山口 周さんの「人生の経営戦略」を読んだ。既に低成長の時代を迎えている日本では、頑張れば報われるという高成長時代の常識は通用しない。従って、企業に経営戦略が求められているように、個人にも「人生の経営戦略」が必要だ。そんな書き出しで始まった。



最初に、生き方の指針として分かりやすい例を挙げておられる。一つは「冷静に戦い抜いて経済的、社会的成功を手に入れろ」というマキャベリ的人生論。一つは「人間は本来善良なもの。個人の内面的道徳を重視せよ」というルソー的人生論。上手い例だと思ったが、これからの世の中は「自分らしい人生と、そのための経済的、社会的成功を両立すべし」というアリストテレス的人生論が良いのではとおっしゃる。なるほど。


では、どのような心構えが必要かと言うと、他者も組織も社会もあなたの思い通りにはならないのだから、先ずは「コントロールできる資本はあなたの時間だけ」だと認識し、スジの良い仕事を通して得た信用を人的資本に転換し、更には、それら人的資本が有する社会資本や金融資本を活用できるまで努力しよう、ということになるのかなと思う。


それから、成功を収めるには才能やセンスよりも長く続けられるかどうかが大事で、それを孔子は「楽しむ人には敵わない」と表現していること、又、ピカソは2万点の作品、アインシュタインは300の論文、エジソンは1000点の特許、バッハは1000曲の作品を残しており、彼らの「質」を支えたものは「量」でもあると書いておられる。説得力があった。


最後に、外資系投資銀行のトレーダーや弁護士の仕事を奪ってきた「AI」にどのように対抗すれば良いか。その解が興味深かった。


①正解のある仕事は避ける、②感性的・感情的な知性を高める、③問題を提起する力を高める。


なるほどと思う。私が今から「人生の経営戦略」を考えるには少々歳を取り過ぎかと思うが、この「AI対抗」は面白いし、今からでもチャレンジできるように思える。やってみようと思う。

興味深く読ませて頂いた。ニセコとは、大量の外国人観光客が押し寄せている北海道・ニセコのことで、地元のタクシー運転手さんの言葉を借りると「外国だなっていう印象ですね。日本じゃないと思います」となる。


そんな書き出しから、日本そのものが外国人観光客に占拠され、ニセコのようになるぞという予言書又は警告書かと思ったが、読み進む内にそうではないことが分かった。



すなわち、ニセコは元々スキー愛好者には大人気だった「ジャパウ」と呼ばれる Japan Powder Snow が楽しめる場所で、これをPRするなら外国人富裕層客向けに絞ることを「選択」し、次に街ぐるみで様々なサービスを彼ら向けに「集中」することでリゾート地として大成功を収めたらしい。要は「選択と集中」をすることで、狙いを定めた消費者を引き寄せることが可能になるという趣旨らしい。

 

スターバックスの例も面白かった。「フラペチーノ」の導入で若い女性客を狙ったところ、これが当たったことからコーヒー好きのオジサンは敬遠するようになったらしいが、若い男性客も増えたことで客層が若返り、ちょっと背伸びしてでも行きたいというカフェになったとのこと。確かに、疲れ切ったようなオジサン客がいないから、私は正直入り辛い(笑)

 

びっくりドンキーの話も説得力があった。「ハンバーグ」に特化して素材にこだわり、冷凍ではなく生で配送するシステムまで作り、更には箸で食べられる厚さにすることで「ハンバーグ好きの日本人客」への選択と集中を行ったらしい。その結果、競合ファミリーレストランを支持する理由が「値段の安さ」にあるのに対し、びっくりドンキーの支持理由は「美味しいから」で、根強い固定客を獲得したとのこと。

 

丸亀製麺は「粉から手作り。材料は国産小麦、水、塩のみ」を強調し、それが見える動線を店内に施したことから、そういうコンセプトを重視する顧客を得て復活したとのこと。創業者の「全員がイイネと思うものを目指すと平均化して個性がなくなる」という言葉が紹介されていたが、日本は商品もサービスも、もっと言うと会社も個人も、個性をなくしてしまうとサバイバルできない時代になったのかなと思った。

2025年9月4日に始まり、2026年5月30日に終わるというツアーだが、12月28日(日)、オーチャードホールに来られると分かり、半年前にチケットを予約した。清塚さんはNHKの「クラシックTV」で番組が取り上げた音楽家や曲を大変分かりやすく解説されているが、今回のコンサートでも、笑いを取りながら巧みに作曲家の紹介や曲の背景を解説されていた。こちらからすると関心が高まったところで演奏されるから、私など聞き耳を立てながら前のめりになって聞いてしまった。

 

さて、前半は「ベートーベンとシューベルト」、「シューマンとブラームス」、「瀧廉太郎とショパン」、「ドビュッシーとラフマニノフ」という「二人一組」ごとに二人の関係性又は共通点を説明し、各々の作品を演奏されたが、これが実に興味深くて勉強になった。

 

「ベートーベンとシューベルト」

ベートーベンは晩年ウィーンで5本の指に入るほどの資産家になったが、一方のシューベルトは全く売れず、彼を支える支援サークルの方々のお世話になっていたらしい。そんな説明の後、ベートーベンのピアノ・ソナタ第23番「熱情」を聞くと、迷いのない喜怒哀楽のエネルギーが充満しているように感じたし、シューベルトの即興曲 変ホ長調 作品90 第2番というのを聞くと、不安や迷い、躊躇、幸福への願望などが実際に込められているように感じた。


「瀧廉太郎とショパン」

この二人には、若くして結核に冒され、早逝してしまったという共通点があり、瀧廉太郎は23才で亡くなっている。彼はベルリン留学中に結核にかかり、やむ無く帰国して療養するも回復せず、亡くなる数ヵ月前に作曲したのがこれから演奏する「憾(うらみ)」というピアノ曲だ説明された。更には、「最後の音はレ。これは廉太郎のレで、普通は左手で弾く低い音だが、わざわざ右手で弾けと指示されている」と説明されたから、俄然、曲への関心が高まった。曲そのものは美しく、怨念のようなものは感じなかったが、最後の「レ」には、「もっと生きたい」という瀧廉太郎の心の叫びを感じた。



清塚さんのトークは噂に違わず軽妙でウィットに富み、何度も笑わされた。最後の曲を演奏される前など「アンコールで出て来るには拍手が必要です。皆さん、全力で拍手するんですよ、だって今日は座ってただけなんだから」とおっしゃったが、回りの方々は「待ってました」とばかりに大笑いしながら拍手をされていて、清塚さんとは相思相愛の仲なんだと思った。ただ、音楽に疎い私にとっては、清塚さんの作曲家や曲についての紹介が何よりも有り難がった。