米電力会社 三菱重工に9300億円損害賠償請求 | 夢老い人の呟き

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 三菱重工業は28日、米カリフォルニア州のサンオノフレ原発で起きた放射性物質漏えい事故をめぐり、電力事業者の米サザン・カリフォルニア・エジソン社 (SCE)など4社が、事故原因となった蒸気発生器を製造した三菱重工に75億7000万ドル(約9300億円)の損害賠償を求める見通しになったと発表 した。


これは以前<<原発輸出リスク・・・三菱重工損害賠償4千億円係争中>>でお知らせしたが、
SCE側は、国際商業会議所の国際仲裁裁判所に2013年10月、仲裁を申し立てた際、請求額を40億ドル(約4900億円)以上としていた。
しかし今回、SCEなどが7月27日付(米国時間)で同会議所に提出した証拠書類で、請求額を2倍近くまで引き上げたことが判明した。
 SCEなどの請求内容には、事故を起こした原発が廃炉となるまでの費用や、三菱重工が納めた機器の交換後、操業を続ける予定だった約20年分の逸失利益などが含まれるとみられる。


事故の概要
2012年1月31日、サン・オノフレ原発3号機原子炉格納容器(the containment shell)内で一次冷却水が漏出した。
伝熱管が破れて
射能を含んだ蒸気が漏出していており、運転を停止した。

調査の結果、2号機・3号機とも
3000本以上の蒸気発生器伝熱管(いわゆる”細管”;下図参照)約1万5000個所の早期摩耗(premature wear)が発見された。蒸気発生器はそれぞれ2010年、2011年に入れ替えを完了していたものである。」という事で、かなり厳しい内容である。

米国はシェールガスで火力発電のコストが下がり、古い原発はコスト競争力が無くなり廃炉が進む中、SCEにとっては都合の良い事故だったような気もするが・・・・・。





しかしこの事故は、原発の安全性を考えると深刻な問題がある。

加圧水型原子炉では、原子炉圧力容器内で発生した蒸気(上左図のピンクの部分。放射能そのものと言っていいほどの高濃度放射性蒸気:一次冷却系を使って、発電タービンを回す蒸気上左図の水色の部分:二次冷却系を作る。
一次冷却系蒸気で、二次冷却系蒸気を作る装置が「蒸気発生器」。
熱交換させるため、蒸気発生器内部は伝熱管と呼ばれる細管を使用する。
※一次冷却系は300℃以上、150気圧以上、二次冷却系は100℃以上、50気圧以上
このため熱伝導管(蒸気発生器細管)の中は温度300℃以上の蒸気が激しい勢いで流れているが、100気圧の圧力差がかかる。

 ここで大きな問題が発生する。熱交換率を上げ、効率よく熱交換するためには、この管はできるだけ薄い方が望ましい。薄ければ薄いほど熱が伝わりやすい。一方で安全を考えれば管は厚い方が望ましい。厚くて頑丈であればあるほど、減肉しても丈夫に放射能そのものの一次冷却蒸気を密封できる。

「コ スト」をとるか「安全」をとるかの究極的選択となるが、蒸気発生器伝熱管異常磨耗は関西電力美浜発電所
3号機の二次冷却系の復水系配管破断事故とメカニズムが似ている。


関西電力美浜発電所蒸気噴出事故
2004年8月9日午後3時半頃、通常運転中の3号機二次冷却系の復水系配管が第4低圧給水加熱器と脱気器との途中で突然破裂し、高温高圧の二次系冷却水が大量に漏れ出して高温の蒸気となって周囲に広がった。
事故当時、現場のタービン建屋内では、定期点検の準備のため、211人が作業をしており、問題の配管室内には11名の作業員がいた。
事故直後に死亡した4名の死因は全身やけどおよび、ショックによる心肺停止で、ほぼ即死に近い状態だったとされる。また、事故から17日目の8月25日には、全身やけどを負っていた作業員1名が死亡した。
最終的には死亡5名・重軽傷6名となった。




オリフィス下流側に生じた渦によるキャビテーションが徐々に配管内面を削った。28年間、削られ続けたことで管の厚みは10mmから最薄部は1.4mmにまで減肉し、遂に耐えられなくなったと考えられている。


原発は蒸気配管が損傷するだけでも深刻な事故となる。
fこれは地震やテロで原子炉建屋とタービン建屋の間の配管が損傷しても同様。