都会の中の喧騒に、家庭生活の影に、死と人の孤独が招く戦慄と恐怖が有る……
◇晩餐後の物語◇ -After-Dinner Story and Other Story-
ウィリアム・アイリッシュ 宇野利泰 訳
戦後のわが国に紹介されたミステリ作家のなかで、もっとも広く歓迎されたサスペンス・スリラーの第一人者ウィリアム・アイリッシュの傑作の粋を集めた待望の短編集。大都会のなかの人間の孤独、しのびよる死の影の戦慄、絶望と焦燥にさいなまれる犠牲者等、常に意表をつく技巧と主題の多様性に加えて、作者の独壇場ともいうべき哀切な雰囲気描写と緊迫したサスペンスは永遠に読者を魅了せずにはおかない強烈な磁力を秘めている。1には、名作「晩餐後の物語」をはじめ、「遺贈」「階下で待ってて」「金髪ごろし」「射的の名手」「三文作家」「盛装した死体」そして、日本を舞台にした「ヨシワラ殺人事件」の八編。
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1.晩餐後の物語
(After Dinner Stories)
……セールスマンであるマッケンジーは乗り合わせたエレベーターで事故に遭った。幸いすぐに救助されたが乗り合わせた何人かは死んでしまった。1年後、マッケンジーのところに死んだ男の父親から晩餐会への招待を受ける……
2.遺贈
(Bequest)
……逃げに逃げた果て、妻に逃げられたわたしはなんと犯罪者の2人組に車を乗っ取られてしまった。2人組は持ち主の「わたし」を始末し、車と身分証と財産を手に入れるが「遺贈」されたのはそれだけでは無かった!
3.階下で待ってて
(Finge of Doom)
……ぼくは恋人のステッフィのお使いに付き合うべくマーティン街のアパートまで行った。彼女は確かに4階F号と言った。エレベーターにも乗った。だが彼女はなかなか戻ってこないし、その部屋は今、空き家だと言うのではないか!
4.金髪殺し
(Blonde Beauty Slain)
……その新聞の見出しは『金髪美人殺さる』だった。その新聞はいろいろな人が読む。気質の夫、犯罪を犯したらしい男女、チンピラ、そして……
5.射的の名手
(Dead Shot)
……ニューヨークの巡視官ネルソンの眠りは地震の夢ーーーでは無くある訪問者によって妨げられた。そのロッジャースは1年半も逃亡していたお尋ね者だった。しかしその彼が何故よりによってネルソンのところへ来たのだろう? その訳は……
6.三文作家
(Pennie-Wonder)
……新進作家クラークは静かな環境でものを書きたいとそのホテルにやってきた。ミーハーなファンや鳩に悩まされながら一晩かけて書き上げた傑作はいかにーーー!?
7.盛装した死体
(The Body of a Well-Dressed Woman)
……エヴァンズ警部は死体を移動させる前から、彼女の死がひき逃げではないことを嗅ぎ取った。その鍵は彼女が廃レストランには場違いな正装をしていたことから掴み取った。しかし証拠が無い……まずは彼女の夫に会わなければ。
8.ヨシワラ殺人事件
(The Hunted)
……米国海軍水兵ホリンジャーは休暇48時間を吉原で過ごすことにした。……が、それは彼がいた家で起こった殺人事件の容疑者になった女と逃避行を演じることでおしまいになった。果たしてその女、エヴェリンが夫のボッブを殺したのでは無いのなら一体誰が……?
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「晩餐後の物語」です(・∀・)
ウールリッチの別名義、ウィリアム・アイリッシュのスタートです。本当はまだウールリッチ名義が控えていたのですが諸事情で繰り上げスタートです。
アイリッシュもといウールリッチの魅力は人間の孤独さ、都会の喧騒に続き、「これからどうなる!?」というどきどきだと思うのですが、本書にはそれが詰まっています。
1はその最たる物です。晩餐会のまさかの目的、迫り来るタイムリミット……「まさかの主人公が犯人!?」と思いながら読みました。
2も良かったです。犯罪者に車に乗っ取られたか、と思ったらまさかの正体でした。「遺贈」って上手い!
6は誰も死にませんが作家だと地獄の思いをします。
読んでみて分かる。ウールリッチ=アイリッシュは短編も上手い。
一方で5、7、8のような謎解きも。こちらはサスペンス特有の「これからどうなる!?」感がなく、アイリッシュで無くても書けそう。早く長編が読みたいな。でも長い分心臓に悪いかも知れん←
「晩餐後の物語」でした(・∀・)/
次はつーいについにこのミス大賞〜! (*^o^*)/