- 月光 (徳間文庫)/誉田 哲也
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***この本は2010年1月に読了しました***
お姉ちゃんが死んだ。誰からも愛された人。優しく美しく、真っ白だった人。同級生のバイクによる不運な事故?違う、お姉ちゃんは殺されたんだ―。姉と同じ高校に入り、一人の教師の協力を得て真相を探り始めた妹結花。そこには覗いてはならなかった姉の秘密が―。学園にピアノ・ソナタ「月光」が流れるとき、教師と生徒の心が狂う。
(Bookデータベースより)
真っ直ぐで、優しくて、美しくて、真っ白だったお姉ちゃんが死んだ。
同級生との不運なバイク事故で亡くなった。だけど、その事故には不審な点が。
妹は、両親の反対を押し切り姉と同じ高校に入り、姉が亡くなった真相を探し始めるが・・・。
音楽教師の羽田先生、クラスメートで事故現場に居合わせた菅井、そして亡くなったお姉ちゃんの真相を探るべく同じ高校に入った妹。
この三人それぞれの視点からの描写と、時間軸の差をつけた展開で話は進んでいく。
どこか捩じれてしまっていても、やはり思春期真っ只中な羽田を除く登場人物達。
白く無垢なものが、ドロドロとした陰湿な色に染まっていく様は読んでいて不快な気持ちになることもあった。
だがその分、この年代の心のうちを的確に表現していたのかもしれない。
そして、こういう事件の真相は現実にありえそうだと思えてしまう、そんな現代社会が物悲しい。
姉涼子、彼女の闇夜に耀く月の光のような明るさと、その透明な澄んだ耀き。
月の光に対をなす闇の深さと同じように、涼子の周りを取り巻く誰の心にも闇はあった。
闇から生ずる闇はない。光があるからこそまた闇もそこに生まれてしまう。
涼子の明るい耀きの分、闇も深まってしまったのだろうか。
切なく一途な純愛と、卑劣で陰湿な欲望が両極端として描写されている。
そう、月の光の明るさと、その対をなす闇の深さを表すかのように。
明るさが際立つほどに闇の暗さも際立ち、闇が際立てば逆に明るさもまたひときわ際立つ。
そのバランスが絶妙だった気がする。
月の明るさと闇の暗さ、その両面を本書はこれでもか、と言うほど突きつけてくる。
文章が突きつけてくるリアリティーさに負けぬよう読み進めていった。
そしてその先に待っていたものは、月の光に浮かぶ美しくも悲しい調律だった。
この作品によると、『月光』、この曲の短調は『悲しみを意味しない』そうだ。
この言葉のままに受け取ることが、数少ない救いの一つだった。そんな気がする。
★★★★
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