小松左京 「コップ一杯の戦争」 集英社文庫1981 | 日々是本日

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bookudakoji の本ブログ

 「100分de名著」の小松左京スペシャルの記事を書いたついでに、本棚を漁って小松さんの作品を探してみたら、こんな本が出てきた。

 

 

 「コップ一杯の戦争」は初期の短編集(ショート・ショート集)である。

 

 集英社文庫は1981年となっているが、収められている作品はかなり古い。

 

 以下、作品リストと初出誌である。

「さんぷる一号」 (昭和37年7月 「宇宙塵」掲載)

「コップ一杯の戦争」 (昭和37年11月 「NULL」掲載)

「ホクサイの世界」 (昭和38年4月 「新刊ニュース」掲載)

「釈迦の掌」 (昭和38年5月 「別冊サンデー毎日」掲載)

「花のこころ」 (昭和38年12月 「現代活花」掲載)

「恵みの糧」 (昭和38年12月 「文芸朝日」掲載)

「恥」 (昭和38年12月 「日本」掲載)

「さとるの化物」 (昭和39年2月 「洋酒天国」掲載)

「仁科氏の装置」 (昭和40年1月 「新刊ニュース」掲載)

「四次元トイレ」 (昭和40年2月 掲載誌不明)

「忘れられた土地」 (昭和40年3月 「漫画読本」掲載)

「面従腹背」 (昭和40年5月 「新刊ニュース」掲載)

「完全犯罪」 (昭和40年9月 「漫画読本」掲載)

「交替」 (昭和40年9月 「別冊文藝春秋」掲載)

「四次元ラッキョウ」 (昭和41年7月 「漫画読本」掲載)

「なまぬるい国へやってきたスパイ」 (昭和41年8月 「漫画読本」掲載)

「返還」 (昭和41年10月 「新刊ニュース」掲載)

「辺境の寝床」 (昭和42年1月 「別冊宝石」掲載)

「怪獣撃滅」 (昭和42年6月 「別冊宝石」掲載)

「運命劇場」 (昭和43年1月 「別冊小説新潮」掲載)

「宇宙鉱山」 (初出年月不明 掲載誌不明)

「宇宙に嫁ぐ」 (初出年月不明 掲載誌不明)

 

 小松さんの生没年は、1931年(昭和6年)~ 2011年(平成23年)、享年80歳である。

 

 SF作家として活躍されるのが1963年(昭和38年)「地には平和を」出版あたりからであるので、その辺りから五年間の掌編が収められていることになる。

 

 「100分de名著」の小松左京スペシャルの記事で紹介した通り、小松さんは自伝の中で、

 

  「人類を、地球を、宇宙を丸ごと描けるのがSFだ。」

 

 と言っている。

 

 この作品集ではまったくその通りに、戦争であれ次元であれ宇宙であれ神であれ何でも御座れである。

 

---以下、ネタばれを含む感想---

 

 表題作である「コップ一杯の戦争」では、飲み屋でコップ一杯ひっかけるのと米ソの核戦争とが対比される。

 

 もうこれだけで十分にガツーンときてしまう。

 

 個人的に印象深かったのは「忘れられた土地」である。

 

 ここでまたガツーンときた。

 

 テーマは「神があるから信仰があるのか、信仰が神を支えているのか」ということであろうが、これをどう書くかは作家にとしての勝負所である。

 

 こうした多様なテーマについて、SFならこう書けるという小松左京としての答えの詰まった作品集であった。