100分de名著 for ティーンズ:2022年夏休みスペシャル /「竹取物語」 | 日々是本日

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【公式】100分de名著 for ティーンズ:2022年夏休みスペシャル

第4回「竹取物語」【再放送予定】
2022年8月29日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ
2022年8月29日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
2022年8月30日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2022年9月5日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ

 「100分de名著」は各回 25分×4週 = 100分 で毎月一冊の名著を紹介するNHKの番組である。

 

 スポットでスペシャル回が挟まるのだが、2022年8月は「for ティーンズ」ということで十代向けの夏休みスペシャルである。

 

▼「for ティーンズ:2022年夏休みスペシャル」

「夏休み」といえば、読書の季節。でも若い親世代にとっては「子どもたちにどうやって本を読ませるか」は大きな課題。そこで番組では、通常放送よりも「敷居を低く」、ティーンネイジャーが親子で視聴しながら「なるほど、そうだったのか」と頷けるような解説を展開。「思春期の悩みに響く文学作品」「知的好奇心をそそる科学読み物」「社会のしくみがよくわかる経済入門」「心をぐっとつかまれる古典作品」といった普段扱わないジャンルの名著を取り上げ、「親子で楽しめる」知的エンターテインメント番組を目指します。

 

第1回 トルストイ「人は何で生きるか」×若松英輔(批評家・随筆家)
第2回 ポール・ナース「WHAT IS LIFE?  生命とは何か」× 竹内薫(サイエンスライター)
第3回 ヤニス・バルファキス「父が娘に語る経済の話。」×中山智香子(経済学者)
第4回 「竹取物語」×木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)

 

 この十代向けの「for ティーンズ」のスペシャル回は2018年8月に続く2回目である。

 

▼2018年の「for ティーンズ」

誰もが一度は読んでみたいと思っているものの、なかなか手に取ることが出来ない名著を25分×4回=100分で紹介する「100分de名著」。8月は、ファミリーで楽しめる夏休みスペシャルとして「100分de名著 for ティーンズ」を放送します。
「夏休み」といえば、読書の季節。でも若い親世代にとっては「子どもたちにどうやって本を読ませるか」は大きな課題。そこで番組では、通常放送よりも「敷居を低く」、ティーンネイジャーが親子で視聴しながら「なるほど、そうだったのか」とうなずけるような解説を展開。「良質な少年少女向け文学」「初心者向けの科学読み物」「易しい古典」といった普段扱わないジャンルの名著を取り上げ、「親子でも楽しめる」知的エンターテインメント番組をお楽しみください。

 

第1回 サン=テグジュペリ「星の王子さま」× ヤマザキマリ(漫画家)
第2回 ローレンツ「ソロモンの指輪」× 瀬名秀明(作家)
第3回 太宰治「走れメロス」× 若松英輔(批評家)
第4回 「百人一首」× 木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)

 

 ジャンル構成を比較すると前回は、

 「良質な少年少女向け文学」

   →サン=テグジュペリ「星の王子さま」

「初心者向けの科学読み物」

   →ローレンツ「ソロモンの指輪」

「易しい古典」

   →太宰治「走れメロス」

「易しい古典」

   →「百人一首」

 

であったが今回は、

「思春期の悩みに響く文学作品」

   →トルストイ「人は何で生きるか」
「知的好奇心をそそる科学読み物」

   →ポール・ナース「WHAT IS LIFE?  生命とは何か」
「社会のしくみがよくわかる経済入門」

   →ヤニス・バルファキス「父が娘に語る経済の話。」
「心をぐっとつかまれる古典作品」

   →「竹取物語」

 

 となっており、一般書が増えて選定主旨がより明確になっている。

 

 今回の「for ティーンズ」は特に第4回「竹取物語」を取り上げる主旨が良かったので、ブログ記事にすることにした。

 

第1回 トルストイ「人は何で生きるか」×若松英輔(批評家・随筆家)

 

 「人は何で生きるか」は、絶対戦争反対主義者であるというトルストイ58歳の時のキリスト教的な教訓民話作品である。

 

 キリスト教的思想の強い作品であると判断したので、ここでのコメントは差し控える。

 


第2回 ポール・ナース「WHAT IS LIFE?  生命とは何か」× 竹内薫(サイエンスライター)

 

WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か

 

 著者のポール・ナースは2001年にノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者である。

 

 この本は、「細胞」、「遺伝子」、「自然淘汰による進化」、「化学としての生命」、「情報としての生命」という五つの観点から生命について書かれた一般向け科学書である。

 

 一般向け科学書として評価の高い本であるが、この番組で取り上げられた理由は、どうして生命について研究しようと思ったのかということも含めて書かれているからだろう。

 

