歳の離れた二人の姉は、みこちゃんの人生の大半に大きく関わり支えとなった。

 

6人兄弟の長女、みこちゃんより14歳年上のよっ子姉。

冒頭部分で生命の神秘を嘆いていた女子中学生その人である。

 

色白で色素の薄い大きな瞳、華奢な身体、おっとりしていて気品溢れるその風貌はフランス人形の様に美しい。

彼女はとにかく貧しい家の長女故に、様々な我慢を強いられてきた。

頭が良く勉強が好きだが、畑仕事の手伝いが何より優先な為、机に向かうと怒られた。

元々身体が弱かったので、体調が優れず畑仕事を休める日は本当に嬉しかったという。

そもそも泥まみれになる畑が好きではないのだ。

「よっ子は畑に行くとすぐに気分が悪くなるんだから、しょうがないねえ」

が母親の口グセである。

 

修学旅行費も工面することが出来ず、恥ずかしい為友人には行きたくないのと嘘を付いたことがある。

一人落ち込んでいると、突然父親が、お姫様の様なペチコートを買ってきてくれたのだった。

自分のせいで旅行に行けない娘に心を痛め、出来る精一杯のことをしてくれたのだろう。

彼女が憧れていた『あしながおじさん』はとうとう現れず、高校進学も叶わなかったけれど、この優しい父親の思い出は宝石の様に輝いている。

 

 

よっ子姉と真逆なのが、みこちゃんより10歳上のふー子姉だ。

奥二重の優しい和風美人だが、とにかく逞しい野生児。

勉強が大嫌いだったので、畑仕事には自ら飛ぶ様に駆けて行ったという。

自然が好きで、蛇をも捕まえてはぶんぶん振り回し玩具にしていた。

 

よっ子姉は中学卒業後すぐに家を出て働いた為、ふー子姉がみこちゃんの小さな母親となる。

遊ぶ時も家の手伝いをする時も、いつも背中に負ぶっていた。

みこちゃんは大変なヤキモチやきで、ふー子姉が余所の子に話しかけたり優しくしようものなら、負ぶわれている背中から身を乗り出しその子を睨みつけ抓っていた。

 

昔はあまり美人がいなかった…というより顔の欠点を化粧の技術で隠し切れない女性が多かった気がするが、成長したふー子姉はほとんど化粧をしていないにも関わらず、息を飲む程に美しかった。

長い黒髪は綺麗に下ろし、小柄だがスタイル良くスラリと伸びる細い足。

縁日の屋台のにいちゃんが、お釣りを渡す手を空に止めたまま、ポーッと見惚れる程に。

みこちゃんはこのふー子姉が、自分が持っているものの中で何よりの自慢だった。

 

実は、親戚に気に入られ養子に出されそうになったのがこのふー子姉である。

もしこの姉が居なければ、みこちゃんの人生は大きく変わっていただろう。

姪としてもこの伯母が居てくれて本当に良かったと、養子に出すことを止めた祖父に感謝している。

 

ふー子姉は中学卒業後、家にお金を入れる為に親に内緒で、年齢をごまかし今でいうキャバクラの様な店で働こうとしたことがある。

長く隠し続けられる訳がなく、その内あっさりとバレてしまった。

「お前親に隠れてそんないかがわしい所で働くなら、お尻磨いて売り飛ばしちまうよ!」

と怒鳴る母親の横で、父親は静かに涙を流していた。

その涙を見て、彼女は二度と親を悲しませまいと心に誓ったのだった。

 

 

「ねえ、よっ子姉って、なんか私達と違うと思わない?」

ある日突然ふー子姉が言い出した。

「違うって?」

「だって兄弟の中で一人だけ色白で線が細くて、なんか一人だけ系統が違うっていうか。

もしかしたら種違いとかさ。」

「まっさか~」

真相は不明である。