取り合えず行き先を確認せねば・・・と、前にいた韓国人らしき男性に尋ねる。


私 「このバスは、ひょっとして仁川空港行きですか?」

男 「ええ、そうですが・・・」


私の表情が固かったのか、男性が心配そうに私を見ている。

ここは運転手さんに言うしかないだろう。


私 「間違ったバスに乗ってしまいました。私は金浦空港に行きたいのです」

運 「・・・・・・」


運転手さんが困った表情を見せる。


私 「すみませんが、ここで降ろして下さい」

運 「ともかく、運転中は立たないで下さい」


と席に座らされた。

運転手さんは携帯電話で誰かと話し始め、話が終わるとバスを停めた。手招きされる。ここで降ろしてもらえるのだろうか。


運 「金浦空港に寄ってあげます」

私 「ええっ?ホンマですか?」

運 「はい。だから席に座っていて下さい」

私 「ありがとうございます!」


半信半疑のまま席に戻る。こんなことがあっていいんだろうか。路線バスがコースを変えるなど、日本ではあり得ないことだろう。先程、質問した韓国人らしき男性も、「良かったですね」と言わんばかりの笑顔でこちらを見てくれている(後で分かったことだが、この男性は日本人だった)。ホンマに良かった。何と自分はついているんだろう、と感謝しながら席に着いた。


バスは高速に乗り、「Gimpo(金浦)」の表示がどんどん増えてきた。空港が近付いているのが分かる。ところが、突然バスが高速道路脇の避難所のようなスペースに入って停車した。運転手さんが立ち上がり、私の方を向くと、「ここで降りて下さい」と言うではないか。


ここで降りるの?ここから歩いて行くの?


野菜や果物を積んだ、きれいとは言えないトラックが何台が停まっているのが目に入った。多分、リムジンバスがここに入ってくることは普段ないのだろう、みんな何事かと見ている。


不安な気持ちでバスを降りた。


(続く)