 ポール・ナースは、12歳か13歳の頃に一羽の蝶がきっかけで生物学を真面目に考えるようになったという。

 

 そして、苦学しながら細胞のメカニズムを研究して、ノーベル賞を受賞するほどの業績を上げたのである。

 

 この本を取り上げたのは、知的好奇心をそそるということでけでなく、若い頃に思った「生命とは何か?」というような本質的な疑問を探究し続けていくとはこういうことだ、ということを感じて欲しいという意図があると思われた。

 

▼訳者・竹内薫さんによる著者インタビュー記事はこちら

 

▼NHKオンデマンド 単品:110円(税込み)

 

 

第3回 ヤニス・バルファキス「父が娘に語る経済の話。」×中山智香子(経済学者)

 

父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。

 

 著者のヤニス・バルファキスはギリシャ出身の経済学者であり、2015年のギリシャ経済危機では財務大臣を務めている。

 

 一般向けの経済の本として評価の高い本であるが、この番組で取り上げられた理由はやはり別のところだろう。

 

 10代が経済を学ぶ理由について中山智香子さんは「どうお金と関わるかはその人の生き方にもなっていくので早いうちから知っておいて欲しい」とコメントしていた。

 

 そしてこの主旨に加えて、世の中の価値というのは経済的価値だけでなく個々人の経験的な価値も大切であるということ、何かおかしいんじゃないかと思ったら誰でもそう言えるような民主化が重要であるというバルファキスの考えを紹介していた。

 

 この本を取り上げたのは、若い人に早いうちから社会のしくみと経済について知って欲しいということだけでなく、経済的価値一辺倒ではない個々人の経験に基づいて経済のあり方に関心を持つことが大切である、ということことを感じて欲しいという意図があると思われた。

 

▼ダイヤモンド・オンラインの書評記事はこちら

 

▼NHKオンデマンド 単品:110円(税込み)

 


第4回 「竹取物語」×木ノ下裕一(木ノ下歌舞伎主宰)

 

【再放送予定】
2022年8月29日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ
2022年8月29日(月)午後10時25分~10時50分/Eテレ
2022年8月30日(火)午前5時30分~5時55分/Eテレ
2022年9月5日(月)午後1時5分~1時30分/Eテレ

 

 さて、いよいよ本題の竹取物語である。

 

 昔話「かぐや姫」としても広く知られてい話なので詳細は割愛する。

 

 解説付きの本としては、番組中で紹介されていた下記を挙げておく。

 

 

 尚、本文のみであれば青空文庫にも収載されているので無料で読むことができる。

 

▼「竹取物語」和田万吉(訳)青空文庫

 

 「竹取物語」は内容的にいろいろな含みのある作品であり、多くの人が訳文を書いている作品である。

 

 番組中で木ノ下さんは、日本の古典の物語パターンが多く含まれている作品であるということを具体例を挙げて説明している。

 

 また木ノ下さんは、10代の読者には(特に学校と家庭という狭い世界で生きづらさを感じている10代には)、竹取物語は世界の常識を疑っていく世界の見方を変える物語として読んでいくと発見があるという。

 

 なるほどねぇ。

 

 昔話としての難題婿の意味合いはあるにせよ、かぐや姫は月から来た天人(てんにん)なのだから、現実を俯瞰する視点がある。

 

 そして、SF的ではあるが近未来のSFではなく古典であるから、昔の人の生活のリアリティーがある。


 個人的には、竹細工を作って売って質素に暮らしている老夫婦が報われるという設定の中に、

婚姻譚(結婚話)カテゴリの難題婿という、求婚者が難題をどのようにして解くかを主題にした物語で、養父母でも心が通うというから別れが悲しいという話であるというように思っていた作品であった。

 

 もう一度、番組を見直して、青空文庫を読んでみた。

 

 かぐや姫は天人でありながら、今は月に帰るのが悲しいという。

 

 そして、終盤で実はかぐや姫は罪によって「きたいない」地球に流刑にされたのだということが明らかになる。

 

 月から迎えにきた天人にとって地球は、「こんなきたないところ」(青空文庫版)なのである。

 

 なるほどなぁ。

 

 竹取の翁のところへ来たのも何かの縁かもしれないし、相手が帝であっても無理なものは無理なんだし、「きたいない」地球での暮らしではあっても養父母との生活は幸せなものだったのである。

 

 木ノ下さんは、物語の中に浸るというのは今生きている世界を新しい目で捉え直すためのトレーニングであると結んでいた。

 

 古典は懐が深いねぇ。

 

 

▼NHKオンデマンド 単品:110円(税込み)

 

▼テキストはこちら

for ティーンズ 2022年8月 (NHKテキスト)