TPPとISD条項と国民健康保険 | 夢老い人の呟き

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TPPの一番の問題点はISD条項かも知れないと思うが、なぜか報道ではISD条項について触れられていない。

バイオ医薬品の開発データの保護期間を巡り、アメリカとオーストラリアが鋭く対立していたが、医療については以前からTPPで健康保険制度が壊されるという意見があった。

<<なぜ医師会は断固TPP反対の立場をとるのか>>

医師会の具体的な主張は次のようなもの。

ISD 条項により日本の公的医療保険制度が参入障壁であるとして外国から提訴されることに懸念を示して参りました。 世界に誇る国民皆保険を守るために、

  • 第 1 に公的な医療給付範囲を将来にわたって維持すること
  • 第 2 に混合診療を全面解禁しないこと
  • 第 3 に営利企業(株式会社)を医療機関経営に参入させないこと

これだけ読むと杞憂のような感じがし、健康保険制度が守れない事はないように思えるが、もう少し考えてみるとやはり危惧しなければいけないと思う。


■米国通商交渉部は保険、医薬品、医療機器について規制緩和して米国企業が参入できるよう求めている。
それらについて、健康保険制度の適用を求めてくるだろう。
ところが日本は中医協(中央社会保険医療協議会)が薬の価格を設定しており、新薬が保険に設定されても安く抑えられ、しかも毎年価格が下がる。だから薬が安く提供される。
これでは自由な競争が妨げられると、米国の製薬会社がISD条項に則り日本政府を訴えたらどうなるか?
そして世銀傘下の
国際投資紛争センターで司法判断が下され敗れれば、国の制度の方を変えねばならず、今まで低く抑えていた薬価の歯止めは無くなる。

国民健康保険は危機的状況が続いている。(企業などの組合健保も赤字)
国民健康保険は、元々自営業者や農家の人たちのための医療保険でした。ところが、産業構造の変化や雇用の流動化で、今は加入者の8割が非正規で働く人や無職の人たち。毎年3500億円の赤字で税金で補填している。
<<時論公論 「国民健康保険を守るには」>>

薬価が上がれば、国民皆保険ではカバーできなくなる。
健康保険が薬をカバーできなくなった結果の混合診療となると、医師会の言うとおり健康保険制度が壊れる可能性はあると思う。




■ISD条項とは
外国企業に対し市場参入規制をしたり、国内企業を保護しているとみなした国や自治体に対し、外国投資家が国際投資仲裁機関へ訴える権利を事前に包括的に付与する条項で、次の様な特徴を持つ。

①国家対国家、という国際法の概念から離れて、投資家(企業)に国家を提訴する権利を与えている。
②国内で起こった紛争であるにもかかわらず、提訴した投資家が紛争解決を「国際投資紛争解決センター」などの国際仲裁機関を選択した場合、当該国際機関によって司法判断が下される。
③国際機関に訴えられた政府等には、当該裁判を拒む権利が認められていない
④国際投資紛争センターが世界銀行参加の組織であり、公正中立性が保証されない。
⑤ISDの適用範囲が極めて広汎であり、あらゆる分野が「非関税障壁」として投資家から訴えられるリスクを抱える。

写真

つまり、ISD条項は、第一次裁判権を日本の司法ではなく外国投資家が選択する国際投資仲裁機関に付与することを 認めるため、日本国内で生じた紛争であるにもかかわらず、日本国内での裁判を行う司法権限が奪われることになる。

また仲裁裁判所は世銀傘下のため、実質米国傘下のような感じがしないでもない。



逆に日本の投資家が訴える事も出来るから一見平等のようにも見えるが、訴訟大国米国の企業が、日本政府を次々と訴えるのではという恐れがある。
また「訴訟乱発によって日本独自の厳しい環境規制や食品安全規制が脅かされる」との見方もある。

米国と北米自由貿易協定(NAFTA)を結ぶカナダ、メキシコの例では、これまでにISDを使って四十六件の提訴があったが三十件が米国企業が原告。
中には米国企業がカナダとメキシコから多額の賠償金を勝ち取った例がいくつかあった。
逆に米国政府が負けた訴訟は無い



■日本がこうなっては困る米国の医療事情

アメリカ人の自己破産の6割は医療費が原因。
外務省・在外公館医務官情報<<アメリカ合衆国(ニューヨーク)>>

米国の医療費は非常に高額です。その中でも,ニューヨーク市マンハッタン区の医療費は同区外の2倍から3倍ともいわれており,一般の初診料は150 ドルから300ドル,専門医を受診すると200ドルから500ドル,入院した場合は室料だけで1日数千ドルの請求を受けます。例えば,急性虫垂炎で入院し 手術後腹膜炎を併発したケース(8日入院)は7万ドル,上腕骨骨折で入院手術(1日入院)は1万5千ドル,貧血による入院(2日入院,保存療法施行)で2 万ドル,自然気胸のドレナージ処置(6日入院,手術無し)で8万ドルの請求が実際にされています。治療費は,診察料,施設利用料,血液検査代,画像検査 代,薬品代などとそれぞれ別個に請求されるので注意する必要があります。

 高額な医療費に対しては,渡航後に当地の医療保険に加入するか,渡航前に十分な補償額の海外旅行障害保険(100%カバー)に加入して備えておく 必要があります。100%カバーの保険に加入していれば,キャッシュレスで受診することが可能なこともあり,また保険会社が医療費を病院側と交渉してディ スカウントする可能性もあります。病気や怪我など1回の入院で数百万円から1千万円になることを覚悟してください。病状がそれ程緊急性を要しない等,事情 が許せば航空運賃を負担したとしても,本邦に帰国して診療を受けた方が良いケースもあります。また,実際に当地で治療を受ける前には,加入の海外旅行保険 会社に事故速報の連絡を入れて,医療機関名のみならず,当地での治療の要否についてもアドバイスを求めてから受診すると良いでしょう。
以下省略。