住友電工が新型蓄電池を開発
◎住友電工が開発した「ナトリウムイオン電池」とは
3月4日に住友電工(5802) が新型の蓄電池を発表し、市場でも話題を集めています。
同社が開発に成功した「ナトリウムイオン電池」は、電池溶解液にナトリウム(溶解塩)を利用して、リチウムイオン電池を上回るエネルギー密度を実現しており、世界でも初めての成功ということです。
これまでも、溶解塩を利用した蓄電池がなかったわけではありません。例えば、日本ガイシ(5333) が開発して実用化している「NAS電池」は、ナトリウムと硫黄を使用しています。
しかし、動作時の温度が300℃と高くなるため家庭用としては使えず、発電所の蓄電装置など大型の施設でしか利用できませんでした。
溶解塩自体は、電池溶解液としてさまざまな点で優れているのですが、難点は溶解する温度が高いことです。溶けたままの状態にしておくためには通常、100℃以上の高温状態にしておかなければなりません。
今回、住友電工は京都大学・エネルギー科学研究科の萩原研究室と共同で、融点を57℃まで下げたナトリウム化合物を開発したほか、両極金属などに同社の独自技術を利用して、高いエネルギー密度、高出力の二次電池を開発しました。
57℃という比較的低い温度で稼働するので、排熱や防火のための装置が不要で、小さいスペースに置くことが可能。NAS電池の4分の1、リチウムイオン電池と比べても約半分の容積にすることができます。
現在は実験を続けている段階で、今後もより低温での可動を実現することやコストの低減など課題があるため、すぐに実用化とはならないものの、家庭での電力貯蔵装置やトラック、バスなどの車載電池としての用途を考えているとのことです。
今回の住友電工の新型蓄電池開発のポイントは、資源として無尽蔵にあるナトリウムを使っていること。現在主流になりつつあるリチウムイオン電池には、原料が少ないという泣き所があるため、これを解消するニューバッテリーとして注目された側面が強いと言えるでしょう。
◎主流のリチウムイオン電池には課題も多い
二次電池はハイブリッドカーやEV(電気自動車)、家庭用の蓄電装置向けなどさまざまな用途に広がっており、温暖化関連でもトップの材料となっています。
なかでも注目されているのは「リチウムイオン電池」で、すでに携帯電話やノートパソコンからEVなど、さまざまなところで実用化されています。
リチウムイオン電池は電極の素材にリチウム金属を用い、電解質に溶けたリチウムイオンが電気伝導を行なうことで発電する電池で、他の種類の二次電池よりもエネルギー密度や出力などに優れていることが特徴です。
ただし欠点もあり、一時期、携帯電話やノートPCの発火がしばしば報道されたように、充電時に発熱、発火しやすい点が指摘されています。
このため、リチウムイオン電池を用いた二次電池装置には、過充電を防ぐ装置が必ず取り入れられています。このほか、電解質にポリマーを用いて、過充電の危険性を低減した「リチウムイオンポリマー電池」の普及が進むなど、改善されつつあります。
もうひとつネックとなるのが、素材の稀少性です。
リチウムは希少金属の一つです。実は海水のなかにも存在するのですが、濃度が低いために、海水からの抽出は採算ベースに合いません。
そこで含有量が多い塩水湖や鉱山から採取しているのですが、それが一部の地域に偏っています。
「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」のレポートによると、2008年時点でのリチウム産出量は全世界で12万トン。その6割は塩水湖などの冠水から、残り4割はルチア輝石という鉱石から採れます。
リチウムの埋蔵量は約3000万トンと推定されていますが、冠水ではチリ、ボリビアで7割近く、鉱石では米国が半分近くを占めています。原産地が南北アメリカ大陸に著しく偏っており、実際の生産では南米が8割以上を占めていると言われています。
さらに、南米の中でも埋蔵量が多いボリビアでは、政治的な要因でいまだに開発ができていません。産出量世界一のチリへの依存度は高いままで、世界中で使用される資源としては極めて不安定な状況と言えるでしょう。
限られた産出地をめぐって、世界中の鉱山会社、商社などが南米を中心にリチウムの争奪戦を繰り広げているほか、中国など南米以外の産出地を開発するプロジェクトも進行しています。
EVの普及を前に、2次電池に対する期待は高まるばかりです。今後、リチウムイオン電池だけでなく、リチウムを使用しない新たな電池にもさらに注目が集まるでしょう。
住友電工が開発したナトリウムイオン電池装置(出所・住友電工)
☆リチウムイオン電池ほか主な次世代2次電池関連銘柄
旭化成(3407) ----------------------------電池セパレーターで世界トップ
昭和電工(4004) --------------------------リチウムイオン電池用黒鉛電極
田中化学研究所(4080) --------------------リチウムイオン電池の電極材料
日本ガイシ(5333) ---------------------------------------NAS電池で先行
住友電工(5802) ------------高密度・高出力のナトリウムイオン電池を開発
ジーエス・ユアサ(6674) ---------------------------自動車用Li電池製造
パナソニック(6752) ------三洋電機を傘下にリチウムイオン電池世界トップ
新神戸電機(6934) ------------------------------------大容量Li電池開発
伊藤忠(8001) ------------米カルフォルニア州でリチウム開発プロジェクト
三菱商事(8058) --------------アルゼンチンのリチウム権益保有企業に出資