賢治の童話の中では有名な作品。
一応、ストーリーを書いておくとこんな話である。
【ストーリー】
主人公のゴーシュは活動写真館のセロ弾き。
一番下手なセロ弾き。
今度の音楽会で演奏する第六交響曲の練習では、
いつも怒られる。
ある晩から夜になると動物たちが訪れて、
一緒に練習するうちに悪いところが自然と直っている。
音楽会のアンコールを強引に任されたゴーシュであったが、
演奏してみると楽長にも仲間にも褒められて終わる。
一読したところでは、
内容よりもとにかく物足りないという印象が強く残った。
話のほとんどは動物たちとの夜の練習場面なので、
実際に音楽が流れる中で動物たちの様子がありありと
想像できないと物足りないのだ。
これは想像の余地があるという意味では、
童話としては実に真っ当で、
子どもはそれぞれに自分の想像できる範囲で好きに想像することができる。
とは言えこの作品は、実際に音楽が流れて、
動き回る動物たちが見られたら楽しいに違いない。
そこで、映画を見ることにした。
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人物の表情、動物の動き、音楽と共に流れる時間に
肉付けされた映画はとても良かった。
これは映画を作った人々の力によるところも大きいだろう。
セリフは原作に忠実で、原作を尊重している姿勢も窺える。
映画が正解ということではないが、
トラ狩りの音楽や猫が跳ね回る様子など、
多くの点で想像以上だった。
活字で表現されていた、主人公の気持ちがパッと変わる瞬間も、
よく表現されていた。
賢治にとってはこういう真っすぐな人物像が自然なのだろう。
ひたすらチェロに打ち込み、悪いところは直すという真摯さも自然に感じられた。
最後にゴーシュは心の中でカッコウに謝る。
ゴーシュは感謝を知る人間だとわかる。
賢治の描くゴーシュは優しい。
※青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/470_15407.html