「老子」は中国の古代哲学者である老子の本で、老子が書いた著作としてはこれのみである。
孔子の「論語」と並んで日本の思想・文化にも影響を与えた古典の名著である。
成立年代は今のところ、紀元前300年ぐらいというのが定説のようである。
小川環樹訳・解説の中央公論社「世界の名著」版はかなり前に古書店で買ってあったのだが、読み時を計っている間に加島祥造さんの詩的訳である「タオ」も買ってしまった。
その後、意を決して読んだのが数年前のことである。
文庫棚を整理していて、そろそろ加島さんの「タオ」が読み頃かと思っていたところ、友人から日本史学者である保立道久さんの「現代語訳 老子」(ちくま新書)を紹介された。
こちらは現代語訳であるので、加島さんの詩的訳へ進む前に読んでおくのもよいかと思い予定を変更することにした。
■保立 道久(ホタテ ミチヒサ)
1948年東京生まれ。専攻は日本史。国際基督教大学教養学部卒業。東京都立大学大学院人文科学研究科修了。東京大学史料編纂所元所長。現在、同大学名誉教授。主な著書に、『平安王朝』『歴史のなかの大地動乱』(岩波新書)、『平安時代』(岩波ジュニア新書)、『かぐや姫と王権神話』(洋泉社新書)、『物語の中世 神話・説話・民話の歴史学』(講談社学術文庫)がある。
■この本の内容
中国古代の社会に深く根ざした『老子』。そのテクストは、人の生死を確かな目で見つめ、宇宙と神話の悠遠な世界を語り、世のために恐れずに直言する、苛烈な戦国時代を生きた一人の思想家の姿を伝えている。この大古典を少しでも読みやすく、深く味わうために、本書はテーマによって内容を整理し、謎に包まれたテクストを明快に解きほぐす。二千年以上も読み継がれてきた中国の精髄へ、大胆かつ精密に接近し、そこに日本の神話と神道の原型を発見する。
※筑摩書房の公式サイトより引用
上記の内容説明にもある通り、この本はテーマを設定して関連した内容を集める形で再配置されている。
原典の配置は関連する内容が別々の所に書かれていることもあるので、テーマを意識して読むのであればこちらのスタイルの方が読み易い。
章立ては下記の通りである。
【目次】
序 老子と『老子』について
第1部 「運・鈍・根」で生きる第一課 じょうぶな頭とかしこい体になるために
第二課 「善」と「信」の哲学
第三課 女と男が身体を知り、身体を守る
第四課 老年と人生の諦観
第2部 星空と神話と「士」の実践哲学第一課 宇宙の生成と「道」
第二課 女神と鬼神の神話、その行方
第三課 「士」の矜持と道と徳の哲学
第四課 「士」と民衆、その周辺
第3部 王と平和と世直しと第一課 王権を補佐する
第二課 「世直し」の思想
第三課 平和主義と「やむを得ざる」戦争
第四課 帝国と連邦制の理想
ゆっくりと読んでいきながら、適宜に記事にしていく予定である。
▼小川環樹「老子」中公文庫1997
▼加島祥造「タオ―老子」ちくま文庫2006