【ボストンテリアと暮らし始める】後編 | ボストンテリア日記~僕とボーズと時々ツレ

ボストンテリア日記~僕とボーズと時々ツレ

 僕が出会ったボストンテリアという犬とそれにまつわる生活についての記録です。名前はボーズ。僕のツレが逢わせてくれました。
 更新は週に一回くらい出来れば良いなぁと思ってます。
 時々くすりとでも笑って貰えれば幸いです。

 さてあるのこと。



 その夜も銭湯から帰さあ寝るぞコンニャロと、知らず知らずのうちに口元に幸せの微笑みを浮かべながら、走り回るボーズを横目に布団に潜りこもうとしたその時。
 ボーズの動きが俄かに止まり、僕の幸せの布団の上で腰を屈めた。

 

 就寝直前の布団への放水準備には流石の僕も大慌て。これから幸せな夢を見る予定が、おしっこまみれの寝苦しい夜になってしまう!それは、それだけは避けなければ!

 辺りを見回してもおしっこ用シートは見当たら無い。とっさに僕は両手を合わせて受け皿を作り、彼のちんちんの下へとすばやく差し出した。
 その直後、黄色い液体は勢い良く放出され、僕の手の受け皿の上になみなみと注がれた後、放水は無事終了した。


 ひとまず布団への放水を免れて僕は一安心。ボーズはと言えば、自分の放水によって憎むべき炎が消えた火災現場を見つめる消防士のような恍惚とした表情で悠然と僕の布団に潜り込んだ。


人の気も知らないで!


 しかしまあいいだろう。さあトイレに行って僕の手の中のおしっこを捨てて、手を洗ったら寝るぞ寝るぞ!と思ったら、寝室のドアが閉まっている・・・。


 ここで自分の置かれている状況を冷静に振り返ってみた。僕は今寝室でひとり、正座している。手の中にはなみなみとボーズのおしっこがある。これを処分してしまわなければ布団には潜り込めない。


 しかしトイレには行けない。何故ならトイレは寝室の外にある。鍵こそかかってはいないもののドアは閉まっていて、正座の状態から立ち上がってドアノブを捻らなければドアは開けられないからだ今の自分にそれは無理こぼさずに上手く立ち上がったとしても両手が塞がっている今、ドアは開けられない。


 自分で出来なければ誰かに頼めばいいのだけれど、ツレは今どこに居るかと言うと実は、明日の朝食べるパンが無くなったとか言って先程コンビニへと買い物に行ってしまったばかりだコンビニは、買い物時間を含め往復で三十分はかかる。東京とは違うのだ。



 どうするどうする?両手の中におしっこ、開けられないドア。しかも眠いし。気を抜くと手から力が抜けそうだ。そうなったら元も子も無いぞ。合わせた両手に力を入れてこぼれないようにしているけれど、ずっと力を入れ続ける事がこれほどキツイ事だとは知らなかったよホント。

 おしっこをどこかに捨てたいけど、この部屋にこの液体を受け入れてくれるような心の広い容器は見当たら無い。手の中のおしっこが乾ききるまでずっとこのままってのもツライし。おいおい何時間かかるんだよ乾くまで。常識的に無理でしょ。どうすっかなあ。


 んー。飲む?飲んじゃう?赤ちゃんのおしっこなんてお茶みたいなもんだって故手塚治虫先生も言ってたしなあ。……それじゃ仕方ないなぁ。え~と……ぶえっ!くさ!駄目だやっぱ。駄目駄目!犬のおしっこ飲もうなんて、そもそも人間の尊厳ってものをどう考えてるんだよ全く。あー、座ったままってのもツライなあ。ゆっくりやれば立つ事くらいできそうだけど、体勢崩してこぼしちゃうかもよ?立ったら再び座れないよなあ。でも立たないと動けないもんな。取り合えず立つか、よいしょ……っておい!痺れてるよ足!立てないよ!無理に立とうとするとふらつくよこれ!人生最大のピンチ!



 僕は両手に力を入れ続けたまま、正座をしながら眠気をこらえてツレが帰ってくるのを待つしか無かった。その時僕は間違いなく、山岳救助隊の到着を待つ遭難者だった。眠るな。あと少し。あともう少しだけ、頑張ろう。眠るな。そうすれば助かるんだ。そうすれば……。腕が痺れてる・・・ね、眠い……。

 チクショウ、張本人のボーズは既に僕の布団に潜って早々といびきをかいているのってのに。



 あ、手の間から僕の布団におしっこ漏れてる……。



それでも一緒に寝るのだ  

それでも一緒に寝るのだ。

相変わらずボーズはベロ出してます。

僕の鼻の下の黒いのは鼻毛じゃないですよ、ヒゲですよ、ヒゲ