通常経済状況というものは政府部門が介入してくれば、市場自体は悪くても「
一進一退」を繰り返すものですが、欧州の場合、如何せん1年間放置した、と
いう「実績」があるために一進一退とは行かず、悪くなる一方、という状況に
なってます。
既にお伝えしている通りなのですが、ギリシアが当初のターゲット(7月21
日の既定)を守っていなかった、或いは守れなかった為に10月の資金援助は
中止になりそうであります(こちらで予測した通りです)。
これではドイツ議会の承認など通りようがありませんので、10月分の109
0億円をどこからか調達するしか方法はありません。最終的にはIMFでしょ
うが、これが認められるのか今週は山場です。
更に今になってギリシアのヘアカットを50%程度まで見て、その分欧州の銀
行に自己資本を積ませる、という議論がECBから出てきましたね。しかし、
これ、言うは易し、なのですが誰が出すというのでしょうか? どう見ても我
々投資家が出せるものではなく、結局公的資金で(政府資金)です。
ドイツはともかくとして、イタリア、スペインなど既に国の財政そのものが危
ぶまれている国がどこから自国の銀行の資本充実の為の公的資金を出すという
のでしょうか? 無い袖は振れない訳でして、どう見てもドイツに頼るのか(
ドイツから借金をするか)、これもIMFに頼るのか、と言う話になります。
そしてこのIMF。
驚かれるかもしれませんが、そもそも論を言わせてもらうと、自己資本をIM
Fから調達した時点でCDSの定義としては銀行自体のデフォルト条項にひっ
かかります。デフォルトとみなされる可能性が高いのです。何せ自力で資本が
調達できない訳ですから経営不能、とされてしまい
その銀行はデフォルト同然と扱われる事になってしまうのです。
これが定義なので文句を言っても仕方がありません。仮に何らかの事情でデフ
ォルトスワップの保有者が行使しなくても、例えば日本の銀行との資金のやり
取りなど、日本の銀行からしてみるとデフォルトした銀行との資金のやり取り
などは「想定外」もいい所でしょう。少なくともその銀行の株主の中には「許
さない」、という人が出て来る筈です。
日銀が取引保証をするなどの手続きを踏まない限り、こうした欧州の大手銀行
との銀行間取引そのものまで行き詰る可能性があり、欧州の銀行はたちどころ
に資金調達で行き詰るでしょう。
いつも言いますが、国の破綻は突然来る訳ではありません。
まず、金融機関から預金が逃げて、その経営不安から海外との銀行などの取引
が滞り、資金(特に外貨)がショートがして、その時は自国通貨安による為替
防衛ドル買い介入をするので政府も資金(外貨準備)が枯渇してきているので
銀行も救済に手が回らず国ごと沈む、というプロセスを踏むのです。(くどい
ようですが、通貨安が国を滅ぼすのです。円高亡国と言っていて円安にしろ、
と言っている奴は訳がわかっていない)。
これはアルゼンチンでもロシアでも、はたまた今回のギリシアでも例外なし、
です。
結局、これまで欧州各国の国債を「安全資産」としてストレステスト項目から
はずし、今まで知らないふりをしてきた欧州の銀行がそれらを「不良債権」と
して処理すべし、としても資本金そのものが足りない、ということが起きる訳
です。これは一体誰が出すのか?? ECBが出せる筈はありませんね。
ということで報道ではストレステストで1歩前進、と書いてある新聞もありま
すが、不勉強もいい所で、このままストレステストを強行するなら、欧州の銀
行の大半が自己資本不足で破綻することになり、デクシアはまだ規模が小さい
からいいのですが、その他イタリア、スペインなどの銀行の資本を誰が出すの
かと言う問題は答えが出ていません。
信用の連鎖というのは恐ろしいもので一つでもだめなどころが出てくればすべ
てだめ、ということになります。例の「腐ったミカン理論」です。
欧州は益々悲惨な状況になりつつあります。
報道として一番まとまっているのはやはりFT,NYTですかね。NYTをち
ょっと抜粋しておきます。
From the NY Times: Europe Seems to Agree on Recapitalizing Banks ? but
How?
欧州は銀行の自己資本積み増しに合意したように見える・・・しかし、一体ど
うやるの?
European leaders are finally coming around to the view that banks must
be compelled to replenish their capital reserves if the euro area is
ever to emerge from the debt crisis. But whether the politicians can
make it happen in a convincing manner is another question ... In the
first signs of a split, France wants to draw on the European bailout
fund, the European Financial Stability Facility, to rebuild bank
capital.
German leaders think national governments should take the lead.
欧州の指導者たちはこの債務危機から逃れるためには銀行の自己資本充実が欠
かせないという結論に達したようだ。しかし例によって政治家が様々な思惑を
まとめ切れるかどうか・・・・まず初めに既に意見が分かれているのは、フラ
ンスとしては欧州救済基金、すなわちEFSFを使って(フランスの銀行の)
自己資本を手当てしようと考えているが、一方ドイツは各々の国が負担すべき
と考えている。(皆考えていることが違い過ぎてまとまるのは容易ではない)
続けてFTはこんな感じ。
From the Financial Times: Investors turn bears on Germany and France
投資家はドイツ、フランスに対して(でさえも)弱気に傾いている
Investors are taking increasingly bearish bets on Germany and France .
. The cost of protecting German government bonds against default
surged to a fresh record this week.
投資家はドイツやフランスにでさえも益々弱気になってきている・・・・ギリ
シアに端を発するトラブルで、ドイツ国債に対するデフォルトコストが益々上
がってきているのだ。(これは解説すると単にCDSの上昇を意味するだけで
なく、その他のコスト、例えばドイツ国債のレポコストですが、これまでドイ
ツ国債は額面100%貸付だったものを90%にする、或いはこれまで価格変
動幅は10%で見なおしていたものを2-3%程度に狭めるなど、全体の取引
コストの上昇を指しています。現実的にドイツ国債にさえ影響が出てきたとい
うことは極めて重大な事項で市場関係者は注目しているのです。)
今後も直接的にギリシアは注目するにせよ、ドイツ、フランス国債にまで目配
りが必要になりつつあります。ここから2週間(ギリシアの払い込み日をはさ
んで)は要注意期間です。