映画「秒速5センチメートル」は新海誠監督の2007年製作のアニメ作品である。
新海誠監督の最新作「天気の子」が1月3日にテレビ放映されたか、これに先立って放映された2作品のうちの一つがこの作品だった。
新海作品に注目したのは2013年製作の「言の葉の庭」からで、2007年製作のこの作品はそもそも知らなかった。
この作品は短編連作という形式をとっていて、ある時期に同じ学校で仲良くなった転校の多い男子小学生と女子小学生の出会いとその後が綴られていく。
公式サイトのストーリー紹介にはこう書かれている。
小学校の卒業と同時に離ればなれになった遠野貴樹と篠原明里。二人だけの間に存在していた特別な想いをよそに、時だけが過ぎていった。
そんなある日、大雪の降るなか、ついに貴樹は明里に会いに行く……。
貴樹と明里の再会の日を描いた「桜花抄」、その後の貴樹を別の人物の視点から描いた「コスモナウト」、そして彼らの魂の彷徨(ほうこう)を切り取った表題作「秒速5センチメートル」。3本の連作アニメーション作品。(「秒速5センチメートル」公式サイトより引用)
▼予告編
---以下、ネタばれあり注意---
第一話の「桜花抄」では、中学生になった貴樹はついに明里に会いに行く。
雪の降る道中が淡々と描かれる。
新しい体験から自分の心に新しい感覚が起こり、それにいちいち戸惑う少年の心を丁寧に描いている。
第二話の「コスモナウト」では、高校三年生になった貴樹が、彼に想いを寄せる同級生の視点から描かれる。
高校三年生になった彼は想いを寄せる同級生にやさしく接してはいるが、心はまだ明里に向いていた。
自分は何者なのだろうか、それを探しながら。
面白いというよりも、見入ってしまう感じだ。
第三話は作品全体のタイトルともなっている「秒速5センチメートル」である。
貴樹は東京でIT関係の仕事をしているから、20代半ばだろう。
公式サイトのストーリー紹介では「彼らの魂の彷徨(ほうこう)を切り取った」と表現されている部分である。
貴樹は心理的な行き詰まりから仕事を辞め、結婚することになった明里はそのことを貴樹に告げようとしていた。
そしていきなり画面に「秒速5センチメートル」というタイトルが現れ、山崎まさよしの「One more time, One more chance」が流れ出す。
もうダメだ、涙が止まらない……
歌と共に現在までの回想シーンが流れて作品は終わる。
この歌のためにこの作品があるのか、この作品のためにこの歌があるのかわからない程に、そこに込められた想いは歌によって存分に語られた。
この最後にやられてしまった。
よくもまぁ、こんな作品を作ったものだ。
この作品は何者向けなのだろうか。
少なくとも少年向けではない
主に若者向け、かつ、一部の大人向けだろうか。
いずれにせよこの作品でも、大人は何を忘れてはいけないのかということを思った。
作品は終わったが、二人の人生はこれからである。
未来の人生はこの経験の上に作られていくのだから、こう言う他はあるまい。
少年よ立ち上がれ。
まだ勝負は始まったばかりだ。
大人の世界に入れ。
勝負は下駄を履くまでわからない。
▼おまけ