ここにこうして書いていることは、枕元でみこちゃんから聞いた昔話の内、特に何度も繰り返し聞いた話ばかりである。

それはきっと彼女の人生の中で重要な出来事だったのだろうと思いながら記している。

 

そろそろ青春時代に移りたいのだが、いざ書こうとする段階になって、彼女の青春時代がとても薄っぺらいことに気付いた。(本人には失礼であるが)

とりあえず小学校卒業後から書いてみよう。

 

 

中学時代は成績はあまり良くないが、演劇部に所属し明るく人気があったので、ちゃっかり頭の良い子達のグループに混ぜてもらっていたらしい。

学祭でみこちゃんが演じた夕鶴のおつう役は、華やかな見た目と物悲しい演技が好評で絶賛されたという。

私が小学校の学芸会で、「主役やりたいけど無理だよね。」と言ったら、「お前主役やらないでどうする!折角なら目立つ役をやれ!」と怒られ、熱心に演技指導を受け、見事オーディションで主役を射止めたこともある。

私が神様なら、絶対にみこちゃんを舞台女優にしていた。

 

「そんな難しい学校じゃないし、何もしなくても受かるでしょー」と、甘い考えで高校受験の勉強は全くせず、案の定落ちた。

勉強が好きだったのに家の為に高校に行けなかったよー子姉を思うと、我が親ながら非常に腹立たしい。

そんな訳で何となく、みこちゃんはタイプライターの専門学校へ二年‥一年だったかな?

通うことにした。

 

専門学校での実技の成績は良く、タッチの速さと正確さを総合的に見て一番だったらしい。

学校外では友人とアイドルやグループサウンズの追っかけをして、田舎から遥々渋谷まで繰り出し、出待ちをしていたこともあるらしい。

大人になってからの出不精ぶりを考えるとイマイチ想像がつかないが、みこちゃんにもそんな時代があったと思うとホッとする。

とあるグループサウンズのボーカルからは、口を突き出す仕草から「カッパちゃん」と呼ばれて気に入られていたという。

他のファンから「可愛い子はいいわね!」と妬まれ、体当たりをされたこともあると得意げに話していた。私にはそんな漫画の様な体験はないので、ほんの少し羨ましいと感じる。

 

学校卒業後は大手の製作所の事務として就職し、お給料もそこそこ良く順風満帆だった。

が、一年足らずですっぱりと辞め、さお兄が店長をしていた中華料理屋でバイトをすることになる。

「若かったからねーアホだよね」と本人も言っていたとおり、本当にアホだと思う。

いや、でもアホだったけれど、ここで鍋をブンブン振っていたからこそ、みこちゃんの料理はその後どれも本当に美味しかった。

私が神様なら、第二の機会としてみこちゃんを中華料理人にしたと思う。彼女の生まれつき逞しい腕は、きっと重い中華鍋を振るう為に授かったのではないだろうか。

名誉の勲章として、その腕には熱い油が跳ねて出来た火傷があった。

 

 

意外と書けることがあり驚いているが、恋愛事情を抜かすと、みこちゃんの青春時代はざっとこんなものである。

目標も志もなく、もちろん何かをやり遂げたこともなく、たらんと過ごしていた。

ほら、やっぱり薄い。

 

誰かが、何かが、スパイス不足である。