- セリヌンティウスの舟 (光文社文庫)/石持浅海
- ¥520
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***この本は2009年8月に読了しました***
大時化の海の遭難事故によって、信頼の強い絆で結ばれた六人の仲間。そのなかの一人、米村美月が、青酸カリを呷って自殺した。遺された五人は、彼女の自殺に不自然な点を見つけ、美月の死に隠された謎について、推理を始める。お互いを信じること、信じ抜くことを、たったひとつのルールとして―。メロスの友の懊悩を描く、美しき「本格」の論理。
(Bookデータベースより)
君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。
私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。
(太宰治『走れメロス』より)
ダイバー仲間の6人。大時化の海難事故を経験し、生死の狭間を一緒に彷徨った。
全員が助かるか、もしくは全員が死ぬか。
なんとか6人は助かるが、その経験から運命共同体のような一体感が生まれた6人の仲間達。
だが、突然美月が青酸カリで自殺をした。突然断ち切られた時間と仲間達の輪。
「みっちゃんの死は、本当に自殺なのか?」
彼女の自殺に不審点を見つけた5人は、ありとあらゆる可能性を探り、検証していく。
遺された仲間達は美月を信じている。そして仲間を心から信用している。
だが美月を、お互いを、信じきるためには、一度疑わなければならない。
物語は太宰治の「走れメロス」を模して進んでいく。
「走れメロス」ではメロスはセリヌンティウスという友人を人質に置き、3日間で妹の結婚式をあげ、必ずまたここに帰ってくるとと暴君ディオニス王に約束します。
急な申し出にも関わらずセリヌンティウスはメロスを信じ、申し出を受け待ち続けます。
そして、約束の期日の3日後、メロスは帰ってきた。
メロスは帰ってきたとき、セリヌンティウスに「一度、悪い夢を見た。」と白状し、そしてセリヌンティウスもメロスに「たった一度だけ、ちらと君を疑った。生れて、はじめて君を疑った。」と言い、お互い頬を殴るのである。
メロスである美月に遺されたセリヌンティウスの5人は、一度疑惑が生まれたその後に、再度メロス美月を、そしてお互いを、信じぬくことができるのか・・・?
また、ディオニス王である協力者の存在は、役割とは・・・。
そして美月が自殺にこめた秘められたる想いとは・・・。
・・・やがて審判のときが迫る。
謎解きや犯人探しといった趣向ではないので、そういうのを期待して読むとちと辛いかな。
途中いろんな角度から検証していく議論も長ったらしく感じてしまう部分もあるかもしれません。
人間という生き物はどこまで他人を信じることができるのか。
ミステリー小説にありがちな人間の悪意にスポットを当てたのではなく、善意にスポットをあてた美しき論理小説です。
友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。
(太宰治『走れメロス』より)
★★★
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