故原因に迫る新事実!この事故は「事件」だったのか!?”という記事があり、ビックリして読んだら新刊本の宣伝でした。

 

しかし、なんとこれを森永卓郎がラジオ番組でとり上げ、書かれていることが真実だろうと話しています。

本に書かれている細部まではわかりませんが、墜落原因については相変わらずの自衛隊機のミサイルか標的機がぶつかったとしているようですが、それはありえません!!

私はジャンボ機の機体構造は熟知していますが、ミサイルであのような損傷は不可能です。

 

ラジオ番組はこちら

素人がラジオで喋るなら専門家、といっても名前だけの専門家でなく、ジャンボ機を知り尽くした航空会社の技術者にでも相談すれば良いのにと思いますが、どうせ馬鹿にされておしまいでしょう。

空白の16時間については “日本航空123便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての解説” の19,20ページご参照


 

標的機、ミサイル衝突説について
  • ジャンボ機の機体構造について熟知している私から見れば馬鹿らしい外部からの損傷説ですが、ミリオタ目線で見ると陰謀論の条件に当てはまるのはファイア・ビーチャカ”ですが、ファイア・ビーを飛ばすには“訓練支援艦「あずま」”が必要ですが、あずまは当日呉港にいました。
  • チャカは軽すぎるなどで否定されました。

  • あと地対ミサイル“SSM-1(88式地対艦誘導弾)”も疑いをかけられましたが、配備されたのは3年もあとの1988年、エンジンも低高度用で24000フィートは無理といわれています。対艦ミサイルは敵艦に捕捉されないよう、迎撃されないように海面すれすれを飛行します

 

 

しかし、いずれにしても機体の損傷は外部からの単独の物体の衝突では説明がつきません

垂直尾翼の上部と方向舵(アッパーラダー・ロワーラダー共に)を脱落させ、昇降舵を損傷させずに昇降舵の内側にあるAPU(補助動力装置)APUの防火壁を脱落させ、同時に水平尾翼センターセクションの前方にある圧力隔壁を破壊するのは外部からの衝突では説明するのは無理です。

 

 

 

また陰謀論ではありませんが、日乗連も圧力隔壁が原因である事を否定しており、それを根拠とする陰謀論者も少なくありませんので、日乗連の見解に対する私の見解を述べます。
 

日乗連の見解について

 

参考資料

「 日 本 航 空123 便 の 御 巣 鷹 山 墜 落 事 故 に 係 る 事 故 調 査 報 告 書 に つ い て の 解 説 」 に 対 す る 日 乗 連 の 考 え 方”より

日本航空 123 便の御巣鷹山墜落事故に係る航空事故調査報告書についての 解説

 

 

パイロットは操縦の専門家ではありますが、残念ながら機体構造やシステムなど技術的な知識にについては専門家とはいえません。

日乗連の主張に対する私の見解を述べさせていただきます。

 

 

捜索等については省かせていただきますが、日乗連の文書に書かれている要点は以下の3つに要約できます。

 

1.急減圧はおかしい。
A.最初の警報は客室高度警報ではない

  • 18時24分35秒、高度24000フィート(約7200m)を機速300ノットで上昇中、ドーンと鳴った異常発生の2秒後に1秒間だけなった警報音は、報告書では客室高度が1万フィート(約3000m)に減圧された客室高度警報だが、同じホーンサウンドの離陸警報(地上においていずれかのフラップまたは前縁フラップが離陸位置にないときに推力レバーを70%以上進めるとパイロットに警告する)ではないか。

B.急減圧時の人体への影響、体感に関する報告書の内容はおかしい。
C.急減圧したのであれば機内に強風が吹くはず
D.急減圧で機内に白い霧の様なものが立ち込めたのはおかしい


2.噴き出した空気で垂直尾翼が壊れたのはおかしい。

  • APU(補助動力装置)の防火壁は3~4PSI(0.2~0.27気圧)で壊れ、これによって開口面積が大きくなったのに、その後で4.75PSIで壊れる垂直尾翼が壊れたのはおかしい。

3.圧力隔壁よりも垂直尾翼またはAPUの脱落の方が先ではないか?

  • 別の原因で垂直尾翼またはAPU取り付け部分が脱落し、その影響で後部圧力隔壁に亀裂が入った可能性の方が高いのではないか。
  • 圧力隔壁の本格的な破壊は、墜落時の衝撃によるものであったことも考えられる。

 

 

上記に対する私の見解.

