映画「星を追う子ども」は新海誠監督の2011年製作のアニメ作品である。
新海誠監督の最新作「天気の子」の1月3日のテレビ放送に先立って放送された2作品のうちの一つは前回記事の「秒速5センチメートル」でもう一つがこの「星を追う子ども」だった。
2007年製作の「秒速5センチメートル」から4年後の作品である。
作品情報については公式サイトを参照されたい。
▼予告編
---以下、ネタばれあり注意---
前半部分は主人公の少女アスナが不思議な少年シュンと出会い、シュンがやってきたという地下世界アガルタに入るまでが描かれる。
主人公の少女アスナは、地下世界アガルタの研究をしていた教師モリサキと一緒に地下世界へ入っていく。
ここから物語はシュンに会いたい少女アスナと、地下世界アガルタの不思議な力で亡くなった妻を甦らせたいと願う教師モリサキとの二人の冒険譚になる。
116分の作品なのでここからまだ一時間ある。
地下世界の景色も美術も丁寧に描かれていて不思議な作品だと思いながら観ていたら、また最後でやられてしまった。
異世界の冒険譚に形を借りた、喪失と再生の物語だった。
話の終盤で教師モリサキは不思議な力を手にしたが、妻を甦らせるに失敗する。
そして皆に地下世界アガルタの神の声が聞こえる。
「喪失を抱えてなお生きろ、それが人に与えられた呪いだ。」
アスナは呟く。
「でもきっとそれは祝福でもあるんだと思う。」
と。
そして主題歌である「Hello Goodby & Hello」が流れる。
映像では現実世界に戻ったエピローグが語られ、エンドロールへ進む。
この最後にやられちゃうんだなぁ。
この熊木杏里さんの歌う主題歌「Hello Goodbye & Hello」のタイトルの意味は、「あなたとの出会い」、「あなたとの別れ」、「あなたのいない世界との出会い」である。
この意味するところは案外深淵だ。
「あなたのいない世界」を「呪い」にする人もいれば「祝福」にする人もいることだろう。
喪失から再生するには物語が必要だ。
それは、あなたのいない世界と出会う物語である。
そしてあなたのいない世界と出会うことは若者にとっては大人になることだし、大人にとってはまた更に大人になることである。
この物語はまた、過去への執着を捨てる物語として見れば、仏教的でもある。
そして、あなたと死別して先に逝くとまた最初のハローに戻るのだとすれば、輪廻転生の世界観である。
輪廻転生の世界観を思わせるシーンは実際に存在する。
映画の開始から45分後、アスナと教師モリサキが地下世界に落ちていく場面である。
地下世界に落ちていく途中でアスナは気を失って夢を見る。
アスナの両親が縁側に座り生まれてくる子どもについて話をしている。
そしてアスナは、「私そろそろ生まれなくちゃ……」と気づいて目を覚ます。
「Hello!」