「東京終了」は2016年(平成28年)に不祥事で辞任した前東京都知事の舛添要一さんが、現在の都政について書いた本である。
第1章 私が辞めてからの都政
第2章 東京は100年輝くはずだった
第3章 東京は世界をリードできなくなる
第4章 危機管理ができていない首都
第5章 文化・芸術が遅れている
第6章 東京が衰退すれば日本が沈没する
昨今の都政にはやはり思うところがあり読んでみたので、以下に若干の感想を記す。
ただし、政治的判断の良し悪しについて述べる主旨は全くない。
一番驚いたのは、経歴が作家である知事が3人(青島氏、石原氏、猪瀬氏)、20年間続いており、登庁のパターンはそれぞれ違ったという話である。
その為、新しく知事になった舛添さんが毎日定時に登庁すると職員に煙たがられたそうである。
過去の東京都知事5人は下記の通り。
■過去の東京都知事(5人まで)
19代 舛添 要一 (平成26年2月9日~平成28年6月21日) 1期
18代 猪瀬 直樹 (平成24年12月16日~平成25年12月24日) 1期
14代 石原慎太郎 (平成11年4月23日~平成24年10月31日) 4期
13代 青島 幸男 (平成7年4月23日~平成11年4月22日) 1期9代 鈴木 俊一 (昭和54年4月23日~平成7年4月22日) 4期
※東京都公式サイトより引用
一番良かったのは、話が具体的なことであった。
行政は地方に下がっていくほど、具体的であることが求められるものである。
実務をやっていた人が書いているのだからその部分は具体的で当然なのだが、そもそもの政策立案の段階からここまで具体的で実現可能性を考慮した政策を提案できる人はいないだろうと思われた。
また、地方自治体の首長として国と個人ができないことをやるという役割意識に基づいていることが明確に打ち出されている点も良かった。
「東京終了」記載の舛添さんの経歴概略は下記の通り。
1948年福岡県北九州市生まれ。1971年東京大学法学部政治学科卒業。
パリ(フランス)、ジュネーブ (スイス)、ミュンヘン(ドイツ)でヨーロッパ外交史を研究。
東京大学教養学部政治学助教授を経て、政界へ。
2001年参議院議員(自民党)に初当選後、厚生労働大臣(安倍内閣、福田内閣、麻生内閣)、東京都知事を歴任。
もともとは政治学の研究者で、研究と厚生労働大臣の実務を両方経験していた舛添さんの強みが活かされていたと感じた。
経歴についての詳細は舛添さんの公式サイトを参照されたい。
現在も精力的に活動されているようである。
自分の政策について書いた本なので全体的に自画自賛な印象もあったが、最後の「第6章 東京が衰退すれば日本が沈没する」では自身の失脚についてこう反省されていた。
今振り返ると、私の失敗は、第一に改革を急ぎ過ぎたこと、第二に霞が関をモデルにしすぎたことが引き金となったようです。それは厚労大臣のときの経験が大きく影響しています。
※舛添要一「東京終了」p225 より引用
「急いては事を仕損じる」という諺の通り、事を急ぎ過ぎれば人心はついてこないというのは、いつの世、どこの世界でも同じようだ。
最後に、一市民の立場では行政の内情はわかり難いものであるということを痛感したことを記してこの記事を終わる。