みこちゃんは決して美人ではなかった。
━━書き出しが思いつかなかったので、彼女が愛した、かの有名小説を参考にさせてもらった。
主なパーツは、黒々とした大きな瞳、ちょこんとした鼻、ぽてっとした口。
そして小さな顔には小さな無数のホクロが星の様に散らばっているのだが、何故か言われるまでその存在に気づかれない。
顔の大きさとは不釣り合いに、肩幅から腕にかけては逞しく…これが彼女にとっては最大のコンプレックスだった。バストはあるが残念なことにウエストもある。
お尻は割と小さく、足も細くはないが締まる所は締まり形が良かった。
つまり一言で言えば、顔は整ってはいないけど可愛く、体型は上半身デ…太目である。
特技はないが、歌とお芝居が少しだけ上手だった。
勉強は嫌いで成績は中の中か下くらいだけど、頭はすごく良かった。
末っ子特有の甘えん坊で、ワガママだが愛嬌があり放っておけない。
飽きっぽく根性がない上に、世間知らずでおまけに男運がなかったので、人生において何事も大成することはなかった。
だがもし彼女が男に振り回されず、何か一つのことに熱中しやり遂げようとしたならば、規格外の偉人になっていたかもしれないと思う。
神が人間の運命を定めているのなら、みこちゃんの人生を無駄遣いされたことが非常に腹立たしい。
晩年はとにかく、娘から見て歯痒い程無欲だった。
古いアパートの狭い部屋をお城の様に愛し、娘二人と、その孫娘と触れ合うことが最大の喜びだった。
ちょっと贅沢して美味しい物を食べに行ったり、綺麗な所へ旅行へ行ったり、もっともっと欲を出してしぶとく生きて欲しかったが、彼女には必要なかったらしい。
「私には何も優れた所がないけれど、あんたたち三人は私の命が生み出したもの。
これだけは唯一誇れる」 と。
卵巣も子宮もなくなったお腹を撫でながら微笑んでいた。