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本と本屋が大好きな私の、おすすめする本です。

「東京タラレバ娘」   (東村アキコ 講談社)

 

最近興味深く観察しているのは

「いつもレジの列が短い、ある店員さん」です。

私が週数回行くスーパーは、レジが8台あり

いつも行く曜日と時間帯が決まっているので

並んでいる店員さんの顔ぶれもほぼ同じです。

そして、その中で彼女のレジの列は

いつも短い。

お客さんたちが、何となく避けているのです。

 

私も何回か対応してもらってから

この人のレジは避けています。

商品を扱うときの手つきや

表情や話し方が雑なのです。

彼女が、仕事にいらだちや不満を抱えているのが

ほんの数分向かい合うだけで感じられます。

 

こういう、「顔と仕事が投げやり」という人は

職場に何人もいました。

この仕事が好きでもないし、合っているわけでもないけれど

最後にたどり着いたのがこの職場なので、

辞めるわけにもいかないからここにいる、

という瘴気のようなものが漂う感じ。

 

考えてみると、

自分自身が学校で進路指導をされたとき

女として、この国で、穏やかな気持ちで生きていくための

武器とか戦略を語られたことはありませんでした。

公務員で教員で男の人たちには

そんな話は無理だ、とも思います。

 

このマンガ。

名作との評判は聞いていましたがなかなか手に取らず、

試しにブックオフで一巻だけ買ってびっくりし

翌日には書店で既刊全部買いました。

女の人が、働いて、努力して、30になって、

そして抱える気持ちをこんなにきちんと描いてくれるとは。

結婚していない女の人にも、

結婚している女の人にも。ぜひ。

 

 

 

 

 

「大人のおしゃれ Do!&Don't」

          (槇村さとる 地曳いく子  集英社)


「レディ・レッスン」

     (ケリー・ウィリアムズ・ブラウン  大和書房)




暑さにも冷房にも弱い私には

生きるだけで精一杯のような夏でしたので

やっと少し涼しくなって

活字を読む余裕が出てきました。


マンガもエッセイも大好きな

槇村さとるさんと

スタイリストとしてのエッセイが素敵な

地曳いく子さんの対談は


似合うものの見極め方、

かっこいいことと悪いことの違い、

大切なものの扱い方、

お金の使い方などが

ポイントを押さえて語られていて


今の自分に似合うものだけを残して処分する意欲や

服も、食器も、小物も何もかも

「いいもの」から使う明るさが

静かに強く湧いてきます。



新聞の広告に載っていた

「元カレが生きていることを許す」というフレーズがおもしろく

ふだんあまり手を出さない翻訳モノを読んでみたのが

「レディ・レッスン」。

国や言葉が違っても

女子が元気に生きていくコツや心のもちようは

共通なのだなあと実感します。


たとえば自分で自分に確かめる言葉として

私が共感したのは


   自分が手にしたものはすべて「自分の行動の結果」


   あれもこれも「半年たったら忘れる程度のこと」


   秘密は墓場までもっていく


   自分の身体より大切なものは存在しない



そして他の人とのあれこれ。


   いたくない場所には長居しない。

   でもその理由は話す必要はない。


   友人を「無料カウンセラー」扱いしない。


   他人を変えようとしない。

   人は変わることができますが、それは本人が望んだときだけ。



おいしいお茶を飲んで、

心身に温かいものが満ちるような時間を

楽しめる季節になったことを

しみじみ味わえる二冊。




「八月の六日間」 (北村薫 角川書店)

「飲めば都」    (北村薫 新潮社)


ヒトというのは、

自分も他人も、変わるものなのだ、という

納得または覚悟のようなものが

最近やっと胸で深まったので

さまざまなことに

あまり動揺しなくなりました。


そもそもは、自分の変化の受け入れが

きっかけだったと思います。

価値観。優先順位。暮らし方。はたらきかた。

お金の使い方。モノとの関係。人との関わり方。

時間とともに、自分もこれだけ変わるのだから

他人も変わって当然で、

どちらも変われば、関わり方も変わって当然。


ずっと好きだった作家の、作風や作品が変わること。

自分がずっと好きだったものに

ふっと興味がなくなること。


まわりの年上の人たちが、加齢によって

言っていいことと悪いことの境界線がずれていき、

こちらがぎょっとするようなことを

平気で発言したりするとき。


つきあいの長い人に対して

「私ばっかり~している気がする」という

かすかなひっかかりが生まれたとき。


自分も他人も、変わることが大原則、と

思えるようになったら

あまり他人に変な期待をしなくなりました。

「今までのあれこれから推測すると

あの人はきっと、こういうことをしてくれる」

という我欲や期待が減ると

ずいぶん楽なものだ、というのが実感です。

自分で解決できるストレスしか発生しない生活、

というのが目標かつ理想。


・・・というような、放熱の温度の低い生活をしているのは

酷暑に本格的に負けているからです。

新しい本を探しに出かけ

手に入れて、前のめりに読む気力もなく

「昔読んで、おもしろくて、後味がよくて

でも細部の記憶があいまい」なものを

再読しています。


今、書き留めておかなければ忘れてしまうような

ちいさな、いとおしい出来事。

喜び、発見、かなしみ、それらを

消えてしまう前に言葉でとどめておきたいという

繊細な筆者の気持ちがあふれている小説を読むと

純度の高い、冷たい水を飲んでいるようです。

「八月の六日間」で山歩きと失恋にひたり

「飲めば都」でお酒と恋愛を楽しみます。