『扉は閉ざされたまま』  石持浅海 | ページをめくった先に広がる世界と解け合う心

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扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)/石持 浅海
¥630
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***この本は2008年4月頃読了しました***


大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。
“あそこなら完璧な密室をつくることができる…”
伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。
自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。
しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。
開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった…。
(Bookデータベースより)




本書はいわゆる倒叙ミステリーであり、密室ものです。
物語はいきなり、伏見が新山を殺害するシーンから始まり、一度シーンが殺害する前に戻り始まっていきます。
題名が示すとおり、密室殺人が行われます。


扉は閉ざされたまま―――

この状態が終章の最後の2行まで続くのです。


通常の密室ものとは違い、犯人も本書の密室の謎自体も早い段階から読者に明らかにされており、どのように密室を作ったかということは、本書の言葉を借りれば「些末」なこととして書かれています。
それなのに密室状態が最後まで続く。

これは犯人伏見の意図したところによるもので、新山の遺体の発見を如何に遅らせるか、如何に長く(10時間以上)密室状態を保てるか、を最初から画策し時間稼ぎをして新山の部屋の扉を開けさせまいとしています。

読者は犯人探しや密室の謎に挑むのではなく、なぜ伏見は新山を殺害したのか、なぜ発見を遅らせたいのか、と言う謎を突きつけられる。



中盤までは伏見による時間稼ぎのための心理描写が中心で、終盤では優佳との頭脳戦、心理合戦、対話へと進んでいくところは、スピード感もあり良かったです。

が、ドキドキ手に汗握ると言った感じや熱く心を揺さぶられると言った感じではなく、非常にスマートにまとまっている、という印象を受けました。
それはきっと、伏見と優佳との駆け引きがあまりにも理論的過ぎた(特に優佳の)のと、創られたキャラクター感つまりリアリティに少し欠けていたように思えてしまったからかもしれません。
それでもボリュームも軽く、読みやすく感じたので全体としては良かったです。




周りからは、似たもの同士で同類だと思われていた伏見と優佳。
だが、二人だけは知っていた。
似たもの同士であっても、決して同類ではないことを。
似て非なるもの。

ひとつになれない。そう思っていた二人が完全に対等になれた。
そこで発した伏見の言葉は・・・。

昔、発した言葉と同じだった・・・。




「扉は閉ざされたまま」全てを暴かれた伏見。
扉が開かれた先には何が、そして誰が待っているのか・・・。 




★★★★



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