バスを降りると、運転手さんがバゲージルームを開け、あなたの荷物はどれだと聞く。やっぱり、僕はここで降ろされるらしい。これからどうなるんだろう。あたりを見回しても、空港らしきものは見当たらない。歩いて行けそうにないのだが。


と、運転手さんが僕を見て、


運 「別のバスが来ます」

私 「えっ?ここにですか?」

運 「仲間と連絡が取れました。金浦空港行きです」

私 「え、えーっ?それに乗れるんですか?」


運転手さんの話では5分後に金浦空港行きのバスが来るという。あぁ、助かった!朝から2回目の「ホッと安心」。私が安堵したのを見て、運転手さんも笑顔を見せる。


それから、運転手さんと金浦空港行きのバスが到着するまで、親しく話をすることができた。運転手さんは僕より3才年下の52才で、24才の息子さんがいる。運転手さんの趣味は走ることで、お腹回りの贅肉を落とすために始めたらしいのだが、今やフルマラソンを走り切れるのだという。すごい。僕も調子に乗って家族の写真を見せたりしていたのだが、ふとバスを見ると、運転手さんが戻らないのを不審に思う乗客がこちらを見ているのに気付いた。


私 「もうバスに戻って下さい。乗客の皆さんが待っておられます」

運 「いいです。バスが来るまで一緒に待ちます」


その厚意に涙が出そうになった。


そこに金浦空港行きのバスが来て、運転手さんが私の身柄を引き継いでくれた。私は一旦、仁川空港行きのバスに戻ると、乗客の皆さんに、「ごめんなさい!」と謝ったのだが、驚くべきことに、乗客の一人が、「気にしなくていいよ。良いフライトを!」と返してくれた。世の中には良い人がちゃ~んといるんだ、と大変温かな気持ちになった。


マラソン大好きで24才の息子さんがいる52才のリムジンバスの運転手さん、あなたのご厚意を一生忘れることはありません。それから、私のチョンボに巻き込まれながらも許し、助けて下さった皆さま、ホンマにありがとうございました!


ボルネオ7番のブログ-リムジンバス


取り合えず行き先を確認せねば・・・と、前にいた韓国人らしき男性に尋ねる。


私 「このバスは、ひょっとして仁川空港行きですか?」

男 「ええ、そうですが・・・」


私の表情が固かったのか、男性が心配そうに私を見ている。

ここは運転手さんに言うしかないだろう。


私 「間違ったバスに乗ってしまいました。私は金浦空港に行きたいのです」

運 「・・・・・・」


運転手さんが困った表情を見せる。


私 「すみませんが、ここで降ろして下さい」

運 「ともかく、運転中は立たないで下さい」


と席に座らされた。

運転手さんは携帯電話で誰かと話し始め、話が終わるとバスを停めた。手招きされる。ここで降ろしてもらえるのだろうか。


運 「金浦空港に寄ってあげます」

私 「ええっ?ホンマですか?」

運 「はい。だから席に座っていて下さい」

私 「ありがとうございます!」


半信半疑のまま席に戻る。こんなことがあっていいんだろうか。路線バスがコースを変えるなど、日本ではあり得ないことだろう。先程、質問した韓国人らしき男性も、「良かったですね」と言わんばかりの笑顔でこちらを見てくれている(後で分かったことだが、この男性は日本人だった)。ホンマに良かった。何と自分はついているんだろう、と感謝しながら席に着いた。


バスは高速に乗り、「Gimpo(金浦)」の表示がどんどん増えてきた。空港が近付いているのが分かる。ところが、突然バスが高速道路脇の避難所のようなスペースに入って停車した。運転手さんが立ち上がり、私の方を向くと、「ここで降りて下さい」と言うではないか。


ここで降りるの?ここから歩いて行くの?


野菜や果物を積んだ、きれいとは言えないトラックが何台が停まっているのが目に入った。多分、リムジンバスがここに入ってくることは普段ないのだろう、みんな何事かと見ている。


不安な気持ちでバスを降りた。


(続く)

空港へのリムジンバスを乗り間違えた。

経緯はこうだ。


チェックアウトを済ませ、フロントの男性に関西なまりの英語で質問。


私 「空港までタクシーでいくらくらい掛かるの?」

フ 「8万ウォン(約6000円)くらいですかね」

私 「うわっ、思ったより高いやん」

フ 「小一時間掛かりますからね」


手持ちのウォンは5万ウォンしかない。これだと足りない。


私 「そうか・・・なら、この1万円をウォンに両替してくれる?」

フ 「リムジンバスを使われてはどうですか?5分後に出ますよ」

私 「それ、いくら?」

フ 「1万5000ウォン(約1200円)です」

私 「乗るっ!それに乗る!」


と、手にしていた1万円を引っ込めると、手持ちのウォンでチケットを買い、ホテル前のバス停に急いだ。間もなくバスが到着。チケットを運転手さんに渡して乗り込む。ホッと安心して睡魔に襲われそうになった頃、バスが別のホテル前のバス停に停車、運転手さんが「シートベルトを締めて下さい。ここを出発したら、高速に乗ります」のアナウンス。うつらうつらしながらシートベルトを締め、バスが動き出した後、バス停の表示が目に入った。


「For Incheon International Airport」(仁川国際空港行き)


えっ!?このバスは仁川国際空港行き?

僕が行きたいのは金浦(Gimpo)空港なんやけど・・・。


眠気が吹き飛び、呼吸も忘れて頭がグルグル回り出す。

仁川空港まで行き、そこから金浦空港まで行くとすると、どれくらい時間が掛かるのだろう。飛行機に間に合うのだろうか。間に合うとしても、タクシー代はいくら掛かるのだろう。手持ちのウォンでは足りないし、どこで両替すれば良いのだろう。


(続く)