何のことかと思われるだろうが、アイヌの人たちが16世紀頃に海からの侵入者に備え、海岸沿いに築き上げた小さなお城・・というか土を盛り立てて造った砦のことらしい。納沙布岬からの帰りに立ち寄ったのだか、アイヌの人たちが動き回る姿を想像しながら不思議な感覚に包まれた。アイヌの人たちからすれば、私たちこそ侵入者で、ひょっとすると、「北方領土を返せと言う前に、北海道そのものをアイヌに返せ」と言いたかったのでは。

(ピンボケ写真でごめんなさい)

実際、アイヌの人たちと和人と呼ばれる本州からの移民の間で何度も争いや戦いがあったようだし、和人が厳しい条件でアイヌの人たちを働かせたことが原因だったとも聞いた。最後は和人が持ち込んだ天然痘でアイヌの人口が激減したというから、それが事実なら、北海道を返せ、平和な時間を返せ、と言いたかったアイヌの人たちも多かったろうと思う。

同じような話がアメリカにもあり、メキシコからの移民を問題にするなら、アメリカそのものを元々住んでいたインディアンに返したらどうだ、という皮肉があったように思う。かように国土や土地の問題は根が深い。生活を始め、家族ができれば、その地は文字通り重要なホームランドになる。その安全や生活が脅かされたら、きっと私だって黙ってはいないだろう。

(続く)
お休みを頂き、北海道にやって来た。昨日、羽田空港から中標津空港まで飛び、バスで根室まで来ると、その足で納沙布岬へと向かった。北方領土という言葉は知っていても、いつも遠くに感じてしまう問題だ。だから、根室まで来たこの機会に、先ずは自分の目で見ておこうと思った次第。


カメラの調子が悪くてピンボケ写真だが、肉眼で一番手前にある歯舞群島が見えた。小さな岩にしか見えないが、貝殻島という島までは僅か3.7kmしかないとのこと。まさか、こんなに近いとは思っていなかったので、もし自分が生まれ育った家があの島にあり、ご先祖さまのお墓もその近くにあるなら、戻りたいと思うのは当然だろうと思った。

(続く)
グローバルユースビューローというツアー会社主催のクラシックコンサート(第99回目とのこと)にお邪魔した。バイオリンの天満敦子さん、ピアノのヴィンチェンツォ・スカレーラさん、テノール歌手の笛田博昭さんによる共演とのことだが、不勉強な私にとっては初めて聞くお名前ばかりで、先ずはパンフレットにあった出演者の紹介を読ませて頂いた。


天満敦子さん:
東京藝術大学大学院修了。在学中に日本音楽コンクール第1位、ロン=ティボー国際コンクール特別銀賞等受賞。1993年にルーマニアの作曲家ポルムベスクの「望郷のバラード」を日本に紹介、クラシックでは異例の10万枚を超えるヒットに。以後、この作品は天満の代名詞となる。現在、東邦音楽大学大学院教授。

ヴィンチェンツォ・スカレーラさん:
米国ニュージャージー州出身。5才でピアノを始め、オペラに出会ってからはオペラに熱中し、メトロポリタン歌劇場に通う少年期を過ごす。オペラに従事したいという願望から声楽の伴奏者を志し、1980年、ミラノ・スカラ座の副指揮者兼ピアニストを務める。ベルゴンツィ、カレーラス、カバリエなど一流声楽家の伴奏者として活躍中。

笛田博昭さん:
名古屋芸術大学音楽学部声楽家を首席で卒業。イタリア留学中にコンクールで優勝、フェッラーラ歌劇場で「イル・トロヴァトーレ」マンリーコ役でイタリアデビューを果たす。類まれなる声と恵まれた舞台姿を兼ね備えたプリモ・テノールで、国内外で活躍。第20回五島記念文化賞オペラ新人賞、第50回日伊声楽コンコルソ第一位など受賞多数。

間もなくコンサートが始まり、第一部は天満さんのバイオリンにスカレーラさんのピアノ伴奏、第二部は笛田さんのテノールにスカレーラさんのピアノ伴奏という構成だったが、驚いたのは笛田さんの豊かな声量と力強くて伸びやかな歌声だ。演奏が始まる前に、天満さんから「日本にもこんなに素晴らしいテノールがいたのかと、皆さん、思われる筈です」という予告があったが、想像をはるかに超える声量と感情豊かな歌声に圧倒された。合計10曲を歌われたが、演奏が終わるたびに大きな拍手が湧いたから、皆さん、感動されたのだと思う。

とても温かい気持ちになったのはアンコールの時間だ。笛田さんへのアンコールの拍手が鳴りやまない中、天満さんがバイオリンを持参して舞台に出てこられ、「ごめんなさいね」と笛田さんではなく自分が出てきたことを謝られた。観客席からそういう天満さんのお人柄に温かな拍手が送られたが、天満さんが演奏されたモンティの「チャルダーシュ」が見事で、今度は大きな拍手が送られた。

次に笛田さんが出て来られ、天満さんのバイオリン、スカレーラさんのピアノ伴奏でプッチーニの歌劇「トゥーランドット」の「誰も寝てはならぬ」を歌われたが、素晴らしい歌声に私など溜め息をつきながら聴かせて頂いた。

最後は天満さんがスカレーラさんの伴奏で中田喜直の「夏の思い出」を 演奏されたが、車に例えれば、排気量5000ccのベンツで高速道路を時速80kmで優雅に走る、そんな余裕を感じさせる演奏だった。その余裕があるかどうかこそプロとアマの差かなと感じさせられた。大人と子供の差も、ひょっとすると心に余裕があるかどうかかも。そこまで考え、ちょっと焦った(笑)