実の父、俊二のあれこれを聞いたのは、確か小学校中~高学年辺りである。

女を作り借金を作り逃げたという刺激的な内容を、私の年齢に比例して小出しに聞かせてくれた。

『お前の父ちゃんは女作って借金作って逃げちまってねー』とは言いつつも、みこちゃんは私に対して父の悪口を本当の意味で言ったことはない。

それよりも、カッコ良かったとか、面白かったとか、絵が上手かったとか。そんな話をよくしてくれた。

くっきり二重の大きな目以外の外見は、ほぼ父親似の私。

『女作って借金作って逃げた男とそっくりなのに、私のこと嫌になったりしないの?』と聞くと、

『自分の子供は誰に似てたって自分の子供!可愛いに決まってるじゃん』と答えてくれた。

つい最近知ったことだけど、不倫問題で揉めた時、さお兄に悪態ついて手を出したとか。

そんな父と親戚との醜い色々は、みこちゃんの口からは一度も聞けなかった。

 

 

先程から逃げた逃げたと書いているが、そう、俊二は逃げたらしい。

みこちゃんと別れた後、しばらくは連絡を取り合っていたが、その内音信不通になったという。

『借金を随分抱えて八方塞がりだったから、もしかしたら樹海にでも入っちゃったのかもね。当時そんなニュースがテレビで流れる度に、俊ちゃんなんじゃないかって思ったよ。』

みこちゃんはそう言っていたけど、娘の勘なのか、私は彼が生きていると思っている。

『本当は私たちに会いたがっているけど、居場所が分からないとか?』

私がそう尋ねると、

『うちの実家の場所が分かるんだから、会いたければ来るはず。訪ねて来ないのは新しい生活があって会いたくないか、死んでいるか。』

とみこちゃんがきっぱりと答えた為、私はそれ以上何も言えなくなってしまった。

 

今になって思うが、逆を言えばみこちゃんだって俊二の実家を知っている訳だから、本当は俊二のその後を知っているけど、何かしらの理由で私に真実を伝えていないだけかもしれない。

 

 

『本当のお父さんに会いたい?』

みこちゃんにそう聞かれ、

『別に、赤ちゃんの頃だから何も覚えていないし。でも会えたら養育費だけは貰いたいよね。』

なんて答えていたけど、本当の本当は実の父にものすごく会ってみたい。会ってどうするとかじゃなく、もう血の繋がりが求める本能の様なものだと思う。

正直に答えたら、何となくみこちゃんに悪い気がしていたけれど。

 

探偵に依頼して消息を‥なんて考えたりもしたけど、今となっては、そんな労力と大金があれば自分の娘の為に使いたいと思う。

結局はその程度のものだ。

 

 

あの時『会いたい』と正直に答えて、深く追求していたのなら、もしかしたら。

あ、でもやっぱり会えたら、俊二に似た強力なくせっ毛の為に費やした、縮毛矯正費用15年間分だけは返してもらいたい。