 

事故原因は圧力隔壁の破断箇所から客室内の与圧された空気が、その後部の非与圧域である水平尾翼取り付け部であるスタビライザーコンパートに吹き込み、そのさらに後方にある補助動力装置のコンパートメントを吹き飛ばすとともに、垂直尾翼下部のアクセスホール(点検孔)から垂直尾翼内に吹き込み垂直尾翼後部を方向舵ごと吹き飛ばしました

 

以下はあくまでも個人的な見解ですが、生存された方の証言などを読む際の参考になれば幸いです。

 

1A(警報音は客室高度警報ではない)について

  • ドーンという音(18時24分35秒)の2秒後1秒間鳴った警報が客室高度1万フィートで働く客室高度警報であるとすると、2秒間で機内高度が1万フィート(3000m)以上に急減圧されたことになりますが、これは論理的におかしいとは思えません。
  • 日乗連の文書では急減圧を否定するために離陸警報ではないかとしており、そのために離陸警報の原因となる、機体が地上にある事を判定するチルト・シグナルがおかしいのではないかという事が2ページの後段から3ページの上段に書かれていますが、では、チルト・シグナルに異常があったとしたら、それがどのように以後の状況に関連するのでしょうか?急減圧は無かったと否定する以外に重要な意味が有るとは思えません。
  • なお主脚には、例え飛行中に油圧が失われてもチルトシグナルが誤作動しないように、車輪がついているボギーをチルト位置にロックする、チルトロックが装備されています。
  • しかし、そのドーン音の9秒後の18時24分44秒に(作動に6~7秒のタイムディレイがありますのでセンサーが作動したのはドーン音の2~3秒後24分37~38秒)に客室高度14000フィートで作動する自動アナウンスが流れ、酸素マスク自動的にドロップしています。
  • この14000フィートのセンサー10000フィートの警報のセンサーとは別のアネロイドスイッチを使用していますので、急減圧があった事は間違いないと思います。
  • もし急減圧が無かったとすると、14000フィートのオートアナウンスと酸素マスクが全く説明できません。

1C(急減圧したのであれば機内に強風が吹くはず)について

  • これは機内を与圧している空調の空気は、客室内を通り客室の最後部から抜けてゆくと誤解しているのではないでしょうか?
  • 実際の機内は客室最後部はトイレットと壁になっており、ここには空調空気の出口はありません

ではどのように機内を流れるかというと空調システムは下図のようになっています。

  • 空気は①から②のチャンバーに入り③のディストリビューションダクトに送られ、広範囲の天井裏に出ます
  • そして窓際の上部から客室内に吹きだし、足元から床下に抜けてゆき、貨物室内や貨物室のサイドトンネルを通って、貨物室後方のディスチャージコンパートメントに抜け、そこから機外に出ます
  • しかし123便の場合はこれだけでは追い付かず、客室天井のシーリングパネルを壊し開け天井裏から圧力隔壁前方に抜け、また客室床近くのブローアウトパネルを開けて貨物室に抜けたと思われます。

※下図は機種が違いますが概要は同じです。

 

注)上の図の胴体断面図にはシーリングパネルがありませんが、クラシック・ジャンボ機の機内は下の写真のようになっており、シーリングパネルの裏には広いスペースがあります。

  • 通常時は与圧の空気はまず天井裏のディストリビューションダウトに入り、サイドウォールの上部(上の写真の客席の上の白い部分との境目)から客室内に吹きだされます。
  • 客室内を空調した空気はサイドウォールの下部から床下に抜け貨物室の横や貨物室内を通りぬけて非与圧域に流れてゆきます。
  • 急減圧した場合には客室内の空気は上述の空気の入り口と出口から天井内床下に流れ天井内と貨物室横・貨物室内を通って客室の後ろにあるディスチャージコンパートに流れます
  • これでフローが足りなければ客室の天井を壊しそこから天井内に吹き込んだり、客室の床近くにあるベントパネル(昔、飛行中に貨物室のドアが開き、貨物室内の気圧が抜けたために客室内との気圧差大きくなり床が抜け、その下にあるコントロールケーブルなどを破損し、墜落した事故があります。この事故を受け、客室と貨物室の気圧差が過大になると客室内の空気を床下に逃がすパネルが設けられました。)が開き、空気を床下に逃がす事になります。
  • 従って、客室外を流れてゆく空気流があるため.、客室内を強風が吹かなくとも不思議はありませんし、これは急減圧論の反論に引用される “落合由美さんの証言 ”とも整合すると思います。
  • ※最後尾の席に座っていた落合由美さんの証言の中にも(後ろの)トイレのドアの上のパネルが無くなり天井裏が見えたとか、自分の位置からは見えなかったが客室乗務員席の下のベントパネルが開いたと書かれています。

 

 

■1D(急減圧で機内に白い霧の様なものが立ち込めたのはおかしい)について

(1ページ後段から2ページにかけて)

証言にある、機内に(減圧によるものとされる)霧のような白いものが立ち込めた原因を急減圧によるものである事を否定していますが、その根拠はなんでしょうか?

一般的に考えれば、急減圧により飽和蒸気量に達し霧が発生するという事で説明がつきます。

それを否定する理由と、他の原因とはなんでしょうか?

