みこちゃんが仕事でなな子のお迎えが遅れる時には、近くのよっ子姉夫妻が代わりに保育園へ行ってくれた。
二人が来ると、なな子は歓喜のあまり、園の廊下の端から端まで駆け抜けながら喜んだという。
大人しいなな子がおかしくなる程興奮する姿を見て、余程保育園が辛いのかと、よっ子姉の二番目の夫ヒデキは心配したそうだ。
ヒデキ━━周りからヒデちゃんと呼ばれるこの男性は、大の子供嫌いである。
現在は山でペンションを営んでいるが、例え客の子供であろうと、騒いだら睨み𠮟りつける程だ。
ところがなな子は子供のくせに静かで手がかからなかった為、見事ヒデキにはドストライクの子供だった。
生後何か月だったか、真夏にオムツ一丁にしてホースで水をジャバジャバかけたり(なな子は喜んでいた)、一歳頃、自転車に適当に乗せて落っことしたりなど(なんとか無事だった)。
扱いは多少雑だったが、子供嫌いが嘘の様に可愛がっていた。
江戸っ子気質でせっかちで短気な面もあるが、元々優しく温かいのである。
よっ子姉はみこちゃんと同じく大のイケメン好きだが、この決してイケメンとは言えない細い三角眼の男を二番目の夫に選んだのは、最初の夫との間の息子に、冷たい態度をとったり苛めたりしなかったからである。
大の大人が、というところだが、男はいつまでも子供で嫉妬深い生き物だ。ヒデキの前に付き合っていた何人かの彼氏は、皆大なり小なりその様な態度をとった為再婚には至らなかったという。
ふー子姉も、『いままでとは全然違う、よっ子姉の全然タイプじゃない男だから、今回は絶対長続きする!』と太鼓判を押したそうだ。
その言葉どおり、現在も喧嘩の息までピッタリの、仲の良い夫婦である。
ヒデキは自分の兄弟と確執があり仲が良くなかった為、よっ子姉の温かい兄弟達を心から好いていた。
『お前らんとこは仲が良くていいよな。』と呟く姿が淋し気に感じることもあるが、血の繋がりなど誰もが忘れるくらい、このヒデキはすっかり身内の一員だ。
みこちゃんからそっと聞いたことだが、このよっ子姉夫婦には、産まれてすぐに心臓の病気で亡くなった息子がいる。
なな子が産まれる少し前だから、生きていれば同い年になる筈だった。
ヒデキにとっては血の繋がった実の息子であり、最初の夫との息子にとっても実の弟であり、家族の絆がより深まっていただろうと考えると、その喪失感や辛さは計り知れない。
元気に産まれたなな子を見て、思い出すから見たくないとか妬んだりとかそういう感情を持ってもおかしくないと思うが、よっ子姉は自分の子の様によく面倒をみてくれた。
むしろその子が元気に産まれていたら、きっと私はあんなには二人に可愛がってもらえなかっただろう。
なな子にとって二人はもう一人の父と母であり、みこちゃんにとってはかけがえのない育児のパートナーであった。
ところでふー子姉もよっ子姉も、『二番目の夫』と書いているが、二人とも最初の夫は事情があり亡くなっている。
みこちゃんなんかよりもずっと壮絶なドラマがあると思うが、二人はまだ健在で、許可ももらっていない為恐ろしくて書けない。
伯母達はいつまでも最高にして最強だ。