どうしてもお金がほしくて他人の口座を乗っ取った。そしたら……
◇睡眠口座◇ -Dormart Account and Other Stories-
コーネル・ウールリッチ 妹尾韶夫・他 訳
運命とは皮肉なものだ。その日、一文なしで公園を歩いていたジョージ・パルマーが、屑箱に捨てられた新聞を見なかったら、彼はまた別の人生をおくっただろう。睡眠口座とは、15年以上たっても預金者が現れず、銀行に眠ったままの口座のことである。どんなに元金が少なくても、15年間の利子は馬鹿にできない。のどから手が出るほど金の欲しいパルマーは誘惑に勝てなかった。あてずっぽうに名義人のリストからひとつ選び出し、そのものになりすまして銀行に乗り込む。いままで名乗りでなかった預金者だから、満足な身元の調査は出来ないはずだ。よほどの偶然でもなければ、金はパルマーのものになる……彼の企みは予想以上にうまく運んだ。だが、いざ金を受け取る段になるとパルマーの手は震えた。預金は、これまで例を見ないほどの大金だったのだ。そして、大きな流れに身をまかせるように金を受け取った時、彼の運命は狂い始めた……!
上記話題作をはじめ、傑作の誉れ高い5篇の珠玉短篇を独自に編纂したーーー
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1.ハミング・バード帰る
(Hamming Bird Comes Home)
……「ニューヨーク・ブルース」参照。
2.睡眠口座
(Dormant Account)
……一文なしのジョージは藁にもすがる思いでその睡眠口座の持ち主だと名乗りをあげた。その人物はジョージと歳が近く、身寄りは火事で失われ、絶対にバレない筈だった。実際に上手く行った。だがホテル暮らしを始めたら何者かに尾けられて……
3.マネキンさん今晩は
(Meet Me by the Mannequin)
……姉のジーンを頼って都会に出たフランシー。ところがジーンもジーンがいる場所も何かおかしい。追い出される途中でフランシーは見てしまった。男が"洗濯物として処分される"ところを……
4.小切手と死と弾丸
(Dead Shot)
……「晩餐後の物語」参照。
5.耳飾り
(The Earing)
……不義の証に変えられたラブレターを大金と引き換えに取り返したショウ夫人。ところが自室に戻ったらイヤリングが片方なくなっていることに気が付いた。夫人はイヤリングを取り戻す為にその脅迫者の部屋を尋ねるが、そのカーペンターは死体になっていて……
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「睡眠口座」です(・∀・)
新しい生活を始める、悪縁を切る。一見普通のこと、それも心機一転行為なのに犯罪の入り口である、という恐ろしさ。2は犯罪行為なので因果応報とも言えますが、泡銭を手に入れた人間の姿も相まってそれでも恐ろしい。
アメリカ式上京物語〜犯罪を添えて〜フランシーの心の支えになるマネキンがあんな形で活かされるとは! マネキンが勝手に動く、という犯罪とサスペンスになったらどうしようかと←
2も恐ろしいですが印象的なのは5。脅迫者殺しの本当の犯人……その正体に狂気を感じるか、別の何かを感じるかはあなた次第。でもその姿勢を非難することは出来ないと思うんだ。
「睡眠口座」でした(・∀・)/
女の数だけ、人生と愛の様々な形がある……(*^o^*)/