この文書の特徴ですが、否定するだけで終わり、それに代わる可能性は全く説明していません。

 

 

2(噴き出した空気で垂直尾翼が壊れたのはおかしい)について

  • 垂直尾翼はフロントスパー、ミッドスパー、リヤスパーと外板でトルクボックスが形成されていますが、リヤスパーには方向舵のヒンジやアクチュエータが取り付けられており、飛行中はヨーコントロールやヨーダンピングはじめ、方向舵に空気力が加わり、常にストレスがかかった状態です。
  • トルクボックス内に吹き込んだ空気の力はこれに加えて作用します。
  • 飛行機が地上で静止している状態と飛行中では、リヤスパーにかかる荷重は違います。
  • 静的な条件での耐圧性では垂直尾翼よりも弱い、水平尾翼のスライディングシールやAPUのコンパートメントはどうかというと、これらには飛行中でも大きな力は加わっていませんから、圧力隔壁から噴き出した空気圧以外の力は殆ど作用しません。
  • 従って単純に静的状態での耐圧力の比較は出来ません。
  • 3~4PSI(0.2~027気圧)でAPU(補助動力装置)防火壁が壊れ大きな開口部が出来ているのに、しかも4PSIで壊れる水平尾翼のスライディングシールが壊れていないのに4.7PSIで壊れる垂直尾翼が壊れるのはおかしい―――としていますが、これについては http://www.mlit.go.jp/jtsb/aircraft/download/62-2-JA8119-03.pdf の68ページの3.1.2に、APU防火壁については70ページの3.1.3に書かれていますが、これらは静的な計算で、実際はもっと複雑であろうという事が書かれていますが、ご紹介すると長くなりますの省略しますが、垂直尾翼のトルクボックスの構造が分かっていないのと、動的荷重を全く考慮していません。

 

条件が複雑でバリアブルな想定の解析計算の数字を捉えて問題にしても仕方ないと思いますが、さらに垂直尾翼には次のような事も原因の可能性のひとつに挙げられたくらいですから、垂直尾翼の構造部材にはストレスが掛かっています

  • フラッタ( 高速飛行中に翼面または舵面の圧力中心が後方に移動し、翼や舵面の構造に曲げあるいは捩り、両者の合成を生じて発生する高い周波数の振動現象で,激しい場合は構造の破壊に至ることもある。)
  • ダイアバージェンス(迎え角が増すと空気力でねじりモーメントが増しさらに迎い角が増す)

それを特定するのは無理ですが、これらの応力は方向舵のヒンジとアクチュエータにかかり、それらが取り付けられている垂直尾翼のリアスパーにかかります。

内圧はそれにプラスして作用しますので、垂直尾翼破壊はおかしくはありません。

 

 

3.(圧力隔壁よりも垂直尾翼またはAPUの脱落の方が先ではないか?)について

  • 「別の原因で垂直尾翼またはAPU取り付け部分が脱落し、その影響で後部圧力隔壁に亀裂が入った可能性の方が高いのではないか。圧力隔壁の本格的な破壊は、墜落時の衝撃によるものであったことも考えられる。」と書かれていますが、それならAPU脱落の原因は何か、APUと圧力隔壁の間には水平尾翼のセンターセクションがあり、APU脱落と圧力隔壁の亀裂の因果関係をどのように説明するのか?
  • 圧力隔壁の亀裂・破壊の他に急減圧、垂直尾翼破損、APU防火壁・APU脱落と言った事が一緒に起きたことを説明できる原因が他にありますでしょうか?

 

さらに破壊された圧力隔壁は日本航空に展示されていますが、破断箇所は物がぶつかった壊れ方ではなく、金属疲労・引っ張り応力によるものですし、スプライス・プレートの誤魔化し修理をしたことも明確に分かります。

これを他の原因で説明するのは困難だと思います。

 

 

 

またhttp://www.shippai.org/fkd/hf/HB0071008.pdfには古いリベットホールをそのまま使った事も、原因として書かれています。

以下引用

日航ジャンボ機の後部圧力隔壁の急速不安定破壊は、複数のリベット孔縁から発生したマルチプルサイトき裂の進展と合体の結果である。後部圧力隔壁 L18 接続部におけるき裂の進展と合体の状況を図 6 に示す。

リベット継手の修理ミスだけでは、マルチプルサイトき裂の発生に至ることはない。

修理の際に、古い隔壁板のリベット孔(直径 3.9mm)をそのまま利用し、リベット孔のいくつかには、加工きずとそれを起点とする疲労き裂が、すでに存在していたと考えられる(修理以前のフライト数 6,536 回)。

修理後の 1 回のフライトごとに生ずる圧力変動によって、上記のリベット孔のいくつかから疲労き裂が発生、進展し、互いに合体するか隣接するリベット孔(間隔 18mm)を縫い、事故直前には修理以後のフライト数 12,300 回で疲労き裂が相当数のリベット孔を縫った状態にあった(修理ミス部分のリベット孔 50 個のうち 30 個以上に疲労き裂が発生、疲労き裂長さの合計 270mm 以上)。

疲労き裂であることは、破面の電子顕微鏡写真によって確認された。そして、事故当日の離陸直後、この疲労き裂を起点として、圧力の増大に伴い急速不安定破壊が生じ、隔壁は一気に破裂に至った

 

 

疑問を探すのは簡単ですが、それを否定するためにはそれに代わる合理的な原因を探すべきです。

123便陰謀論者は圧力隔壁の破損、急減圧を否定しますが、それに代わる合理的に説明できる原因を提示しません。一方、原因としてあげられる標的機やミサイルの衝突説については、否定するのは簡単に説明できます。